第13話 悪役令嬢と魔法の町。
主人公、"ミース・アイボリー"一向の旅は、アイボリー渓谷鉱山を出発し、ちょうど1ヶ月が経過する。
それまでの彼らの旅は、順調そのもので、
今の所、計画通りに王都へ進んでいるのであった。
そして、彼らは、山と一体化した巨大な町に到着する。
「うわー、山火事ねー」
ミースのその巨大な町に対する第一印象はそれだ。
その町は、山と共に大きく9メートル程の炎の壁に包まれ、山火事を連想させられた。
魔法的な物であるのは、明白なのだが、かなりの迫力を誇る。
その景色を眺めながら炎に包まれた門の前までたどり着く。
そして、門番の確認を終えてから、町の中に入る。
白聖教の“カルト・コバルトグリーン“支部長がいる為、そこら辺の処理はスムーズだ。
しかし、門を越える際、他の町と違う点として、手の平に収まる“小さいカード“を受け取ったり、興味深い説明を受けるのだが、それはまた後で説明しよう。
町の中は、外見と同じ様に、至る所に炎が灯してあり、果ては炎の噴水の様な物まであった。
そして特筆すべき所は、町全体の気温である。
ミース達が、王都に旅に出たのは、夏季の終わり頃であり、今までの道中のほとんどは、過ごしやすい気候であったのだが、
しかし最近は、冬季か近づいて来ている為、寒い気候となっており、活動のし辛い環境となっていた。
何を説明したいかと言うと、この町全体は温く、とても過ごしやすい環境となっていたのである。
これも魔法的な物が関わっている事が分かる。
魔法的な物の関わりとして、もう1つ、
ミースは、町に入った瞬間、違和感を覚えた。
まるで、誰かの領域に入ったかのような、
例を上げると、誰かの敷地、または寝室に足を踏み入れた感覚である。
これも魔法的な物で、ミースの予想では千里眼的な物で、監視カメラの役割を果たしていると推測した。
そしてそれらから、魔法の技術がしっかり発展し、しっかりと魔法の技術が利用されていることを体験し、ミースは感動を覚える。
話は少し逸れるが、
ミースは今までのこの世界の魔法は、どこか夢の無い物だと感じていた。
彼女の連想する魔法とは、杖や呪文で、簡単に物や概念を操ったり、物を別のなにかに変えたりと、軽い代償で様々な事が出来ることなのだが、
この世界の魔法はちょっと違う。
手を触れずに物を動かす。
得意な色の魔法によって異なる自然現象を操る。
それだけである。(固有能力“改名“を例外としている。)
せっかくの剣と魔法の世界だと言うのに、物足りないと感じていた。
しかしミースは、この炎の町に入り、考えを改めることができ、感動したのだ。
町の話しに戻る。
ミースの推測と門番の説明から、
この町全体にかかっている巨大な魔法は、3つの役割を持っている。
①防衛・・・見た通り、9メートルの炎の壁が外界を遮断する。
②空調・・・町の中の気温を、過ごしやすい温度に調節する。
③監視・・・町中の犯罪行為を取締まる。
これらの魔法を使用するにあたって、
当然、大きな代償が必要である。
例え天才のミースと言えど、その全ての役割を果たすのは、骨が折れる。
そんな大きな代償をどう払っているのか?
先程、町に入る際に他の町と違う点として、“小さいカード“を受け取ったが、それがその代償である。
このカードは人間から、日頃排出される余分な魔法の力を、吸収する仕組みがあり、
多少の不快感を所有者に与えるが、
それで集められた魔法の力が、前述の代償となっているのだ。
ドラゴン◯ールの元気◯ システムである。
それらが、この町特有の仕組み、"魔法税"であった。
{いや、実にファンタジー、良いね、}
すっかり、町の説明が長くなってしまったが、
ここからミース達の動向に戻る。
ミース達一向は、この山と一体化した巨大な町、魔法都市"スリネトス"に入り、まず白聖教の支部を訪れた。
カルトの挨拶の為だ。
通常の町ならば、このまま白聖教の客室に泊まるのだが、
この町は、"レッド侯爵"と"ブルー侯爵"の共同領地となっており、"レッド侯爵"はミースの母親の実家の為、そこで最高級の宿に泊まる予定である。
しかし、ミースは白聖教にて、カルトの会話を盗み聞きをしていた所、ある重要な情報を耳にしてしまう。
この町の白聖教に着いてすぐに、カルトへ何か"話し"がある様で、すぐに別れる事となった。
客室に通されたミースは、暇だった事もあり、客室から抜け出し、カルトの後を追う。
純白の聖女であるミースは、警戒されておらず、
客室を抜け出し、白聖教内を探索する程度、容易な事であった。
念の為、サヤにはお手洗いや、他の方に案内をお願いして、この白聖教支部を見て回っているなど、
客室に訪れた人間に伝え、抜け出したミースの偽装工作を出来るだけして貰っている。
また、前述の町の説明にあった、監視の魔法に引っかかるのでは無いか?と、疑問を持つかと思うが、
門番の説明から個人などの敷地内までは、監視していない為、
ミースの行動を詳細に把握される心配は無い。
そして、物の影から影へ身を隠しながら移動し、奇跡的に会議室へ入るカルトをすぐに見つける事ができ、"話し"も間に合う事が出来た。
会議室にて、
カルトと、ここの支部長や幹部のような数人が話し合っている。
ミースは、その会議室の隣の使われているいない部屋へ侵入、
黒い影を床裏を通して伸ばし、会議室の影と接続。
会話を聞く。
どんな人物が居るかまでは分からないが、"話し"をクリアに聞く事が出来た。
ミース達と別れた後、"カルト"は、現在進行形で会議が行われている会議室に案内された。
「失礼します。アイボリー領、ボワーメイト担当、"カルト・コバルトグリーン"合流します。」
その会議室内は長方形の長机を中心に、代表者が正装の修道服を着て、取り囲み、張り詰めた空気が流れている。
「おお!、来たな!」
長机の上座には、カルトよりも大柄な男性、
この地、魔法都市"スリネトス"担当、"バラント・レグホーン"支部長が立ち上がり、カルトを歓迎する。
そのバラントの側で控える細身の女性、
同じく魔法都市"スリネトス"担当、“ネイト・イエロー”支部長補佐は、バラントの歓迎に合わせて小さく会釈をした。
また、長机を囲っていた、者達も続々と反応が出る。
「おお!カルト!お久しぶりです!」
カルトと同じくまだ若く、高身長の男性、
北東ブルー領地、マルトス担当"クローム・カーマイン"支部長。
「お疲れ様です。」
大人しい印象を受ける短髪の女性、
東グリーン領地、フォーズン担当"リリアン・アプリコット"第1支部長補佐。
「まさか間に合うとは思いもしなかったわ。
戦力は、多い事に越した事は無いわね。」
長髪で鋭い目から気の強い印象を受ける女性、
中央王都、ホワイトダム担当"ノビス・ホリゾンブルー"第1教祖補佐。
「バラントさん、皆さん、お久しぶりです。」
カルトは、会議室内を見回し、挨拶を返した。
「ああ、2年ぶりか、支部長姿が板に着いたものだ。」
バラントは、席に再び深く座り、目線で、カルトに空いている席へ、着席を促す。
「いえいえ、まだまだ、」
カルトは謙遜しながら、その空いている席へ着席する。
「何を言っているんですか!、
同期で1番出世しているのは、私とあなたぐらいですよ。
と言っても、今回の件で、私はどうなるかわかりませんが、」
クロームは、その謙遜を否定し、意味深な言葉を放つ。
「それは、どう言う意味で?」
カイトは、その意味深な言葉の真意を聞く。
「ああ、知らなかったのですね。」
クロームは、上座に座る“バラント・レグホーン“に目配せした。
バラントは静かに頷き、話を続ける許可を出す。
そいてクロームは話を続けた。
「私が担当するマルトスでも、聖女が生まれた事は知っているでしょう?」
「ああ、」
カルトは、その確認に簡単に答える。
「その聖女を“ブラック・ワスプ“に攫われてしまいました。」
「!!ッ、」
カルトは、驚く。
聖女、もとい純白の髪と魔法を持つ人間が、
純白を憎む集団の手の内にあるのだ。
とても楽観視出来る状況ではない。
もし、命があったとしても、純白は確実に濁る結果となるだろう。
「それに比べてあなたは、無事に聖女をここまで護衛している。この差は、歴然でしょう。」
クロームは、その表情に陰を落とす。
「それは、・・・アイボリー家の支援もあったからで、」
カルトは、それだけ言うと口を紡ぐ。
"パン!"
上座の"バラント・レグホーン"は手を叩き、注目を集める。
「過ぎた事は、今は良い、
この会議での重点は、聖女捜索の副産物で見つけた“ブラック・ワスプ”の重要拠点にある。」
バラントは、話の流れを修正した。
「え、重要拠点を見つけたんですか?」
カルトは、話の急な転換に呆然とする。
「ああ、クローム君もただやられた訳では無いよ。
明日の早朝、この魔法都市スリネトスの外、
南部の山にある"ブラック・ワスプ"の拠点へ攻める。
今はその作戦の最終確認だ。」
バラントは、現状をカルトへ説明した。
「・・・なるほど、理解しました。
もちろん協力させて頂きます。」
カルトは、自分がこの会議室に呼ばれた理由を理解し、協力する事を宣言する。
「当然ね、」
その返事に"ノビス・ホリゾンブルー"第1教祖補佐が頷く。
「心強いです。」
"リリアン・アプリコット"は、安心し、小さく胸を撫で下ろす。
「では、改めて、各地で好き勝手やってくれた分、ここでやり返そうでは無いか、」
バラントは、全体を引き締め直す。
「「はい!」」
カルトとクロームが、
「ええ、」
ノビスが、
「は、はい!」
リリアンが、
それぞれ賛同した。
そして、彼らは、カルトを新たに加え、
明日の作戦の最終確認が行われるのであった。
ミースの視点に戻る。
「!ッ、」
ミースは、"ブラック・ワスプの重要拠点“と言う言葉を聞き、驚く。
そして、つい、ため息が溢れる。
「はぁーーーーー、」
{あいつら、なに簡単に見つかってんのよ。}
彼らの会話の内容は、"ブラック・ワスプ"の重要拠点を突き止め、明日の朝に大規模な異端審問を開始する、と言う物である。
また、彼女が敵視している別の聖女が、ブラック・ワスプに攫われた事も把握出来た。
しかし、そのライバルが減った事よりも、ブラック・ワスプの崩壊による問題で頭を抱える。
現状、見捨てた方が良いのだが、せっかくミースと同じく現政に不満を持つ物達が集まっているのだ。
崩壊されたら、今後、ミースが王になるにあたり利用出来なくなってしまう。
その為にミースは、なんとか"ブラック・ワスプ"とコンタクトを取り、逃す方法を考える。
ミースは、明日の異端審問の最終確認の盗み聴きを途中で辞め、物的証拠となる文書を探す為に、その使われていない部屋を後にした。
そして、しらみ潰しに部屋を見て周る。
しかし、当然、その中で白聖教の人間と数人出会う。
「ご苦労様です!」
ミースは、元気良く挨拶する。
「お、・・・おお、」
通りすがりの白聖教の男性は、
突然、純白の髪を持つ少女に会い、動揺する。
「では、失礼、・・・」
ミースは、優雅にこの場を離れようとする。
「・・・お待ち下さい。
どこに向かうつもりですか?」
男性は、その少女を言い止める。
数人は堂々としていれば、なんとかなったが、
今回はどうにもならなかった様だ。
「バレちゃった⭐︎」
ミースは、舌を出し、あざとく可愛い仕草で自白し、逃げる。
「・・・ちょっ、
こら!、待ちなさい!」
ミースの可愛さに、一瞬、行動を遅らせ、逃げ回る時間を少しでも稼ぐも、
結局、物的証拠となる物は、見つけられず、捕まってしまう。
当然、勝手に歩き回った事は、叱られたが、
ミースは8歳の可愛い少女、しかも聖女である。
上目遣いで一言謝れば、それでお終いだ。
そして会議を終えたカルトと客室のサヤと合流し、白聖教を離れてしまう。
{仕方がない、後回しね。}
ミースは、一旦、"ブラック・ワスプ"の問題を横に置き、レッド侯爵家へ向かうのであった。
※備考
魔法都市"スリネトス"の夏季について、
この都市は、"魔法大国エウレメント"の中で北北西に位置し、
南部と比べると1年を通して比較的に涼しい気候となっている。
しかし、1ヶ月弱程の日数の夏季が存在した。
その時も炎の壁が、都市の周辺を取り囲む訳も無く、
代わりに氷の壁が取り囲み、都市内部も、冷水が流れ、
過ごしやすい気温が保たれている。
その為のレッドとブルー侯爵の共同領地なのだ。
余談、
気温的には過ごしやすいこの地だが、
・レッド侯爵
・ブルー侯爵
・白聖教
・魔法専門学校の研究員
の4つの派閥に別れており、
表面上平穏だが、内情は複雑である。




