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第8話 アイボリー渓谷鉱山1


 ミースとアルマがいる馬車の一向は、街道を外れ、アイボリー家の管理する山岳地帯(サンガクチタイ)に近づいていた。


 ミースは前世でも、あまり見なかった大自然に、初めこそ興奮したが、数時間後も景色がゆっくりとしか変わらず、飽きてしまう。

 

 「暇ね、」

 思わず口に出る。


 「そうですね。」

 サヤが同調する。


 窓を眺めるのを辞め、ミースは、手の平を見つめる。

 そこで魔法の練習をする事を(ヒラメ)いた。


 小さい純白の蝶を作り、再び、舞わせる。

 

 「わぁ、美しいです。ミース様。」

 サヤはうっとりした表情で、ミースの蝶の舞いを、食い入る様に見る。


 「ふ、ありがとう。

  サヤもやってみない?教えるわ。」

 ミースはサヤの無邪気の賞賛に気分を上げる。


 「え、良いのですか!是非お願いします!」

 サヤはそんな提案がされると思っていなかった様で、驚き、その提案を喜んで受けた。



 

 そうして、魔法の練習をしている内に、夕暮れとなり、馬車は、停車した。


 そこはまるで、この地を山ごと割るような巨大な渓谷が存在し、そんな大自然を侵食する様に人の家々などの建造物が乱立する。

 さらに渓谷には、蜘蛛の巣の様に線路が張り巡っており、その上をトロッコが走っていた。


 そんな大自然と人間の膨大な建造物が織りなす景色は、 

 圧巻で、

 壮大で、

 とても素晴らしい景色である。


 ミースとサヤは、馬車を降り、見入ってしまう。


 「なんて景色なの!とても素晴らしい!素晴らしいわ!」

 ミースは興奮冷めやらず、まるで遊園地を前にする子供の様にはしゃぐ。


 「本当ですね!なんて言うか、すごいです!」

 サヤも同調し、言葉を探すが、目の前の光景を表現できる程の言葉が見つからず、ミースと同じ感想になっていた。


 「ははは、誰でもこの光景を初めて見れば、そうなりますよ。」

 カルトは、2人の反応から、自分が初めてここへ来た事を思い出す。


 「観光に来た訳ではないぞ、

  ここの鉱山を利用し、山の反対側へ抜ける。

  そうすれば、1週間程の短縮だ。」

 感動に水を挿す様に、アルマは、ここに来た目的を話す。


 {無粋(ブスイ)ね、もうちょっと情緒(ジョウチョ)と言う物が無いのかしら、}

 ミースは内心毒付く。


 「よくぞ、お越し頂きました。

  アルマ・アイボリー伯爵様。と、その御一行様。」

 全員が馬車を降りた事を確認し、この鉱山の責任者らしき年老いた男性が、中年のガタイの良い男性を連れ、友好的な雰囲気を出しながら話しかけて来た。


 「初めての方もいる様なので、自己紹介からさせて頂きます。

  私はこの"アイボリー渓谷鉱山"を仕切る、

  鉱山長"グレーター・グレー"と申します。

  斥候(セッコウ)の方より、すでに要件は伺っております。

  宿泊の準備をさせて頂きました故、

  本日はそちらで疲れを癒して行って下さい。」 


 その老人の話をまとめると、まず自己紹介から始まり、アルマ達の目的を把握している事、宿の用意していると言う内容であった。


 「ふむ、ご苦労。さっそくだが、宿に案内して貰おう。その後、近況(キンキョウ)でも聞こうか。」

 アルマは、偉そうに礼を言い、案内を指示する。

 

 「そうですな。承知致しました。

  では、早速ご案内させて頂きます。

  ついて来て下さい。」

 グレーターはアルマの指示に従い、宿まで案内を始める。


 「ここからは、こちらにお乗り下さい。」

 (シバラ)く歩き、トロッコの乗り場に着く。

 そこには、ディーゼル機関車をかなり小型化した様な見た目の先頭車に、馬車の様な貨車を2台連結したトロッコがレールに並んでいた。


 「うわー!これがトロッコですか?動力はなんですか?」

 すっかり観光気分のミースは、初めてみるトロッコにも興奮を覚える。

 

 「ははは、その通りです。これは人を運ぶ様のトロッコです。動力は、魔法ですよ。」

 グレーダーは、可愛いらしくはしゃぐミースを微笑ましく感じ、優しい声音で説明する。

 

 そして、彼等は、トロッコに乗り込み、壮大な"アイボリー渓谷鉱山"へ進んで行った。


 ちなみに、他の護衛の審問官達10名は、馬車を運ぶ為、ここで別れている。




 小気味良く揺れるトロッコの上、馬車と比べて、早く風景が流れて行く。

 「気持ちが良いわー」

 ミースは、風を感じながら、気持ちを吐き出す。

 

 「はい、ミース様!」

 サヤも普段、味わう事の無い体験に、また興奮する。


 ちなみにこのトロッコは、先頭者にグレーターが連れていた、中年のガタイの良い男性が乗って運転していた。

 レバーを握り、彼の髪色と同じ茶色に全体が光っている。


 つまり動力は、魔法のサイコキネシス要素で、トロッコを引っ張っるという簡単な理屈であった。

 {うわー、原始的ねー。

  下手に魔法なんてあるから科学技術が発展しないのかしら?}


 流石に、ディーゼル機関車の様な見た目である為、魔法の補助をするシステム的な物が組み込まれていると思われるが、

 ミースは、その動力を見て、少しがっかりしてしまう。


 しかし、周囲の景観は素晴らしいので、すぐに気持ちを持ち直す。


 

 そうして、トロッコは、渓谷の始まりを侵食する様に立ち並ぶ町に入り、大きな建物の前の乗り場にて停車した。

 大きな建物は、グレーターが用意していた宿で、ホテルの様な見た目である。

 

 当然、アルマとミースは、宿の中でも最高級の部屋へ案内され、内装やサービスで文句が上がる箇所は無かった。


 そして、大浴場があると聞き、サヤと共に入浴。


 入浴後は夜食となり、トカゲのハーブ焼きや、鉱石シチューとか言う、この地の名物に舌鼓(シタツヅミ)を打った。


 

 「はー、楽しかったわー!」

 ミースとサヤは、食後は部屋に戻り、ゆっくりとしていた。

 「そうですね。ミース様。」

 

 ミースとサヤは、共に窓際の椅子に座り、夜景を見ながら談笑していた。

 サヤは始め、主人と同じ椅子に座ることを遠慮していたが、ミースの説得に折れ、現状に至っている。


 「しかし、お父様とカルト支部長は、グレーターさんとずっと仕事の話しなんかして、何が楽しいのかしら?」

 ミースは、唯一不満だった事を吐き出していた。


 「ミース様、伯爵様が初めに言っていましたが、観光に来た訳では無いのですから、」

 サヤは、アルマに叱られ無い様にミースを問いただす。


 「わかっているわ。

  でも、せっかくもてなしてくれているのに、楽しまなきゃ失礼じゃ無いかしら?」

 ミースは反論する。

 

 「それもそうですが、」

 サヤは、その反論にメイドとして一理を覚えてしまい、困ってしまった。

 

 「ふふ、私の事を心配してくれたのね。ありがとう、」

 ミースはサヤの心配している事を察する。


 「いえッ、こちらこそ、あ、ありがとうございます!」

 サヤは、赤面し、下を向いてしまう。


 {可愛いわね。}

 ミースは、そう思う。

 そして、ミースの視線は外に向き、明日からの事を想像する。


 {山を超えれば、またつまらない馬車での移動。

  最初こそ、嫌な予感があったけど、王都まで各地を旅行すると思えば、悪く無いわね。

  思えば、前世でそんなに旅行出来なかったわ。

  なら、なおさら旅行を楽しまなきゃ、}

 ミースは、明日から続く王都までの旅に対する気持ちを180°切り替え、次の町に胸を踊らせた。




 

 日が新たに昇り、早朝。


 宿に止まったミース達4人は、再びグレーターとその付き人に案内を受け、同じトロッコに乗り、宿を出発する。

 

 トロッコはそのまま町を通り抜け、渓谷の割れ目の中心を通る6車線の線路の1番左の線路へ移り、走る。


 町を抜けてもなお、人と大自然の織りなす景色は、まだ続いていた。

 渓谷の壁にいくつも空いている坑道や、

 割れ目に橋を掛ける様に、線路が何本も走り、

 その上をトロッコが入り乱れる。

 また、中央を走る6車線の線路から、されらへ繋がるように線路が分岐していく。


 さらに大自然も負けじと、渓谷が更に大きくなって行き、上を見ると空が細く棒の様になってしまい、下を見ると地面が確認出来ないほど、深く、奈落となっていた。

 

 

 それらの景色や動きを見ているだけで面白かったが、

 しばらくすると、左から2番目の線路の前方から見慣れない巨大なトロッコが走って来ている事にミースは気付く。


 「あの大きいトロッコは、なんですか?」 

 ミースは、なんの()なしに、案内を続けているグレーターへ聞いた。


 「・・・、あぁ、あれは防衛用のトロッコです。」

 グレーターは、詳しいことを言わず、ただそう言った。


 {防衛用?こんな所に?}

 しかし、ミースは、何か引っかかり、巨大な防衛用のトロッコを注視した。

 よく見るとそのトロッコは、投石機の様な物を搭載した貨車を3台も引いており、防衛用のトロッコということを納得する。


 {なるほど、投石機ね。

  線路でどこまでも行けるこの場所を守るなら、合理的な兵器ね。}


  と、ミースが関心していると、その投石機の貨車に人影が何人も慌ただしくしている事に気付く。


 {?、}

 何をしているのか知ろうと、ミースは再び注視する。


 

 すると、その投石器は、岩を次々と射出(シャシュツ)した。

 


 ミース達が乗るトロッコへ向けて、



 「は?、」


※備考

 ミース達の乗っているトロッコの動力について、

 ミースは、原始的に感じたが、

 先頭車のディーゼル機関車の様な部分は、魔法増幅装置となっており、それなりの技術が使われている。

 また、増幅装置は他でも使用されており、自動車のような物も存在している。


 余談、

 ミース達がアイボリー渓谷鉱山までの移動に、自動車を使用しなかった理由は、道が舗装されておらず、乗り心地が最悪な上、破損して動かなくなる可能性が高い為である。

 また辺境であるが故、日常生活では、自動車よりも、まだ馬の方が取り扱いがしやすいのも理由である。

 

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