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倦怠期カップルは思い出す  作者: 原滝飛沫
3章

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第81話 元クラスメイト

 

 校門を出た辺りで燈香と別れて、俺はショッピングモールに足を運んだ。

 

 赤、黄色、青、緑。街中は煌びやかな照明で色鮮やかに彩られていて、子供のようにはしゃぎたい衝動に駆られる。


 コンクリートの地面を踏み鳴らす人影も、どことなく浮かれているように見える。


 俺たちのようにクリスマスパーティーを企画しているのか、子供へのプレゼントを吟味しに足を運んだのか、はたまたデートの下見か。いずれにせよお店で働く人は大変そうだ。


 イルミネーションの感想を語りつつ建物内に足を踏み入れた。数十の背中に続いて奥へと歩みを進める。


「三人で来ちゃったけど、よくよく考えると三人でパーティーってのもしまらないね」

「萩原の妹がいるじゃん」

「朱音は友達と外で遊ぶらしいぞ」

「まじで⁉ まさか男と⁉」

「大丈夫だ。丸田には関係ない」

「あるって! めっちゃある!」

「浮谷さんや柴崎さんは? 二人くらいなら部屋に入るっしょ」

「そうだな。ラインで聴いてみるか」

「無視しないでッ!」

 

 柴崎さんにクリスマスパーティの誘い文句を投げる。


 浮谷さんの連絡先は知らない。丸田に送ってもらって事なきを得た。


 プレゼント交換は秘匿性ひとくせいがキモ。魚見と丸田とは適当な所で分かれてモール内をぶらつく。


 クリスマスと言えば雪。雪と言えば寒い。プレゼントはマフラーや手袋が適しているだろうか。


 でも新調した人がいたら困る。


 せっかくのクリスマスプレゼントだし喜んでもらいたい。こんなことならさりげなく情報を引き出しておくんだった。


「萩原?」


 聞き覚えのある声を耳にしておそるおそる振り向く。


 短く切りそろえた黒髪、すらっと伸びた長身。見るからにアスリートといった出で立ちの女子が立っていた。


「片桐……」


 一年生の頃に同じ教室で授業を受けた元クラスメイト。俺が加わってしばらくは燈香のグループで談笑していた女子だ。


「やっぱ萩原か。何してんのこんな所で? あんた独りでモール来るようなタマだったっけ」


 片桐のスニーカーが店舗内の床を踏み鳴らす。


 俺は立ち去りたい気持ちにふたをして口角を上げた。


「誕生日プレゼントを選んでるんだ。クリスマスにパーティーするから」

「燈香たちと?」

「燈香は欠席だから丸田や魚見とだな」

「ふーん、まだつるんでるんだ。燈香と別れたって聞いたから独りに戻ったと思ってた」

「友達の友達じゃあるまいし、そんな軽い関係じゃないって」


 苦笑で応じる。


 やはり苦手だ。片桐は一年生の頃から距離のある相手だった。


 学年が変わっても関係性は変わらない。態度の理由が分かっている分、林間学校のルームメイトよりはマシだけど。


「燈香はどんな調子だ? 元気よくやってるか?」

「その言い方おじさんみたいだね」

「うるさい。元カノのそういうのは素面で聴きにくいんだよ」


 聞く相手も相手だし。その言葉は呑み込んだ。


「それでどうなんだ? 燈香のことだし、復帰した後もバシバシスパイク決めてるんだろ?」


 ひざの痛みで休部する前はエースとして活躍していた。多少のブランクがあるけど、燈香なら元のポジションに返り咲いていることだろう。


「ん……まあぼちぼち」

「何だよぼちぼちって」

「どうでもいいでしょ。あんたは部外者なんだから」

 

 女子バレーに属していない者、あるいは元彼氏としても。


 言外にそう告げられた気がして口をつぐむ。


 片桐が背を向けた。


「そうそう、プレゼントの定番って文房具や菓子だよね。性別関係なく役に立つし」


 じゃねー。それだけ言い残して片桐の背中が遠ざかる。


 根っこは良いやつなんだよなぁ。


 そう心の中でつぶやいて商品選びに戻る。


 疎んでくる片桐のことは好かないけど、アドバイスは素直に受け取っておこう。


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