第16話 訪問、ブラック・ワスプ。
ブラック・ワスプの構成員であるカズララ・ラズベリーとラズド・ブラウンの案内の元、
“ミース・アイボリー“こと“カーテン・ブラック“は、
彼らの重要拠点を訪れる。
魔法都市スリネトスの町の魔法を回避した方法だが、
それは、至ってシンプルな方法であった。
門番に内通者がおり、
偽装の住人のカードを発行。
それを使用して、彼らはこの町を出入りをしているのである。
そしてミースもそれに肖ったのだ。
{ガバガバだな〜}
それを目の当たりにし、
ミースは、そう思わずにはいられなかった。
だが、さすがに自由自在に、とまでは行かない様で、
急遽、ミースの偽装住人カードを用意し、町を出る手続きをした、門番の内通者には、苦い顔をされる。
だが、そこは、黒い髪を見せれば、喜んで対応してくれた。
因みに、本当の住人カードの扱いだが、
今回、ミース自身のカードは、サヤに預けており、問題は無い。
本来は、"ブラック・ワスプ"の他の構成員や施しをしているホームレスなどに預けているようだが、
信用出来る訳がない為、サヤに預けてて正解であったと感じた。
話を戻すが、
ミースは“ブラック・ワスプ”の拠点の前に到着した。
その拠点の場所は、白聖教が押さえている情報通り、スリネトス外の南部の山である。
そして、反対側の山では、白聖教の約200人規模の大軍団が、演習と言う名目で、堂々(ドウドウ)と拠点を攻める準備をしていた。
{何この状況?、もうお終いじゃない。}
ミースは、あまりに絶望的な状況で、呆れてしまう。
さて、ここで彼らの拠点の話に移る。
外見は、自然の洞穴だ。
植物などが生い茂り、外からは、一見わかりずらい。
洞穴の中は、暗く、誰かの黒の魔法のモヤが漂っていた。
しばらく進んだ後、洞穴を塞ぐ様に巨大な門が現れる。
ミースをここまで案内したカズララが、その門に近づく。
「“カズララ・ラズベリー“です。
重要人物をお連れしました。
門の開錠を願います。」
カズララは、そう門へ向かって開ける様に要求した。
すると、門の前の小さな小窓が開き、ブラック・ワスプの構成員の1人がこちらを覗いて来る。
「カズララ?それにラズド、か?
命令違反だぞ、白聖教にバレたらどうしてくれる。
よっぽどの重要人物なんだろうな?」
その人物は、彼らの迂闊な行動を注意する。
{まぁ、当然の反応ね。
目の前に白聖教の大軍団がいるんだし、
そりゃあ、ピリピリもするわね。
でも、通して貰うわ。}
ミースは、相手の心情を読み取り、同情するが、
有無は言わせないと、フードを外し、黒いモヤのマスクと黒髪を見せつける。
「私は、“カーテン・ブラック“、
この黒髪を見てわからないかしら?
あなた達の中で1番偉い人物に用があって来たわ!」
そして、彼女は、そう発言した。
「黒髪!、・・・確かに。
失礼した、通るといい。」
カーテン(ミース)の黒髪を確認し、重要人物だと確認できた様で、門が開かれる。
門の中は、当然暗く、整備されており、石造であった。
この世界で言う、立派なダンジョンである。
さらに、奥に進むと迷宮の様な複雑な構造となっており、
アイボリー家にある地下牢よりも、深く、広大で、なんと地下6階まであった。
黒の魔法が無く、この地下を探索するとなると、かなり大変になる事が伺える。
カーテン(ミース)は、物珍しい視線にさらされながら、引き続き最奥に案内されて行く。
最奥には、巨大な広場と、一室の会議室が存在した。
1番偉い人物は、会議室にいる様で、そちらに案内される。
会議室は、中央に1つの円卓が置かれ、黒い蜂の様なマークが描かれた大きな幕を壁に掲げた、シンプルな構造をしていた。
その円卓に座る巨大な影が1つある。
それは、太った女性であり、蒸した芋を食べながら、彼女を歓迎してくれた。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、(笑)
よく来ましたねぇー
“黒“の同士よぉー
私は、ブラック・ワスプ、4大黒原が第3席、
"ポテト・ブラック"、よろしくねぇ〜。」
{ポテト・・・、ふふ、ピッタリな名前ね。}
ミースは、嘲笑を顔に一切出さず、その名前と見た目、食べている物の感想が、脳内で漏れる。
そして彼女は、ポテトと名乗った女性の目の前に立った。
ちなみに、カズララとラズドは、会議室内の扉の前で待機している。
「私も、お会い出来て光栄です。
私は、“カーテン・ブラック”と申します。
こんな姿で申し訳ありませんが、お許しを、」
カーテン(ミース)は、現在も、頭部を黒いモヤで覆っており、顔を隠し続けている。
それは、身分の高い人物に対して、失礼に当たる行為だが、“ポテト・ブラック”は、気にしていなかった。
「この度は、ある情報をお届けに参りました。」
ミースは続けて要件を話した。
「へぇ、情報ですかぁー、
早速、聞かせて貰えますかぁー?」
ポテトは、その情報に興味を示す。
「確たる証拠は、ご用意出来ませんでした。
なのでこの黒髪に免じて信じて欲しいのですが、
今、反対側の山で白聖教の大軍団が演習を行なっていますよね?」
ミースは、情報に対する証拠が無い事を始めに話し、さらに現状の確認を取る。
「そうね〜、」
ポテトは芋を食べ続けながら、肯定した。
証拠がないのも気にしていない様子である。
ミースは、理解を得られた事を確認し、続けて大きく口を開く。
「その演習は、カモフラージュです。
彼らの目的は、"この場所"、
明日の朝、ここに攻め入るつもりなのです。」
ミースは、その情報を言い放った。
「そうなの、・・・」
ポテトは、芋を食べる手を止める。
「確かにねぇー、
今年の演習は、怪しい点が多いわぁー。
それに、ここまで拠点に近付かれたのは、初めての事ね。
藪蛇だから、やりずらいのよぉ〜、」
ポテトは、考える。
「私は、ここを放棄する事を提案します。」
ミースは、そう提案した。
「極端ねぇ〜。
悪くはないけど、放棄した所で、
そんな大きな動きを見逃す相手では無いでしょう?」
ポテトは、そう反論する。
「・・・まさか、
地下を拠点としていて、
出入り口を、複数用意して無いのですか?」
カーテン(ミース)は、呆れ半分で、そう答える。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、(笑)
御名答です、鋭いですねぇー。
その通り、隠し通路がありますよぉ〜。
でも、“勘違い“している事があります。」
ポテトは、彼女を試していた様で、意味深な言葉を返す。
「“勘違い“、ですか?」
カーテン(ミース)は、キョトンとする。
「我々の方がぁー、
白聖教のあの軍団より、強いのですよぉ〜」
ポテトは、再び芋を齧り、そう宣言した。
{強い?、何の根拠が?
まぁ、ポテトが、あの"キャップ・ブラック"と同じ強さなら、分からなくないけど・・・}
ミースは、その宣言の意図を考える。
アイボリー渓谷鉱山で暴れた、"キャップ・ブラック"は、
彼女が弱点を突き、瞬殺したとは言え、
彼女の中での彼は、どんな戦況もひっくり返す程の力があると、強く印象に残っていた。
「余計なお世話でしたか?」
彼女は、ポテトの話しを聞き、無駄足だったか確認する。
「いやいやぁ〜、
戦力で勝っていてもー、
不意打ちをかけられていたらぁ〜、
どうなっていたかわかった物じゃないからねぇー、
だから情報提供には、すごく感謝しているわぁ〜。」
ポテトは、情報が役に立っている事を伝え、感謝する。
「それは、良かったです。
わざわざ来た甲斐がありました。
それでは、私は失礼します。」
{これで最低限やっておくべき事が終わったわね。
出来れば、彼らの白聖教に勝てる根拠を知りたかったけど、
早く戻れるに越した事はないわね。}
ミースは、自分の役割が終わった事を認識し、帰ろうとした。
「お待ちをぉー、本当に感謝しているんですよぉ〜
この功績に、どうですぅ?
ブラック・ワスプに入りませんかぁー?
今なら、4大黒元の第4席になれますよ?」
ポテトは、彼女を引き留め、勧誘する。
{見る目があるわね。
でも残念、私は1番上しか興味がないの。}
「お誘い頂き、ありがたいのですが、
私は、この背丈の通り、幼いです。
年齢も実は、成人の年に届いていません。
ですので、過分の評価かと、」
カーテン(ミース)は、ポテトの勧誘をキッパリと断った。
「ほぉー!、
若いなぁ〜、と、感じていましたが、
そこまでだったとは、・・・
なら、尚更ですねぇー
我々が、保護しますよ〜」
それでもポテトは食い下がる。
{あ、これまずい?
もしかして、逃す気無い感じ?}
ミースは、引き続きポテトの真意を読み取ろうとしながら、この状況から逃れる言い訳を考える。
そして頭を回転させながら、口を開く。
「いえいえ〜、
それには及びません。
私は今、あるお優しい貴族の家で、養われています。
ですので、大丈夫です。」
そう言いながら、彼女は、会議室の出口に向けて、さらに1歩下がった。
「騙されてはいけませんよー、
"黒は光の中には存在出来ない"。
貴女はここにいるべきなのです。」
ポテトは、彼女が不幸になる事を断言し、
蒸した芋を食べ切り、立ち上がる。
「決め付けですね。
私を泳がせていた方が、そちらのメリットになると思いませんか?」
さらに1歩下がり、ミースは提案を続けた。
「あらぁー?、
じゃあ、貴女の"正体"を教えて頂けないかしら?
正確にメリットを測る為にねー?」
ポテトは、引かない。
そして等々、ミースの"正体"について追及せれた。
{とうとう、そこに突っ込んで来たわね。}
「“敵を騙すなら、まず味方から“という言葉を知っていますか?」
カーテン(ミース)は密かに、自分の影へ魔法を込め始める。
「それ、関係あるかしらぁー?
貴女の為にも、無理矢理にでも入って貰うわ!」
ポテトは、先に全身から、黒いモヤを吹き出す。
{やっぱり、最後は実力行使ね!}
「無理矢理なんて、
情報の恩を仇で返すつもりですか!」
ミースも負けじと、影と全身から黒いモヤを吹き出した。
「貴女の為と言っているでしょぉぉ!」
ポテトは、そう言い放ち、黒いモヤをミースへ殺到させる。
「だから!それが仇だと言っているの!」
ミースもそれに応戦する様に、黒いモヤをポテトへ殺到させた。
そして、それぞれの黒いモヤは激突し、会議室内を二分させ、せめぎ合う。
「お二人とも、どうかお辞め下さい!」
「黒同士、やり合う必要は、無いはずです!」
会議室内の入り口で待機していた“カズララ・ラズベリー“と“ラズド・ブラウン“は、突然の衝突に、止めることが出来ず。
どうすれば良いのかと、立ち尽くす。
「その若さでぇー、
私の魔法と拮抗するとはぁ、
期待以上ですよぉー!
やはり4大黒元の第4席に相応しいわー!」
ポテトは絶賛する。
「はあ!?、
どう考えても、4大黒元の第1席こそ相応しいでしょ!」
ミースは彼女の絶賛を、先程と逆の訂正をし、黒のモヤの魔法の出力を上げる。
「え、え、さらに強く出来るのぉ?
え、ちょっ、本当に何者なのよぉ!」
ポテトは、黒のモヤの魔法が押され始め、拮抗が崩れ初めた事に焦る。
「魔法の"天才"である私と、多少は、張り合えたのです。
気を落とす事はありませんよ!
相手が悪かった、のだと、」
ミースは、さらに魔法の出力を上げ、
早々に、締めへ入る。
{長旅で疲れてるのは、本当なのよ!
さっさと終わらせて、早くお爺様の家で休ませて貰うわ!}
「屈辱よぉぉおー!
この私が魔法戦で負けるなんてぇ!、
子供相手に"改名"を使わないと行けないなんてぇぇ!」
ポテトは、押さえ込まれるのを必死に耐えながら、そう嘆く。
{でた!、"改名"!
聞いても誰も教えてくれないやつ!
ここは、逃げるが先決ね!}
ミースは、ポテトの"改名"を警戒する。
“改名“:“ジーン・バタフライ“
ポテトの体を厚い黒のモヤが覆う。
ミースは、それに攻撃する事も出来たのだが、
踵を返し、会議室から脱出しようとする。
「カーテン様!」
カズララは、そんなカーテン(ミース)を止めようと立ち塞がるが、
「・・・ッ!」
ラズドが、カズララを押しのける。
「カーテン様、最後まで付き合えず申し訳ありません。
行って下さい!」
続けてラズドは、カーテン(ミース)へそう言い放つ。
「良い仕事よ!」
ミースはラズドへ短く礼を言い、その場を後にした。
ミースが会議室を後にした後、組み合うカズララ、ラズドと黒いモヤの塊と化したポテトだけが残る。
「ラズド!ここはポテト様に従うべきだ!」
カズララは、押さえ付けられながらも、そう講義した。
「カズララこそ!
彼女はまだ子供だ!巻き込むべきじゃない!」
ラズドは、そう反論を返す。
その時、ポテトが再び動き出す。
「あぁ、お腹が空くぅ、
ラズドぉ〜?
貴方、これはどう言うつもりぃ〜?」
「!、」
カズララを押さえるラズドへ、巨大な"何か"が影を落とす。
「あ〜〜んな、美味しそうな人間、
4大黒元以外で初めて見たわ〜。
ああ、食べたいぃ
食べたい食べたい食べたい、食べたいぃぃい!!」
「ポテト・・・様?、」
ラズドは、影を落とす"何か"の様子が変化し、
疑問と同時に言い表わせない恐怖を感じた。
「ピョウッ!!」
そして"何か"から針の様な物が伸び、ラズドの背中へ突き刺さる。
「あがっ!!、
あああああ!!」
背中に鋭い物が突き刺さる痛みと、突き刺さった針から内臓を吸われる痛みに苛まれ、彼は苦しみ悶える。
チュー、チュー、チュー、チュー、チュー
「ラズド!
ポ、ポテト様、どうかお辞め下さい!」
ラズドの押さえから外れた、カズララは、ポテト?へ、その特殊な食事を取り止める様に進言したが、
チュー、チュー、チュー、チュー、チュー
ポテト?の特殊な食事は、終わる様子が無かった。
「ああ!あああああああああああ!!」
ラズドの苦痛の叫びは続く。
「あ、ああ、」
カズララは、そんな苦しむラズドを目の前に、どうする事も出来なかった。
※備考
ブラック・ワスプの拠点について、
本文に登場する重要拠点は、
魔法都市"スリネトス"に近い拠点だ。
さらに、スリネトス内部にも小さい拠点がいくつもある。
彼等がここまで肥大化出来た理由は、
"スリネトス"という町の、環境の影響だ。
そしてそれは、やはり、白聖教、レッド公爵、ブルー公爵、魔法専門学校"ルーデラ"の 4つの派閥による水面下での争いが大きい原因と言えた。
その争いは、様々な所に付け入る隙を与え、
結果、多くのブラック・ワスプの内通者を忍ばせる事になった。
しかし当然、内通者がバレる事もあり、スリネトス内部の小さい拠点達が大打撃を受ける事もある。
まぁ、根本が絶たれていないので、すぐに再建されて来たのだが・・・




