第11話 アイボリー渓谷鉱山4
「なっ!、」
「えっ!、」
6車線の線路の内、4車線も独占した、バカでかい、戦車のような装甲トロッコが、ミースとサヤの乗るトロッコの後ろから迫って来た。
『まったく!!どいつもこいつも役に立たない!!
ガキ共!!もう逃げ場は無いぞ!!』
それに乗るグレーター・グレーが拡声器のような物を通して、苛立ちげに叫んだ。
「ちっ、しつこい!」
{しかも早っ!、引き殺す気!}
流石のミースも、魔法を使いっぱなしな上、連戦に倦怠感を覚える。
「ミース様!私に何か出来ませんか!」
苦しそうなミースを見て、居ても立っても居られないサヤは、自分の出来る事を探す。
「サヤも出来るだけトロッコを引っ張って!」
「わかりました!」
無いよりはマシと、ミースはそう指示する。
『何をしようと無駄だ!
この!!渓谷大切断作業丸に!!
人間がぁ!勝てる訳ねぇだろうが!!!』
グレーターのその宣言の元、バカでかい装甲トロッコの荷台が変形、展開。
それは、人間の両腕のようなバカでかいアームとなった。
「げぇー!、なにそれー!」
ミースは、アニメなどでしか見た事が無いそんなギミックに心底驚く。
『言っただろう!無駄なんだよぉぉおお!!』
右腕による掴み掛かり、
「くっ!、」
純白の白魔法を伸ばし、レーンチェンジ。
1番左のレーンまで移動し、回避する。
更に、また坑道内へ逃げようとしたが、
{レーンチェンジが壊されている!}
坑道へ入る為の全てのレーンチェンジが、
切り替え出来ない様、固定されていたのだ。
『無駄ぁ!無駄ぁぁぁああ!』
今度は、左腕が掴み掛かって来た。
逃げきれない。
「ミース様!」
「う、ん!どりゃああああ!!」
『なにっ!?』
ミースは純白の光を強め、トロッコを持ち上げ、高くジャンプさせる。
そうして左腕の掴み攻撃を避けた。
『だが!、まだまだ先は長いぞ!
この6車線をどこまで逃げ切れるかなぁ!!』
「大口叩くのは、捕まえてからにしたら!」
再びレールに戻り、グレーターを煽る。
『なら!、そうさせて貰おうかぁぁぁああ!!』
今度は、本気になったのか、
グレー色に発光し、更に加速。
じわじわと左右の両腕で掴み掛かってきた。
「ぐぅ!、」
「はあ!、」
ミースとサヤは走りに集中するが、振り切れず。
とうとう捕まれそうになった。
{どうする、どうする、どうする!
ああ、もう!頭回らない!
奴の後ろに回るか?
いや、腕が邪魔だ!
黒を本気で使う?
今後の事を考えて論外!
トロッコを捨てる?
悪く無いけど、その次は!}
ミースは白の魔法と同時に頭も酷使していると、
前方に防衛用のトロッコが、走っているのを見た。
「もう、勘弁して、」
そのトロッコの投石機から岩が次々、射出され、ミースとサヤの乗るトロッコへ、山なりにみるみる近づいて来た。
{またかよぉぉぉおお!!}
「?、」
しかしその岩々は、途中でアイボリー色の白と黒に発光して軌道を変え、ひとまとめになる。
そして、馬鹿でかい装甲トロッコへ吸い込まれていった。
『な、なんだぁあ!?
おあああああああああああああああ!!』
"バゴォォォォォォォォォォオオン!!"
岩々が装甲トロッコに突き刺さり、
その衝撃と重さに耐え切れず、
そこらへんの6車線一帯が、崩落。
みんな仲良く奈落へ落ちて行った。
『私のぉぉお!!
週休4日制の夢がああああぁぁぁぁぁぁ!!!!』
グレーターの悲鳴が、拡声器を通して、虚しく渓谷中へ響き渡り、奈落の暗闇に呑まれていった。
その崩落に、ミースとサヤも例外なく巻き込まれる。
{冗談じゃないわよ!}
「サヤ!」
「ミース様!」
彼女達は抱き合う。
{サヤを抱えて行けるか?、
いや、行くしかない!}
ミースは、自分1人なら魔法で空を安定して飛べる自信があったが、サヤを抱えて飛ぶ事には、少し自信がなかった。
が、その前にすごいスピードで2人とも抱えられ、空を飛んだ。
「「!?ッ、」」
「よく逃げ延びた。ミース、」
彼女達を抱え、助け出したのは、白黒半々の色で、カラスの特徴を持った人間、
固有能力を使用したアルマであった。
「お、お父様!?そのお姿は!」
ミースは驚く。
彼女の知っている、ロマンスグレーの素敵な殿方から、翼まで生やした野生的な姿になっていれば無理もなかった。
「これか?
これは、私の本気だ。
あまり出したく無いんだがな。」
手の内を余り晒したくないアルマは、簡単にそう説明した。
{厨二、・・・おっと失礼、}
「とても助かりました!ありがとうございます!」
アルマとミースは、軽く会話をし、崩落から逃れた防衛用のトロッコへ降り立った。
「はぁ、疲れましたわー、」
「そうですね。ミース様、」
ミースとサヤは、防衛用トロッコの最後尾の荷台の上に降ろされ、今までの緊張から解放された影響か、そのまま座り込んだ。
「おお!、良くご無事で、ミース様!」
カルトが、出迎えてくれた。
「カルト支部長も、無事で何よりです。」
ミースは、出迎えにそう返した。
ちなみにこのトロッコは、降参した坑夫達が動かしている。
アルマはその姿から人型に戻り、彼女たちと同じ場所へ降り立った。
「一度、町へ戻るとしよう、グレーター・グレーのやらかしの後始末を付けなくては、」
アルマは、1段落着いたと、今後の方針を話し始めた。
「えぇ、私もこの件に関して、ここの白聖教に報告しなければ、」
カルトもその方針に賛同した。
「分かりました、」
ミースも賛同し、この旅の目的である、"王との謁見"まで、
まだ余裕がある事を言及しようとした、
その時、
それは、現れた。
いったいどうやって、いつからそこに居たのかは、誰にもわからなかった。
しかし、それは確かに投石機の一本の柱の上に立っている。
1番先にそれに気付いたのは、カルトだった、
「!ッ、"フル・アーマー"!!」
反射的に、彼固有の魔法の鎧を着用。
"ガボォンッ!!"
しかし、着用時の一瞬の隙に、それはカルトへ肉薄し、
顔面へ右ストレートを突き刺した。
その移動と右ストレートの衝撃により、
トロッコと、ここら一帯の空気が揺れ、
踏ん張る事が出来なかったカルトは、ぶっ飛び、渓谷の壁を凹ませた。
「最っ高!だぜぇぇぇえ!
なぁ!、テンション上がるよなぁぁぁああ!!」
それは、ムキムキのゴキブリだった。
2mを超え、黒い光沢を放つ人型の筋肉ダルマ、
しかし、所々は、虫の様な見た目となっており、
頭にはゴキブリの様な顎、目、長い触角が生えていた。
また、背中に楕円形に折り畳まれた羽があり、これが1番ゴキブリらしさを出していた。
ミースは、前世の記憶を思い出して以降、初めて背筋が凍りついた。
いや、思い出したからこそ、凍りついた。
{ひっ、ゴキブリ!}
「貴様は!"キャップ・ブラック"!」
アルマは、その正体が奈落へ落とした筈の、
"ブラック・ワスプ" 、 "4大黒原" の第4席 "キャップ・ブラック" であることに気付いた。
さらに、カルトと分断された事に焦る。
「"クロウ"!!」
アルマは翼を生やし、上空へ舞い上がる。
また、魔法のカラスも展開した。
「お前には!感謝してるぜぇぇ!
突き落としてくれたおかげで、
俺も"飛べる"って事に気付けたからよぉぉお!!」
"改名" : "コックローチ"
トロッコが傾く程の衝撃を発生させ、跳躍。
そして翼が展開し、そのままの速度で空を飛ぶ。
「早すぎるっ!、」
アルマは魔法のカラスを放つが、
それらを物ともせずに、一直線にアルマへ迫る。
アルマは逃げきれず、
お返しとばかりに、キャップの足が振り上げられ、踵落としがアルマを襲う。
「テンション上がるだろぉぉお!!」
「ぐううっ!!、」
アルマは、咄嗟に体を包む形で翼を畳み、盾にする。
が、空中で受けきれず、
元いたトロッコへ、叩き付けられた。
「かはっ!、」
アルマは、打ち所が悪く、そのまま気を失ってしまう。
「なんだぁ?もうお終いかぁ?
やっぱりザコじゃねぇか。」
キャップは、そんなアルマの前に降り立ち、そう言い捨てる。
{・・・}
勝ち誇っているそんなキャップの背中へ、サヤが忍び寄った。
どこで拾ったのか、杭を持ち、
突き刺そうとする。
「おっと、バレバレだぜぇー、ガキぃ」
しかし、バレており、
背後へ迫っていたサヤは、ノールックで頭を鷲掴みにされる。
「うあああッ!、」
「今の俺に死角はねぇぜ。
その気になれば、さっきの鳥の魔法も、全て避けられる程になぁ。」
サヤを更に持ち上げ、自分の能力を自慢する。
「痛い痛い痛い!離じてぇぇえ!!」
サヤは、頭を鷲掴みにされ、持ち上げられる痛みと、自分の情けなさに涙が溢れた。
「はぁ、これだからガキは、テンション下がるわー、 」
キャップは、その反応にがっかりし、サヤをその辺に捨てる。
「ぎゃっ、」
サヤは、その勢いで投石機の柱にぶつかり、戦闘不能となった。
残るは、ミース1人である。
「すごい!、すごい力だわ!!」
賞賛の声が上がった。
「んー?」
キャップは、先程から自分を観察していた、ミースに注目する。
賞賛したのは、敵である筈の彼女である為だ。
「私、お強い殿方がタイプなんです!
是非、私とお付き合いして下さい!」
ミースは頬を赤らめ、唐突にキャップへ好意がある事を伝える。
「見る目があるじゃねぇか!テンション上がるぜー!」
キャップは、再びノリノリになるが、
脳内は冷静である。
{お前の考えは、手に取る様にわかるぜぇー、
この無敵状態を解除をして不意打ちしたいんだよなぁ!
わかりやすいなぁ!!}
「それならば、お付き合いして頂けると!」
ノリノリのキャップの反応を肯定と捉えたミースは、確認を取る。
「いいぜぇ〜、キスをしてくれたらなぁ〜」
キャップは、嫌がるだろう条件を出した。
「っ、」
ミースは一瞬固まる。
{当たりぃー}
キャップはその反応を図星と捉えた。
「どうしたぁ?出来ないのかぁ?
本当は、お付き合いとか嘘なのかーい?」
キャップは、いやいやながらも、好意がある様に演技する、彼女を面白がる。
「嬉しすぎて、少し受け入れるのに時間がかかっただけです。
もちろん、喜んでやらせて頂きますよ。」
「ヘェ〜、じゃあさっそくやってくれよ。」
キャップはしゃがみ、手招きして、頬を指差した。
「はい!」
ミースは嬉々としてキャップに近づく。
{はは!、頑張ってる頑張ってる。
キスをした瞬間、俺もキスを仕返してやるよぉお!
一生残るくらいに、そのキレイな顔になぁぁぁああ!!
テンション上がるぜぇぇぇええ!!}
キャップは、舌舐めずりをする様に、顎の牙を ガチガチ と、鳴らした。
キャップとミースの顔は、とうとう肉薄し、キスの瞬間が訪れる。
そして、
「えい、」
""ブチッ!""
それは、キスと言うよりも、なにかが千切れる音だった。
ミースは、キスをせず、
キャップの頭に生えていた"触角"2本を、刹那の身体強化の元、
もぎ取ったのだ。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
渓谷全体が揺れるかの様に、苦痛の叫びが上がる。
キャップは、見知らぬ激痛に支配された。
それに加え、周囲の状況がわからなくなる。
{弱点をわざわざ曝け出すなんて、バカな男、}
ミースは、キャップへ取り入ろうとした訳では無かった。
初めから彼女の目的は、その触角であり、狙い以上の成果が上がる。
そして苦しみ続けるキャップを前に、勝ち誇った。
「あははは!、無様ね!
私があなたの事が好きになるとでも!
これで"見た目"こそが最強と証明されたわねぇぇえ!!」
ミースは純白の魔法を操り、投石機の替えのワイヤーでキャップを縛る。
さらに、そのワイヤーをトロッコの最後尾の連結部に繋げた。
そして、
「でもね、この私で遊んだ罪は、この程度じゃすまないわ。」
「ああああああ!!貴様ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
準備を終えると魔法の衝撃波を放ち、激痛にようやく慣れてきたキャップを線路へ突き落とした。
「トロッコ引きずり回しの刑よぉぉぉお!!」
「あぁあぁあぁあああ!ぐあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあああ!」
キャップは、ミースの宣言通り、トロッコで線路の上を引きづり回される。
「あははははは!!」
ミースは、線路の上を、まるで打ち上げられた魚のように引きづられるキャップに、吹き出す。
「こんなあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあああ!あぁあぁあぁあああ!」
黒光沢の放っていた肌と甲殻は、ボコボコに歪み、汚れて行き、ついには羽も欠損して行く。
「あっ、ははははは!!」
ミースは、笑い続ける。
さっきまで、自信満々の表情をして優位に立っていた男が、ボロボロになり、情け無く叫んでいる姿に、笑い続ける。
「あぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあああ!あぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあああ!ああああ!!、」
とうとう、キャップ自慢の固有能力が解除され、黒いモヤだけが残り、生身がボロボロになって行った。
そこら辺でようやく笑いが引いたミースは、一言呟いた。
「あははははー!、あー、スッキリしたわ。」
※備考
主人公 (ミース・アイボリー)の言動について、
彼女は生粋のナルシストです。
本人にはその自覚が無く、認めませんが、周囲と見比べると、
頭2、3個以上にナルシスト力が突き出ています。
また、前世の尾花卯花の状態では、ブサイクな顔だったお陰で、抑えられていたが、
彼女の欲していた全てを持つ、ミース・アイボリーの状態となってから、ナルシスト力が暴走し、自分は何をしても良いんだと考えています。
更に、自分が失敗することを微塵も恐れておらず、失敗しても、最終的に"見た目"でなんとかなると考えている為、無敵の精神性となっています。
鋼のメンタル(前世)→ダイヤモンドのメンタル(今世)
余談、
ミース・アイボリーは、SかMかで言ったら、Sです。
本人に聞くと何故か堂々とMと答えますが、Sです。




