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倦怠期カップルは思い出す  作者: 原滝飛沫
3章

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第73話 誤解


 魚見にどぎまぎさせられてから部屋に戻った。


 室内を満たしていた会話がピタッと止まった。俺が来た途端の閉口。二人だけの内緒話をしていたのだろう。


 疎外感を覚えながら内履きを靴棚に差し入れた。ソシャゲに興じるクラスメイトとすれ違って自分のリュックに歩み寄る。


 会話を中断させた手前声をかけにくい。スマートフォンを充電器につなげてコンセントに差し込み、持参した紙の本を手に取ってページを開く。


「萩原、訊きたいことがあるんだけど」


 呼びかけられた気がする。


 ページから視線を上げるとルームメイトと目が合った。念のため人差し指で自分を指し示す。


 無言のうなずきを返されて、胸の内がじんわりと温かくなった。


 話しかけてくれた。向こうから!


 意図せず口角が浮き上がった。この機を逃すものかと口を開く。


「何だ? 何でも聞いてくれ」

「お前、夕食の時柴崎さんと何話してたんだよ」

「柴崎さん?」


 思わず復唱した。このタイミングで柴崎さんの名前が出るとは思わなかった。


 よもや冷やかしか? 俺が女子と二人きりでいたから、おちょくって距離を詰めようという三段か?


 その線はすぐに消えた。


 二つの視線が黙して俺を見据えている。からかいの意図で問いを投げたようには見えない。


「夕ご飯やその後の催しについて話した」

「それだけか?」

「ああ」

「柴崎さんとその、間接キスをしたのは?」

「番茶が美味しいことを伝えたら飲んでみたいって言われたから、カップを渡して飲んでもらっただけだ」


 まさか親しくもない相手と間接キスの話をするとは、人生何が起こるか分からないものだ。やっぱりみんなそういうことが気になるのだろうか。


「何でカップ渡すんだよ? 飲み物はセルフサービスなんだから取りに行ってもらえばよかっただろ」

「列ができてたんだ。空くまで時間がかかりそうだったし、一口くらいならいいかなって」

「柴崎さんは別のクラスだろ。何で面識があるんだよ?」


 口をつぐむ。


 柴崎さんと知り合った経緯は複雑だ。第三者にそのまま説明する訳にはいかない。


「同級生だぞ? 体育祭もあったし、別に変な話じゃないだろ」

「変だって。お前交友関係広いタイプじゃないじゃん」

「もしかして柴崎さんのこと狙ってるとか?」

「秋村さんと別れたばかりなのに切り替えるとか遊び人すぎでしょ」

「そのくせ秋村さんからプレゼントもらってたしな」

「いや、ちょっと待てよ」


 話が変な方向にねじ曲がったのを感じて、俺は誤解を解こうと言葉を募らせる。


 ルームメイトの反応は渋々と言った様子で、変な疑いは完全に払しょくできなかった。


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