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第25話 王都ホワイトダムと謁見に向けて

 目を開けると、赤い模様(モヨウ)の入った見知らぬ天井(テンジョウ)が目に入る。


 それを眺めていると、自然とここがどこで、自分が何をしていたのかを思い出していく。


 {あぁ、ここはレッド侯爵家(コウシャクケ)ね。}


 目を覚ましたミースは、体を起こし、伸びをする。

 「う、うーん、よく寝たわー。」


 気分良く目覚めたミースは、ベッドから出て周囲を確認する。

 ミースの専属メイドであるサヤは、離れているのか姿が見えなかった。

 また時間は、日が山に隠れているため、夕方であることが分かる。


 仕方がないと、1人で身支度(ミジタク)を始める。

 服も着替え、用意されていた赤く動きやすいドレスに着替えた。


 "コンコン"(ドアのノック音)。

 そこへミースの部屋の扉が控えめにノックされ、できるだけ音を出さないように静かに開け閉めされた。


 そして小さな声で「失礼します。」と言う声が上がる。


 室内に入ってきたのは、サヤであり、

 ミースが身支度(ミジタク)を終えていることを確認すると、顔を青くした。


 「あら、どこに行ってたの? サヤ、」

 ミースは、そんな様子のサヤへ何の気なしにそう聞く。


 「ミ、ミース様!?おはようございます!も、申し訳ございません!身支度(ミジタク)を手伝えず、」

 サヤは頭を下げ、身支度(ミジタク)を手伝えなかったことを謝罪(シャザイ)する。


 「良いのよ。最近はイレギュラーなスケジュールが立て続いているもの。

  それよりもお爺様のところへ行くわよ。」

 ミースはサヤを許し、これから何をするのかを伝える。


 「ありがとうございます。

  しかし、・・・早すぎるのでは?」

 サヤは自分を許せないのか、釈然(シャクゼン)としない様子だったが、切り替える。

 そして、ミースのこれからの行動に対して恐る恐る指摘した。


 「早すぎる?何の話?」

 ミースはその指摘(シテキ)の意図を(ツカ)めず、聞き返す。


 「あ、え、えっと、

  こんな朝早くだと、グリーガス様も起きていないかと、」

 サヤは、そう付け加える。


 「朝?今って夕方じゃなくて?」

 ミースも血の気が引いてくる。


 「朝でございます。ミース様。」

 サヤはそうキッパリと答えた。


 ミースは再び太陽の位置を確認する。

 太陽は山から出て、登り始めていた。紛れもなく朝である。


 この衝撃で、ミースの脳は完全に覚醒し、高速に回り出す。

 {朝!?私が寝たのって朝だったわよね!

  一体どれだけ寝ていたの?魔法を使い過ぎたせい?

  それとも単純な疲れ?何はともあれ確認しなきゃ、}


 「ねぇサヤ?

  私、どれだけ寝ていたの?」


 「はい、昨日の朝からお休みになられていました。」

 サヤは小首を傾げながら答えた。


 「・・・」

 ミースは、ホッと胸を()で下ろす。


 {昨日ということは、約24時間ぐらい寝ていたってことね。

  まぁ、許容範囲内かしら。原因はただの疲労(ヒロウ)ってところね。}

 彼女にとって最悪なのは、2、3日以上が経過していることであり、原因が魔法で魔法を全力で使ってその都度(ツド)数日が(ツブ)れてしまうようであれば、全力を出すタイミングを慎重(シンチョウ)(ハカ)らなければならないからだ。


 「分かったわ、ありがとう。」

 ミースはサヤに礼を言い、大人しく朝食を待つことにした。



 しばらくして、朝食の用意ができたことをレッド侯爵家のメイドに案内され、食堂へ向かう。



 そこもやはり赤色が主体となった空間が広がっており、長方形のアンティークなテーブルの上にそれぞれ食器が用意されていた。


 そしてそのテーブルの上座(カミザ)には、角刈りの赤い髪を持つ強面の初老の男性、"グリーガス・レッド"がスーツのような紳士服に身を包んで座っている。


 グリーガスの隣には、スカーレット色の美しい髪を後ろでお団子のようにまとめ、(スルド)(ヒトミ)を持ちながらも柔和な表情を作り、赤を主体に白のアクセントが入った美しいドレスを身に(マト)った初老の女性が座っていた。


 その女性はグリーガスの伴侶(ハンリョ)であり、ミースのお婆さんにあたる人物、"バイネス・スカーレット・レッド"である。


 「おはようございます。お爺様、お婆様。」

 ミースは彼らにドレスの(スソ)を持ち、貴族的な挨拶をした。


 「あぁ、おはようミース。

  よく眠れたようで何よりだ。」

 グリーガスがまず挨拶を返す。


 「おはよう。

  あまり心配をかけるものじゃありませんよ。」

 バイネスは、(オダ)やかに、しかし(シン)のある声でミースにそう返す。


 「はい、お婆様。

  ご挨拶もできておらず申し訳ありません。」

 ミースはバイネスに対し、再び頭を下げる。


 「だいたいの事情は主人から聞いています。

  あなたの目標に関して、色々と思うところはありますが、

  主人に(メン)じて、今は良しと致しましょう。」

 バイネスは、その柔和(ニュウワ)な表情と(オダ)やかな声とは裏腹(ウラハラ)に、冷たい言葉をミースにかける。


 「ありがとうございます、お婆様。」

  {この気の強い感じ、やっぱりお母様と血が(ツナ)がってると感じるわね。}

 ミースは返事と共に心の中でそう考えた。


 「さぁ、席に座りなさい、朝食としよう。」

 グリーガスはミースに席に着くように伝える。


 「はい、お爺様。」

 ミースはその言葉に従い、メイドの案内通り席に座った。


 「おはよう、父ちゃん、母ちゃん。

  げっ、」

 ミースが席に着いたその時、グリーガスとバイネスの子供“グラス・レッド”とその影に隠れる幼女が姿を現す。


 グラスは、彼らに挨拶を返した後、同じくテーブルを囲んでいるミースに気が付き、顔を引き()らせる。


 {あら、人の顔を見て失礼しちゃうわね。

  一体私が何をしたって言うのかしら、}

 ミースは、そんな反応のグラスを心の中で(イジ)った。


 「何だ?早く席に着きなさい。」

 グリーガスは、様子が少し変わったグラスを急かす。


 「う、うん、」

 グラスは、バツが悪そうに頷き、席に座る。


 「おはようございます。お父様、お母様。」

  続いてグラスの影に隠れていた幼女が挨拶する。


 彼女は、このレッド侯爵家(コウシャクケ)の末っ子、"リーネス・レッド"(髪色はスカーレット色)で、幼児用の簡易的でありながら立派な赤とオレンジ色のドレスを着た可愛らしい女の子だ。


 ミースは、リーネスに挨拶する。

 「あはよう、久しぶりね、リーネス。」


 「ミ、ミース姉様!わあ〜!

  お話には聞いてましたが、本当に真っ白!

  とてもお綺麗(キレイ)ですわ!」

 リーネスは、眠そうな目を一瞬で輝かせて、ミースの容姿を褒める。


 「ふふ、ありがとう。

  今回は、そんなに長居できないけど、近いうちにまた来るから、その時に遊びましょう。」

 {ほんと良い子ねー!}

 ミースは、上機嫌になり、お返しに遊ぶ約束をする。


 「そうなんですね。でも、次の機会が楽しみです!」

  リーネスは、ミースが長居できないことを残念がるが、近いうちにまた来ることを聞き、機嫌(キゲン)を持ち直す。


 「さぁ、お話はここまで、朝食ですよ。」

 ミースは、ここで話を区切り、リーネスに朝食を(アナガ)す。


 「はい!ミース姉様!」

 リーネスはその言葉で直ぐに席に座るのだった。


 こうして、この家の身内が一つのテーブルに全員が(ソロ)い、それを確認したメイドが朝食の配膳(ハイゼン)を行う。


 朝食は、赤いミネストローネのようなトマトスープに、白パン、別皿にベーコン、緑の葉物が乗ったものが目の前に出される。


 「さぁ、頂こう、」

 そしてグリーガスが音頭(オンド)を取り、朝食が始まった。


 {いただきます。}

 心の中でそう呟き、ミースは食事へ手を伸ばす。


 白パン、ベーコン、葉物は、何処でも似たような味だが、

 トマトのスープは格別で、少し酸味(サンミ)を感じ、そのお陰かサッパリとした口当たりだ。

 さらに、トマトとそれ以外の野菜の旨味(ウマミ)甘味(アマミ)、がスープに溶け、とても上品な甘じょっぱさを作り上げていた。


 {やっぱり、前世の記憶があっても、このトマトスープは美味しいわね。}

 ミースは、約24時間以上何も食べていなかったこともあり、食べる手が止まらず、その朝食はペロリと食べられた。



 他の全員の食事が終わり、皿が下げられていく。



 {ごちそうさまでした。}

 ミースは心の中でほう(ツブヤ)き、食事を終える。


 {さて、カズララとイノセスを(ヒロ)って白聖教にでも行こうかしら?次の出発の段取りをしないと。}

 ミースは、今日の予定を頭の中で組み立てた。


 「ミース、この後、客間に来なさい。

  王都のことについて話がある。」

 その時、グリーガスが重々しく、話があることを伝えた。


 「…わかりました。」

 ミースは口元を引き()らせながら、了承した。


 {うわー!嫌な予感がするー!}





 場面が変わり、レッド侯爵家(コウシャクケ)の客間。


 そこには、

 1. ミースのお爺ちゃん、"グリーガス・レッド"

 2. グリーガスに呼ばれた主人公、"ミース・アイボリー"

 3. ミースの専属メイド、"サヤ"

 4. ミースの護衛、"カルト・コバルトグリーン"

 5. ミースの下僕、"カズララ・ラズベリー"

 6. 突然現れたライバル聖女、"イノセス"

 7. イノセスの護衛、"クローム・カーマイン"

 8. 白聖教代表、まとめ役の"バラント・レグホーン"


 以上、合計7人が集まっていた。



 {わざわざ集める必要はなかったわね。}


 客間の中央には四角のテーブルとこの国の地図が用意され、それを囲むように集まった彼らを前に、ミースはそう思った。


 「まずはご参集(サンシュウ)いただき、感謝を、

  これより王都へ向かい、王との謁見(エッケン)に関する話し合いを行う。」

 バラントがこの集まりのまとめ役として挨拶をする。


 「さて、早速だが、問題点を提示しよう。」

 そして、その前置きを置き、バラントは話を始めた。



 ◇◇◇


 彼の話した問題点を、ミースの脳内でまとめると、以下の通りである。


 ブラック・ワスプに動きがあり、国の全土から人が集まって"王都が戦場になる"可能性があるということだ。


 {はぁ!? 国の中枢(チュウスウ)が、なんで突然戦場になるのよ!}

 と、思いもしたが、戦場になるのを(フセ)げない理由は皮肉なものであった。


 (フセ)げない理由としては、集まってくる人間全てが"ブラック・ワスプ"の人間というわけではないことが大きい。

 集まってくる人々は、それぞれ王との謁見(エッケン)が目的で王都を訪れる。


 王を一目見たい、近くにいたい、と純粋(ジュンスイ)に考える人々を、誰が止められるだろうか。

 そもそも、そういった感情を利用して成り立っている宗教や王政で、その人々の行動を止める資格はないだろう。

 まぁ、事前にそういったルールを(モオ)けることはできるだろうが、信仰心(シンコウシン)などが下がるのは明白だ。


 {人を隠すなら人の中ってね。ちょっと違うか、}


 そういった理由で、ミース達が王都に着く頃には、王都へ入る門の前は人でごった返し、入るのに一苦労することになる。

 最悪の場合、ミースたちが王都へ入る前に、人でごった返しているあいだに"ブラック・ワスプ"の人間に見つかり、4大黒元の1人が飛んで来ればお終いだ。


 4大黒元の恐ろしさは、ミース自身、身をもって経験済みのため、かなり慎重(シンチョウ)になければならない。


 ◇◇◇



 「・・・ということで、我々からは、今年の謁見(エッケン)(アキラ)めることをお(スス)めします。」

 バラントは、そう説明を終え、提案する。


 「・・・そうね、今年は(アキラ)めた方が良さそうね。」

 ミースは、グリーガスの提案を受け入れようと考える。


 そもそも、ミースが王都に行く理由は、聖女のライバルである"イノセス"が先に王へ謁見するのを防ぐためであり、イノセスが行かなければ、ミースもそこまで危険を(オカ)す必要はない。


 しかし、


 「私は、行くわよ!」

 イノセスは、突然そう宣言する。


 「は?」

 ミースの思考は、一瞬吹き飛ぶ。


 「どうせ、クロームは応援に向かうのよね?」

 イノセスは、クロームに向き直り、そう(タズ)ねる。


 「その通りですが、危険です。

  グリーガスさんが言った通り、戦場となると、いつ危険にさらされるかわかりません。」

 クロームは、バラントが言った通り、王都へ行かないことを提案する。


 「そ、そうよ、イノセス。

  あなたが行くことで、あなたを守ろうとした人たちが怪我をしたり、余計(ヨケイ)混乱(コンラン)(マネ)くかもしれないわ。

  ここは行くべきじゃないのよ。」

 ミースも続けてイノセスを(イサ)める。


 「えー!

  でももう、"行く"って言っちゃったし、

  王様も私に会うことを楽しみにしているんじゃないかしら?」

 周りから否定されながらも、イノセスはそう反論する。


 「ッ、・・・」

 {ぐ、一理あるわね。}

 かく言うミースも、王との謁見(エッケン)に向かう事を連絡済みであるため、ミースのその反論は耳が痛い内容である。


 「確かに、

  必ず戦場となると決まった話ではない。

  むしろ、王の膝下(ヒザモト)(スベ)り込めれば、最も安全と言えるな。」

 イノセスの意見を肯定したのはカルトである。


 {ちょ、そこは止めてよ。}

 ミースは内心、カルトへ苦言を吐く。


 「了解した。

  カルトとクローム、二人の支部長がいれば、大丈夫だろう。

  ・・・では、イノセス様は向かうということで、」

 バラントは納得し、話をまとめようとする。


 「あ、あの、少しお待ちください!」

 ミースは、バラントの話のまとめを止める。


 {はあ!なんで、そうなるのよ!

  全く、4大黒元の危険性を知らないから言えることよね!}



 何はともあれ、これは"印象問題(インショウモンダイ)"である。



 おそらく白聖教がホローしてくれるだろうが、

 行くと言っておきながら己の保身のために行かなかった者と、危険も(カエリ)みず向かった者、

 どちらが印象が良いだろうか?

 無論、危険も(カエリ)みずに向かった者である。


 ミースはそれを、指を(クワ)えて見ているわけにはいかない。


 「グリーガスお爺様、私も行きたいと考えています。」

 ミースは、グリーガスと無茶をしないと約束したこともあり、一度グリーガスに了承(リョウショウ)を得ようとした。


 グリーガスは神妙(シンミョウ)な顔をする。

 「うーむ、・・・」


 ミースが何を意識しているのかを理解したグリーガスは、頭を抱えた。


 「お爺様、行かせてください!

  約束は守ります!

  少しでも危険になったら引きます!

  ですから!」

 ミースは、そう(タタ)み掛ける。


 {ほんと、お願いお爺様!}


 「・・・わかった、ミース、

  行って来ると良い。

  その代わり、私が信頼する人物を同行させなさい。」

 グリーガスは、一つ条件を付けて受け入れた。


 {よし!}

 「ありがとうございます!お爺様!」


 「ミース様、イノセス様、

  2人とも王都へ向かわれること、了解した。

  白聖教も最大限サポートさせていただきます。」

 バラントがミースのやり取りを確認し、改めて話をまとめる。


 そうしてミースは、同行者を次々と増やし、雲行(クモユ)きの怪しい王都へ向かうことが、改めて確定するのであった。





 その後、彼らはさらに王都へ向けての会話を交わし、それぞれに準備を始める。



 再びミースはグリーガスに呼ばれ、レッド侯爵家の1階の廊下をサヤとカズララを連れて歩く。

 向かう先は、レッド侯爵家(コウシャクケ)の使用人が住んでいる区画(クカク)である。


 通りかかったメイドに、グリーガスは声をかけた。

 「“ラコッタ“は、どこにいるか?」


 「はい、今は確か・・・すみません、わかりません。

  事務室に行けばわかると思います。」

 メイドは、質問にはっきり答えられず、申し訳なさそうにした。


 「わかった。」

 軽く返し、グリーガスは再び歩を進めた。


 「ありがとね。」

 ミースも軽く礼を言い、後に続く。


 さて、名前が挙がった人物、フルネームは"ラコッタ・テラコッタ"という。

 彼女はこのレッド侯爵家の使用人をまとめる人物であり、グリーガスが幼少期の頃から彼を支えている重鎮(ジュウチン)である。


 簡単に言えば、この家のお局様(ツボネサマ)だ。


 そして、今後のミースのお目付け役でもある。


 {嫌いな人物ではないけれど、かなり制限(セイゲン)されることになりそうね。}


 ミースは、そう心の中で覚悟を固めた。

 前世の記憶を思い出しても、敵わないと思ってしまう人物の一人が、何を隠そう彼女、"ラコッタ・テラコッタ"なのである。



 事務室につき、中に入る。


 中は、学校の職員室を思い出させる空間で、机が規則(キソク)正しく並んでいる。


 それぞれの机には書類やファイルのようなものが置かれ、所々で事務的な仕事をしている者たちが座っていた。


 彼らはグリーガスを確認すると、立ち上がり、頭を下げる。


 「おやおや、グリーガス様、

  わざわざこのような所に、何のご用向きでございましょう?」

 その中でも、一番奥の書類が多い席の人物が代表して声を上げ、グリーガスの前に出てきた。


 その人物を簡単に表現すると、でかいお婆さんであった。

 年季の入ったロング(タケ)のメイド服に、頭にはお団子状に髪をまとめており、顔の彫りが深く、歴史を歩んできたであろう美しいシワが刻まれている。


 また、メガネをかけており、

 特筆すべきはその体格だ。


 ピンと背筋が伸び、約2mもの身長を(ホコ)る。

 さらに体格も良く、成人男性とタイマンを張っても余裕(ヨユウ)で勝てそうなほどである。


 「ラコッタ、ここにいたか。

  重要な仕事を頼みたい。」

 グリーガスは、ラコッタに仕事があることを伝えた。


 「はい、なんなりと申し付けください。」

 ラコッタは、慣れた様子で頷き、グリーガスの言葉に耳を(カタム)ける。


 「5日後、王都ホワイトダムへ、ミースが向かう。

  ついて行ってくれないか?」

 グリーガスは、手短にそう伝えた。


 「承知いたしました。

  …しかし、そろそろ私も引退したいものです。」

 ラコッタは、承諾(ショウダク)しながらも小言(コゴト)()らす。


 「ははは、先日まで生涯現役(ショウガイゲンエキ)宣言(センゲン)していた人間が何を言うか。」

 いつものことなのか、グリーガスはそう茶化した。


 「よろしくお願いいたします、ラコッタお婆。」

 ミースは、(スソ)を持ち、貴族的な礼をして頼み込む。


 「…いやはや見違いました。ミースお嬢様、

  ずいぶん変わられましたね。」

 ラコッタは、その所作に(オドロ)く。


 {何かおかしいところでもあったかしら?

  あぁ、白髪に驚いたのね。}

 ミースは、ラコッタの反応に違和感を感じ、それを白髪に(オドロ)いたと解釈(カイシャク)した。


 「おおっと、失礼、挨拶(アイサツ)(オク)れましたね。

  お久しぶりです。

  私がつく限り、容赦(ヨウシャ)なくお世話させていただきますので、お覚悟を。」

 ラコッタも、綺麗(キレイ)な所作で礼を返し、挨拶する。


 「え、えぇ、よろしくね。」

 ミースは、ラコッタの有無(ウム)を言わせない圧に押される。


 「ラコッタお婆、もう一つお願いがあります。」

 そして、ミースは申し訳なさそうに話を続ける。


 「えぇ、えぇ、何なりとお申し付けください。」

 ラコッタは、心良くミースのお願いを聞く。


 「そこにいるカズララを、2人目の私の専属の使用人に加えたいと考えているのですが、

  彼は使用人としての仕事は初めてなのです。

 サヤではまだ経験不足ですし、

 と言ってもこの5日間、(ホオ)っておくのも勿体無(モッタイナ)いので、ラコッタお婆の下でいろいろ教えていただけないかしら?」

 ミースは、カズララに使用人の仕事について教えてほしいことを伝える。


 「よろしくお願いします!」

 カズララは、ミースの後ろより一歩前に出て、深々と頭を下げながら、そう願い出る。


 「(カシコ)まりました。

 短いですが、その間にできる(カギ)りのことは()め込みましょう。」

 ラコッタは、まるで獲物(エモノ)を見る肉食獣のようにカズララを見下ろす。


 「ありがとうございます!」

 カズララは、頭を下げたままだが、その圧を感じ、少し(フル)えを(カク)すように礼を言う。


 (アヤ)ういものを感じたミースは、一言釘(ヒトコトクギ)()す。

 「ラコッタお婆、彼は私の命の恩人(オンジン)なので、くれぐれも丁重(テイチョウ)にお願いします。」


 「えぇ、えぇ、もちろんですとも。」

 ラコッタは、ミースの(クギ)に笑顔を深め、了承(リョウショウ)するのだった。


※備考

レッド侯爵家、家系図


魔法都市"スリネトス"共同両地の

 レッド侯爵家、代表:グリーガス・レッド

         妻:バイネス・スカーレット・レッド


下記より子孫である。

1番目、レッド侯爵家の主領地"フーレチ"の

       現領主:バイガス・レッド

          (嫁:ロミス・ローズ・レッド)

          (姉:ローバー・レッド)

          (妹:マーズ・レッド)

2番目、

アイボリー家に嫁いだ:アネス・ピンク・アイボリー

       (嫁ぎ先夫:アルマ・アイボリー)

          (兄:ミーマ・アイボリー)

      "主人公"(妹:ミース・アイボリー)

3番目 白聖教へ入信:リーガス・スカーレット

4番目スリネトス在住:グラス・レッド(スカーレット)

5番目スリネトス在住:リーネス・レッド(スカーレット)

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