第35話 悪役令嬢、自覚する。
王城、"王座の間"、
広々とした空間の中心には、前衛的な王座がある。
その玉座は独特な形をしており、簡単に言うと、巨大で、様々な形の椅子が縦に重なり、上に行くほどマトリョーシカのように小さくなっていた。
しかし、現在それに座るべき人物はおらず、主人を亡くしていた。
その原因、"ブラック・ワスプ"の"4大黒元"、第1席であるハイヴ・ブラックは、主人公ミースが考え、作戦会議を開いている最中に、悠々とその独特な玉座へ登り、無理矢理に深々と座った。
堂々と振る舞っているが、それは演技であり、ハイヴの内心は焦っていた。
{想像以上だったよ、ジャッチス・ホワイト。
まさか核の女王蜂を残り"2匹"にまで減らされるとは、・・・それに加えてミースという聖女、侮れない。
再構成寸前を狙って、核を的確に1つ破壊するとは、おかげで核の女王蜂の残り"1匹"だ。
生きた心地がしないよ。
懸念材料の一つであった"ホワイトホールナイツ"が王の命令で手を出して来ないのは嬉しい。
しかし、あの3人に任せたということは、私を倒せる力を持っているのか?
それともジャッチスのように強引にくるのか?
ふぅ。
女王蜂を1匹、復元出来た。
バラバラな死骸を繋ぎ合わせた半死体、0.5匹と言ったところか、
これで残りの女王蜂は"1.5匹"、
無いよりは、マシか。
なに、いつも通り核を守りながら捨て身で戦う。
私のこれに勝てる奴なんていない、}
ハイヴは、己の核である女王蜂を増やせた事で落ち着きを取り戻し、ミースたちを見下ろし続けた。
「君たち、そろそろ結論は出たかい?
私に従うのか?
それとも私と戦って死ぬのか?」
ミース、アルマ、イノセスが囲んで作戦会議をしている最中、
ハイヴは自分が落ち着いたことをいいことに、その3人へこれからどうするかを聞いた。
「・・・我々の答えは、こうです。」
代表してミースが前に出て、そう宣言する。
その宣言に合わせ、アルマが動く。
"改名":"クロウ"
右半身が黒く、左半身がアイボリー色の白い人型のカラスとなったアルマは、翼を広げ、白と黒の羽をばら撒いた。
ハイヴはそれらを警戒し、ゆっくり立ち上がる。
{無駄なことを、}
アルマがばら撒いた羽はカラスとなり、大きく、大きく、ハイヴの座った王座、ミースたちを含めて、大きく円を描き出した。
そしてそのカラスたちを点に、アルマのアイボリー色の光が、ミース、イノセス、そしてハイヴを飲み込む。
側から見れば、アイボリー色の白い、半径50mほどのドーム状の結界が作られたように映る。
しかし、その中身は真っ暗な闇に包まれていた。
「これは、私に従うということかな?」
ハイヴは一切油断せずに、ミースたちへ問いかける。
その問いかけに、再びミースが代表して答えた。
「いいえ、これは"私"がやりやすくするためです。」
黒の魔法が得意なミースにとって、影が存在しない王都は息苦しいものであったが、アルマが作った暗闇のドームの一番の役割は、他人の目を遮ることだった。
そして他人の目が無くなった以上、ミースは"戦闘"に集中できるのだ。
「最後に聞くけど、逆にあなたが"私"の"下"に付く気はあるかしら?
ちなみに私は"平等な世界"を目指していますよ。」
ミースはハイヴを見上げ、自分の目標を宣言する。
相手の意図が分からず、肩を落としてハイヴは答える。
「"平等な世界"?、・・・無理だね。
まず前提として生まれ落ちた時点で、既に人々は平等じゃない。
黒髪、白髪抜きにしても、身分、才能、容姿で、どうしても"差"が生まれる。
それらについてはどうするのかな?」
ハイヴは立ち上がり、玉座から降りながら否定する。
「教育、とにかく"選択肢"を広める。
生まれの差など、些細に感じるほどに選択肢を用意する。
どんなに時間がかかろうと、目指すつもりです。
あなたも髪色の差別はなくしたいでしょう?」
ミースはハイヴの否定に反論する。
{まず、私の前世と同じ、教育レベルまで上げないと話にならないわ。}
ハイヴは再び、ミースたちと同じ地面に降り立ち、向かい合う。
「いいや、私はそう思わない。
差別はあるべきものさ。
ただし、ちゃんと正しく機能していればと言う条件の元での話なのだけど、
・・・
黒髪の"改名"は特別だ。
他の色とは比べ物にならない。
それはつまり、
黒髪こそが人を支配し、統治する存在であるためなのだ!
何かの間違いか!それが現在ひっくり返っている!
黒髪こそが真の王族であり、他の色は、黒へかしずくべきなのだ!」
ハイヴはミースたちへ自論を発表した。
「…結局は、差別主義者か。」
ミースはため息と共にハイヴを明確に軽蔑する。
「…もういい、君も殺すよ。」
ハイヴは静かに手を強く握り締め、血を手のひらの中へためる。
その血をミースたちへ撒き散らそうとした。
それより先に、ミースは考えていたことを実行した。
以降は、彼女の考えである。
ハイヴと戦う時、最も考慮しなければならないこと、それは“血”であった。
ハイヴの発言を信じるなら、その血は直接一度触れるか、もしくは二度間接的に触れると死ぬという能力を持っている。
しかし、能力が発動する“間接的”とは、おそらく“物理的”な間接接触を意味しているのだろう。
もし“物理的”な間接接触が能力発動の条件でなければ、“空気”を介しても能力が発動し、既にミースは生きていないことになる。
そして、その対策は至ってシンプルである。
肉体を一切近づけず、遠距離戦を行うことだ。
ハイヴの発言がもし嘘であったとしても、
ジャッチスとの戦闘から、“肉体が近づくこと”が発動条件であることは明確である。
肝心の遠距離戦の方法についてだが、ミースはこれまでの戦闘から、ある方法を思い付いていた。
【・・・】
ミースは、誰よりも魔法の“天才”だ。
【勘違い】
考えてみれば、魔法を使っていて“底”を感じたことがないのだ。
【勘違い】
頭痛や眩暈により魔法を使えなくなったことはあったが、“使え”はしていた。
つまり、“脳”や“肉体”の限界が先に来ていたのだ。
【確信ある勘違い】
ミースの魔法の力を完璧に使うには、“人間の体”が邪魔なのだ。
ならば、肉体を捨て“魂”で魔法を使用すれば良い。
【確信ある勘違い】
そして、それは現れた。
"改名":"尾花卯花"
ミースの足元からスルリとそれは生成され、ハイヴの前に現れる。
それは、女性の形をした黒い魔法の塊であった。
特筆すべき点は、その頭部には顔が無く、輪郭だけののっぺらぼうとなっていることで、さらにそれは、“ミース”とかけ離れた痩せすぎな大人の体型をしている。
「黒っ!?」
ハイヴの驚愕より早く、女性の形をしたそれは、黒い衝撃波を放つ。
その衝撃波は、撒き散らされた血と共にハイヴを吹き飛ばし、独特な形の玉座の足元へと飛ばした。
『ああぁ、良ぃい気分だわ。
前世を思い出した時と同じ感覚よ。
今ならなんでも出来そう。
・・・
さて、まさか、私に勝てると思っていたの?
あなたの目の前にいるのは、“天才”、この国の新しい王なのよ。』
女性の形をした黒い魔法の塊、ミースこと尾花卯花は、久しぶりの全能感を覚え、その感覚に浸りながら王座を凹ませているハイヴに話しかけた。
ちなみに、卯花の魂が抜けた体は、糸が切れたように倒れ、イノセスとアルマに守られながら離れて行っていた。
「その黒、この出力、
まさか、“同胞”だったとはね。」
ハイヴは何事も無かったかのように立ち上がり、卯花に向かって手を広げた。
「素晴らしい黒だ!
私としては、同胞とあまり戦いたくない!
どうだろう?ブラック・ワスプに入らないか?
今なら四大黒原にしますよ!」
ハイヴは口角を上げながら卯花を褒め、勧誘する。
『はぁ、…第1席なら考えるわ。
そしてあなたには、私の踏み台になって貰います。』
卯花は2度目のその勧誘にうんざりしながら、そう足蹴にした。
「ははは、残念だ。
あぁ、本当に残念だよ。」
ハイヴはその答えに、笑いながらも額に手を当てドームの天井を仰ぎ見た。
「死ね。」
ハイヴは背中の羽を展開し、瞬時に飛び立つ。
狙いは、この場を離れて行った卯花の体とそれを守るアルマとイノセスである。
しかし、ハイヴの行く先を塞ぐ様に、目の前に瞬間的に黒い女性、卯花が現れた。
「っ!?」
ハイヴの頭部が消し飛ぶ。
その頭部は、卯花の左手のビンタで張り飛ばしていたのだ。
頭部が無くなりながらも、ハイヴは、両腕の鋭い爪で卯花を切り裂こうとするが、爪が通らない。
それはまるで地面を殴った感覚に近く、圧倒的な密度と質量を相手にしているようで、びくともしなかった。
“ゾクッ”
{いったいどれほど、魔法の力を込めているんだ。}
ハイヴの腹部に卯花の右ストレートが突き刺さる。
ハイヴはくの字に吹き飛び、地面にクレーターを作った。
そして地面に血の染みを広げる。
そのクレーターの前に、卯花は優雅に降り立ち、無様なハイヴを見下ろす。
『これなら、あのゴキブリと正面から殴り合えそうね。
さて、さっさと終わらせますか。』
そしてその染みから、蜂が湧き出し、クレーターの中心でハイヴは再構成され、卯花の“改名”について考える。
{強力な魔法人形ってところか、
だけど私を倒す決定力はないと見た!}
しかし、再構成後、クレーターの中から見上げると、そこには自分の味方ではない黒が広がっていた。
黒い女性、卯花は右手の手のひらを天井に向け、その先には普通車を覆えるほどの巨大な黒い塊を作り出していた。
それも30個もだ。
「まっ!?」
“ズンッ!!“
そのうちの1個の黒い塊が、ハイヴのいる場所へ落下する。
ハイヴの半身が、黒い塊に飲み込まれ、押し潰された。
{見誤った、
でもやはり、黒こそが支配者だ。}
女王蜂の残り、"0.5"匹、
ハイヴは悟る。
自分が負けることを、
たとえ万全な状態であったとしても、この状況をひっくり返すことが不可能であることを、
残りの29個の黒い塊たちが、無慈悲にもハイヴへ殺到した。
"無尽蔵な魔法の力"
それが“改名”:“尾花卯花”の能力であった。
“改名”とは、“前世の実体化”と呼ばれている。
そして断片的な前世の記憶から、勘違いが実体化、特殊な能力として発現していた。
では、前世の全てを思い出している者は、勘違いが無く、特殊な能力を持てないのか?
否である。
"改名"の実態、真実は、"確信のある勘違いの具現化"だ。
前世の記憶を持つ彼女が何を勘違いするのか?
それは"今世"についてである。
前世の記憶、
彼女の場合は、前世の強い劣等感がこの世界のミースの限界を、魔法の力を、確信を持って勘違いさせる。
そうして"改名":"尾花卯花"は、ここで"無尽蔵な魔法の力"を能力として確立させたのだ。
しばらく、クレーターにクレーターが重なったボコボコの地面を前に、卯花は立っていた。
そして、ハイヴが再構成してくる様子がないことを確認し、卯花はその場を離れ、体の元へ向かう。
『何よ、その顔は、』
ハイヴを倒し、アルマとイノセスと合流した卯花の第一声がそれである。
アルマとイノセスは、ハイヴを倒した女性の形をした黒い魔法の塊、すなわち卯花を見て、怪訝な表情を浮かべていた。
そして、その原因が声を上げたことで気が付いた。
「 嫌! そいつを近づけないで!」
それは、卯花の魂が抜け、動けない"はず"のミースである。
そのミースは、カラス人間こと父親アルマの後ろで怯えていた。
『え、』
ミースの強い否定を受け、卯花の背筋が凍り付く。
そして、ミースの髪の毛が"アイボリー色"になっている、いや、戻っていることを確認し、瞬時に理解する。
『・・・あぁ、』
つまり"卯花"の魂が抜けたとき、何が残るのか?
それは、この肉体本来の主人、"ミース"だ。
こうなるのでは、と"確信"があったが故に、卯花はこの事実をすぐに受け止める事が出来た。
{"黒髪は邪悪"、か、
"ずっと"当てはまっていたのね・・・}
この現象が示すことは、"卯花"による"ミース"の"搾取"である。
"改名":"尾花卯花"が発生した時点で、"ミース"の人生を終わらせてしまったと言っても過言ではないのだ。
無自覚だったにしろ、子供一人の人生を好き勝手にめちゃくちゃにしてしまった罪が、重く、鋭く、卯花の胸に突き刺さる。
{きっと私は、白聖教が歌う断罪すべき異端、悪役に間違いないのでしょうね。}
しかし、
しかし、それでも、卯花はここで止まるわけにはいかない。
"平等な世界"のために、
『お父様、いえ、アルマさん、イノセスさん、改めまして、ミースの"改名":"尾花卯花"と申します。
以後お見知り置きを。』
まず、卯花は彼らの前で立ち止まり、丁寧な礼と共に自己紹介をした。
「オバナウカ?」
イノセスはオウムのように聞き返す。
『嗚呼、卯花で構いませんよ。
それでなのですが、ミースは今、混乱している様子です。
私が戻れば元に戻るので、彼女をこちらに渡していただけますか?』
卯花は簡単に状況をまとめ、ミースを渡すように要求する。
それに対して、アルマが答える。
「それは、・・・出来ない。
君がミースから生まれたことは理解した。
戻ることが自然なことだとも。
しかし、これはあまりにも、
そう、これはまるでミースを生贄にするかのようではないか。」
アルマは奥歯を噛み締め、その言葉を絞り出す。
『その認識でも間違いありませんが、いけませんね、アルマさん。
1度私を受け入れ、賛同してくれたことをお忘れなく。
さぁ、せっかくジャッチスさんが"主語"を抜いて「後は頼んだ」としてくれたんです。
しっかり利用してあげないとですよ。
"王座"は目の前にあります。
共に"平等な世界"を目指そうではありませんか!』
卯花はアルマに要求を拒否されるも、別角度で説得を続ける。
「・・・そうか、あの時から卯花だったのだな。」
アルマは眉間に皺を寄せ、頭を抱える。
娘の命と、途方もない利益が天秤にかかる。
「お父様、」
怯えるミースが、そんなアルマにすがる。
ここで卯花は唐突に白と黒を広げる。
『大変でしょう。
私が結界を張ったので、解除してもらって構いませんよ。
あと、これは独り言ですが、私がいないミースは"ただの貴族令嬢"ですので、今後大変でしょうね。』
「・・・」
アルマはドーム状の結界を解除するが、"改名"までは解かず、普通の人型、人間には戻らなかった。
これは、悪魔の取引だ。
卯花もはっきりさせるためにわざとそう仕掛けている。
そして、アルマは決断する。
「すまない撤回しよう、卯花。
ミースは持って行け。」
口の無い、のっぺらぼうのはずの卯花の顔が、笑顔に歪む。
『良い決断です、アルマさん。
いえ、"お父様"、これからもよろしくお願いしますね。』
卯花はアルマの答えを褒め、ミースへ歩み寄る。
「お父様! お父様! どうして!
ああ! 嫌! 嫌なのに!」
ミースはアルマにすがり続けるが、アルマはそれを無視し、暗闇が広がる前だけを見つめ続けていた。
女性の形をした黒い塊、卯花がミースへ近づいてくる。
「近づかないでよ!
自分が自分じゃなくなる!
私は私なの!」
ミースはアルマから離れ、みっともなく走り、その黒から逃げる。
『・・・』
卯花は淡々と歩き、それを追いかける。
そうして、ドーム状の結界の壁にたどり着く。
「いや! やめて!
入ってこないでぇぇえ!
私の中に入って来ないでぇぇぇえ!」
黒いドームの壁に張り付き、ミースは泣き叫ぶ。
『・・・』
ついに手が届く距離となり、卯花はミースへ触れようと手を伸ばす。
『!』
しかし黒い手が触れるその前に、白い光の塊が卯花とミースの間に割って入る。
「卯花、ミースが嫌がってます!
止めるべきです!」
間に割って入り、声を上げたのはイノセスである。
「私はさっきの話を理解できませんでした!
しかし、"この"ミースが嫌がっている!
私はミースを守る!」
イノセスはミースを守ることを宣言した。
『ふふ、単純で羨ましいですが、今まであなたと接してきたのは"私"ですよ。
ミースを守るということは、そんな私を消すことです。それは酷いんじゃありませんか?』
卯花は少し離れ、イノセスに対して言葉を続ける。
「わからない!
でもこれはダメな気がする!
このミースを守る事が間違いなら教えてください!
私が!、わかりやすく!」
しかし、イノセスは理解せず、引かない。
『・・・察してほしいな。』
卯花は曖昧に返事をする。
「わからない!」
イノセスはキッパリそう言う。
『・・・あなたの行動は人間として正しい。
わかりやすく説明すると、私は今からミースを殺して、彼女になりすまします。
・・・可能なら、あなたにも“その私”を受け入れてほしい。
あなたは、私と比べるのもおこがましいほど良い人間だ。
あなたまでも、殺したくない。』
卯花は偽らず事実をイノセスに伝え、苦しそうな声で理解を促す。
「ありがとうございます!
わかりました!
でも、私はミースを守ります!」
卯花が何をするか理解したイノセスは、胸を張ってミースを守ると宣言した。
「ありがとう、
ありがとうございます。
お願いです、私を助けて、」
ミースは卯花との間に入り、自分を守ると宣言したイノセスに感謝を伝えた。
「安心して、絶対助けるから!
そして卯花! 私はあなたも助けたい!」
イノセスはミースだけでなく、卯花にも手を差し出した。
『・・・どうして?
私は罪のない子供を殺める悪人だよ。』
卯花は少しの動揺を見せながらも、聞き返す。
「考えはないの!
でも、あなたは私を助けてくれた!
それに・・・今のあなたがとても苦しそうだから。」
イノセスは、そんな卯花に理由を説明した。
『ありがとう、その言葉だけでも嬉し』
“ザンッ!”
剣が高速に飛来し、イノセスの胸に突き刺さる。
その剣の持ち手は、黒いカラスが持っていた。
『!ッ、』
「ごはっ、絶対助けるから。」
血を吐き出しながらも、まだ助けることを諦めないイノセスは、卯花に歩み寄り、彼女の手を掴もうとしたが、その手は空を切り、地面に倒れ、血を広げた。
「いやああああああああああああああ!」
ミースの絶叫が痛いほど響く。
『・・・』
卯花はそれを呆然とそれを見下ろし続けた。
「いつまでくだらない話をしている。
早く王になれ。」
そんな卯花の後ろに、カラス人間のアルマが降り立ち、急かした。
悪魔の取引は、既に完了している。
『・・・わかっているわ。』
卯花はアルマの声に何事もなかったかのように返し、再びミースに歩み寄った。
「ねぇ!絶対助けるって言ったじゃない!
早く起きてそいつから私を守ってよ!
ねぇ!ねぇ!お願いだから!ねぇ!」
ミースは血に塗れながらも倒れて動かなくなったイノセスを必死に揺さぶっている。
卯花はそんな酷い有様のミースの頭を、一息に鷲掴みにした。
今度は邪魔が入ってくれなかった。
『・・・』
女性の形をした黒い塊が、徐々にミースと一体化し始める。
「ああ!ああああああ!
嫌!嫌ああああああ!
入ってくる!入ってくるな!
知りたくない!知りたくない!
そんな事!知りたくないぃぃぃ!!」
ミースは、必死に抵抗するが、意味をなさず、
圧倒的な力で、黒が自身へ染み込んでいく。
アルマは、そんな苦しむミースを、目を逸らさずに見つめ続けた。
しばらく経過し、独特でボロボロな王座には、血濡れたミースが堂々と座る。
その王座の脇には、アルマが、形だけ応急処置を施したイノセスを抱えて立っていた。
そして、ドーム状の結界が解除される。
徐々に、幕が上がっていく。
{嗚呼、気分が悪いわ、
でも“平等な世界”にかなり近づけた。
例え、どんなに時間がかかろうと、
例え、何人が犠牲になろうと、
例え、世界が滅びようと、
“平等な世界”を作る。
“平等な世界”が作れない世界なんて、滅びるべきよ。}
「さぁ、“平等な世界”へ突き進みましょう。」
※備考
王都を襲った"ブラック・ワスプ"のメンバー達ですが、実は弱点を付ければ、キャップ・ブラック(4大黒元第4席、第11話参照)の様に簡単に倒せます。
◯ボトル・レディッシュブラウン
弱点:水
爆発の衝撃波が、水の場合あまり作用せず、全身に水を被れば、爆発出来なくなります。
◯キトス・ブラック
弱点:火煙
彼にとってそれは、猛毒として作用します。
◯ハイヴ・ブラック
弱点:火煙
火煙に包まれると、体を構成していた蜂達が勝手に霧散します。
また、火煙の中では、血の死の効果が無くなります。
余談、
最後まで読んで頂きありがとうございました。
楽しんで貰えていたら幸いです。
"悪役令嬢、バッドエンドへ突き進む!"は、一旦これで終わりとさせて頂きます。
これからも面白い物語を作り続ける事を目標に精進して参ります。
以上、また機会がありましたらよろしくお願い致します。




