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倦怠期カップルは思い出す  作者: 原滝飛沫
3章

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第30話 体育祭に向けて


 ショートホームルームにて担任の長い語りが始まった。


 話題は体育祭についてだ。日にちが迫っているということで、一限丸々使って実行委員を決める話し合いが行われた。


 思った通り燈香が手を挙げた。


 枠は男女一人ずつ。文化祭での一例もある。クラス中から俺に期待の視線が向けられた。日頃は燈香の彼氏冴えないとか口走るくせに、こういう時だけペアにしたがるんだからしたたかなものだ。

 

 燈香との関係は終わらせて友人に戻った。仮に実行委員を任命されても、燈香と仲良くこなす自信はある。


 でも実行委員の仕事には興味がない。文化祭の時と違って燈香はやる気をみなぎらせているし、ここは身を引いた方が火傷せずに済む。 

 

 室内がしーんと静まり返る。


 俺が手を挙げなかったことで許可が出たと思ったのだろう。男子が次々と手のひらをかざした。


「おいおい、お前ら萩谷が立候補しないからって積極的すぎんだろ!」


 丸田のからからとした笑みに同調して、クラス内が笑い声で満たされた。奇妙な空気が秒で吹き散らされて話し合いが進む。


 実行委員が決まって拍手で盛り上がる。


 俺も手の平を打ち合わせていると、右腕にツンツンとした感触を得た。振り向いた先で魚見と目が合う。


「よかったの?」

「実行委員に立候補しなかったことか?」

「うん。これから彼女が他の男子とペアで動くわけでしょ? そこら辺はいいのかなと思ってさ」


 別れたことを隠すつもりはない。きっと燈香も同じだろう。

 

 その一方で率先して言いふらすつもりもない。


 他の男子には気の毒かもしれない。でもクラスメイトはナンパから燈香を助けた時に俺を嗤った。演技とはいえ情けない姿をさらしたのは俺だけど、燈香を心配する前に俺を嘲笑った事実は変わらない。そんな連中にチャンスを与えるのはしゃくだ。


 もとよりチャンスは自分でつかみ取るもの。自分で気づけないような奴が燈香に触れる資格はないんだ。


「ふーん。まあ彼氏がそう言うならいいけど」


 魚見が椅子の上で姿勢を戻す。


 就任ほやほやの燈香たちが教壇に靴裏をつけた。白いチョークを握ってカツカツと軽快な打撃音を奏でる。


 色は三組に属した時点で赤と決まっている。


 よって決めるべきは出場する競技。徒競走や綱引き、騎馬戦など体育祭を彩る種目があふれている。


 生徒は必ず二つ以上の種目に出場することを定められている。


 俺はもう決めた。たくさんある種目の中で、専門的な技量を必要としない競技。


 周りも同じことを考えたらしい。ぞろぞろと教壇の前に出て拳を突き合わせる。じゃんけんに勝利して見事短距離の枠をもぎ取った。


「萩原、何で腕掲げてんだ?」

「放っておいてくれ。この拳で勝ち取った勝利に浸っていたいんだ」

「はあ?」


 丸田が眉でハの字を描く。理解されるなんて思ってない。俺は孤独なロンリーガイだ。

 

 ノルマは達成した。視界で上がる腕を眺めつつ一人思考にふける。



愛読ありがとうございました。


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