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倦怠期カップルは思い出す  作者: 原滝飛沫
3章

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第38話 恋と度胸と臆病風


 地味なやつだと思った。


 見た感じパッとしない。モデルほど背が高いわけでも、顔がいいってわけでもない。時々燈香を目で追う、叶わない恋に恋焦がれるモブのような男子だった。


 ある日、その男子が街でナンパ相手に泣きついたと耳にした。


 マジかと思った。今時スマートフォンで場所なんていくらでも調べられるのに、現代人にあるまじき醜態しゅうたいだ。成績は良いと聞いていたけど、肝心な地頭の方は持ち合わせてなかったらしい。


 同じようなことを考えたのだろう、クラス内は萩原に対する話題で持ちきりになった。話はクラスの枠を超えて同級生に広まり、萩原は休み時間にうつむいて過ごすようになった。


 様子見した私たちを除いて、燈香だけが違うと否定して一人奔走した。


 親友の主張は本当だった。燈香はうわさを流した女子を連れて、萩原の前で頭を下げさせた。ナンパに絡まれて泣きそうになっていたところを、萩原が泣き真似して助けたというのが真相らしい。


 この前とは違う意味でマジかと感嘆した。体育会系とぶつかれば吹っ飛んでいきそうな線の細い男子に、そんな演技をする度胸があるとは思わなかった。


 萩原に興味がわいた。罪滅ぼしも兼ねて燈香との仲を取り持ち、燈香の友人というていで距離を詰めた。


 萩谷は相当な奥手だった。見るからに好意を向けているくせに、燈香を見かけてもあいさつだけで終わらせる。ガラの悪いナンパの前に出る度胸はあっても、好きな子に良いところを見せる気概はないようだ。


 燈香も燈香でいつになくしおらしかった。毎日元気よくあいさつするくせに、萩原の前だと恥ずかし気に声が小さくなる。快活な振る舞いとのギャップがあまりにも愛らしくてぎゅっと抱きしめたら燈香が変な声を出した。何を想像したのか、萩原の耳たぶが微かに赤みを帯びた。


 最初は可愛かった。


 数週間もすればうっとうしさが混じった。どう見ても両想いなくせにぜんっぜん進展しない。


 萩原はともかく、燈香は雲に隠れた太陽みたいで一緒にいて疲れる。周りに事情をはぐらかして説明するのは私なんだ。少しは人気を自覚してほしかった。いっそ私が二人の前で暴露してやろうか。そう思ったことは一度や二度じゃない。

 

 イライラを通り越して逆に興味深かった。


 告白にすら踏み出せない臆病者でも、好きな人のためならゴロツキの前に立てる。恋愛ってそんなにすごいものなのかと。


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