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第10話 アイボリー渓谷鉱山3


 アイボリー渓谷鉱山、その巨大な渓谷の中心を、6車線の巨大な線路が一直線に走っていた。


 そして、その線路の上で、()り傷や打撲(ダボク)のアザだらけになって、打ちひしがれる老人がいた。


 「クソが!クソが!クソったれが!

  あのクソメイドが!

  この私が、せっかく"ブラック・ワスプ"の魔の手から助けようとしたのに!

  なんて仕打ちだ!


  "ブラック・ワスプ"の連中もそうだ!

  私が"合図を出すまで手を出すな" と、言ったのに、仕掛けて来やがって!

  私も殺す気か!!

  事故死の準備が無駄になったじゃないか!

  このクソったれがぁぁぁぁあああ!!」

 

 なんとか魔法で衝撃などを吸収し、体は無事だったが、

 最悪なこの状況、全てに向けて文句(モンク)を叫ぶ。

 

 そこへ正面から、後ろ向きのディーゼル車の様な先頭車が、後ろ向きで戻って来ていた。


 「グレーター親方!ご無事でしたか!」

 

 「ガキどもは!どこだ!」


 「取り逃しました、」

 

 「はぁ!、とことん悪くなるな!

  近くの監督塔へ行くぞ!」


 「すいません!

  わかりました!」


 グレーター・グレーは、付き人を連れ、

 この渓谷に一定間隔で建てられている監督塔と呼ばれたその場所へ移動した。



 監督塔とは、このアイボリー渓谷鉱山で働く坑夫達を文字通り監督する塔である。

 その監督塔から、何千本もの管が伸び、鉱山の現場の事務所などに繋がっていた。

 つまり、鉱山各地と通信出来る施設なのだ。



 そしてグレーターは、その通信網を利用し、ミース達を捕まえるつもりなのである。

 

 「第144坑道 360号線 の入り口から入って行ったんだろ、

  そこからさらに分岐(ブンキ)して進んでも、

  355、361、387号線って、所か、」


 グレーターは、付き人から情報を聞き、ミース達の居場所を大体の予想を付けた。

 そして、彼は一本の管を手に取り、指示を飛ばす。



 『あー、あー、


  第144坑道担当坑夫に告げる!

  例の子供を取り逃した!

  360号線付近にいる筈だ!


  今すぐ作業を止め、捜索(ソウサク)に当たれ!


  繰り返す!


  第144坑道担当坑夫は!

  360号線付近にいる筈の子供の捜索に当たれ!


  第144坑道担当坑夫は!

  360号線付近にいる筈の子供の捜索に当たれ!


  手段や生死は問わない!が!

  生きて捕まえた者は金一封を与える!

  以上!』

 

 この指示は、鉱山中に響き渡り、

 鉱山内にいる全ての人間が認識した。

 

 そしてその指示を出し終え、数分後。

 ある連絡がグレーターの元へ届く。

 

 「グレーター親方!」


 「どうした?もう捕まえたのか?」



 「いえ、違います!

  第96坑道 253号線にて目撃情報が出て来ました!」


 

 「バカな、早すぎる。」

 グレーターどころか、それを聞いた者達は、驚愕(キョウガク)する。

 

 その距離は、この地を知り尽くした坑夫が、全速力で走り抜けて、やっと到達出来るか、どうかの距離であった為だ。


 そして、グレーターの脳内にある少女を思いださせた。

 「あのクソメイドが、どこまでも私をこけにしてくれる。」


 グレーターは、(クダン)のメイドの髪に黒色が混じってある事を思い出す。

 もし、黒が使えるならば、暗闇を掌握(ショウアク)し、スピードが出せる。


 そして何よりも、彼を線路へ突き落とした張本人だ。

 突拍子(トッピョウシ)もないそれが出来ても、何も不思議に感じなかった。


 「全ての坑夫に先の事を伝えろ!!

  我々の鉱山で好き勝手させるな!!

  総力戦だぁぁぁああ!!!」






 所変わり、

 第96坑道 253号線と呼ばれた場所にて、


 そこには、ミースとサヤの乗る客車のトロッコが、黒いモヤをまとい、かなりのスピードで走っていた。


 「わかる、わかる!全て、とは行かないけどわかる!」

 

 「流石です、ミース様。」


 ミースは黒髪となり、黒を広げていた。

 流石の才能の塊である、ミースであっても、

 アイボリー渓谷鉱山の全てを把握する事は出来ない。

 出来て、全体の1/3程度である。

 

 それでも充分であるのだが、

 ミースの心は、複雑だ。

 

 しかし、それはそれとして、

 今は、トロッコのジェットコースターを楽しんでいた。


 「サヤ!そろそろ荒れそうよ!」

 暗闇の先で、何かを認識しているミースは、サヤへ注意を掛ける。


 「これ以上にですか・・・」 

 暗闇をトロッコで爆走するのにも慣れて来たが、

 サヤは、げっそりとしていた。


 「安心なさい!私が付いているんだから!」


 「はい、ありがとうございます。」

 的を得ていないミースの励ましに、サヤはそう答えるしか無かった。

 

 「来た。」

 ミースは、純白の白髪に戻し、正面を(ニラ)む。

 同じ車線常に光が複数見える。

 このままだと何かと正面衝突するだろう。

 

 「ぶ、ぶつかります!」

 しかし、その光の招待を知っているミースは落ち着いている。

 

 「大丈夫、」

 {純白の魔法もわかってきたわ、}

 ミースは、左手に純白の魔法の塊を作り、それは、ある物を形作った。


 それは、光の弓であった。


 ミースはその弓を引き、窓を空け、正面の光を狙う。

 "バチバチ"っと、魔法が矢と(ツル)に集約され、物凄いエネルギーが(ホトバシ)る。

 {私、前世は弓道部だったのよね。}

 

 "ガッ!"

 魔法の矢が、放たれる。


 その弓はレーザーの様にぶっ飛び。

 光を放っていた物をいくつも貫いた。


 それらは形を保てず、分解、バランスを崩していくつも転倒する。

 そして、レールを遠隔の黒魔法で操作し、別の坑道へ入った。


 何が起きているのか分からないサヤは、別の坑道に移った事に一安心し、後方を眺める。


 しかし以前、複数の光が、追って来ていた。


 「トロッコより、スピードが出せるのね。」

 ミースは、ポツリと(ツブヤ)く。


 そして、それの姿がわかる程、近づかれた。



 それはバイクだった。


 線路を構成する、2本の鉄のレールの内、1本のレールを"ハ"の字の逆の様に2輪で挟み、前後で4輪となっていたが、

 その姿は、まさにバイクである。


 「なっ、なんなんだすか!あれ!」

 

 「鉱山内の移動用の乗り物なんでしょ。

  知らないけど、」

 ミースは、サヤの質問に答え、再び弓を作り出す。

 

 構造的に、レールの上でしか走れない事が丸わかりであり、先程も、大量の撃退に成功していた。


 これを繰り返せば、相手も諦めるだろうと言う考えからである。


 {馬鹿な奴らね。

  さっきのを見ても、まだ突っ込んで来るとは、}


 "ガッ!"

 魔法の矢が、再び放たれる。


 2射目も同様に、光を放っている物、

 つまり、バイクのライトへ向けて放たれた。


 「!っ、」


 しかし今度は、何台か、を貫いただけ、複数台に避けられてしまう。

 その避けたバイク達は、1本のレールを離れ、

 隣のもう1本のレールに飛び移ったり、

 地面や、勢いで壁まで走る者もいた。


 {いや、レール以外も走れるのね!}

 

 「やってくれるじゃねぇか!!

  嬢ちゃん達よ〜!!」

  先頭で、勢い任せに壁を走っていたやつが、

  レールに戻り、バカでかい声で叫んだ。


 「だが!、俺たち!

  トロッコレーサーを振り切れると思うなよ!!


  特にこの俺!

  洞穴(ホラアナ)(カミナリ)様より、前を走れると思うなよ!!」


 {トロッコレーサー?つまりトロッコレースが、あるって事?

  なにそれ、すごい見てみたい!

  まぁ、それは、それとして、・・・}


 「これならどう?」


 "ガッ!"

 3射目を引き、放つ。


 「3度目なんて誰が当たるか!!」


 しかしその矢は、分裂に分裂を繰り返し、横殴りの雨の様にトロッコレーサー達に襲いかかった。

 

 「面白い!!」

 

 「ちょっ、それ無理!」

 「うああああ!」


 トロッコレーサー達は、ろくに避けられず転倒したり、防御に入る。

 一転、先頭の洞穴(ホラアナ)(カミナリ)は、黄色に強く発光、加速し、壁、天井とそのまま一回転ししながら、矢を避ける。

 さらにその勢いのまま、ミースとサヤの乗るトロッコを抜き去った。


 「やるじゃない!」


 「鬼ごっこは終わりだ!嬢ちゃん達!」

 そう言いながら、ミースとサヤのトロッコの前に回った彼は、腰から短い棒を取り出した。

 その棒の先には、照明などに使われる魔結晶がつけられており、眩しい程、黄色に発光する。

 

 そして、その結晶付きの棒は、ミース達の乗るトロッコへ投げられた。


 {しまった、黒が、}

 「サヤ!伏せて!」

 「はい!」


 ミースは、魔法のガードが間に合わない事を悟り、

 サヤへ、伏せる様に叫ぶ。

 勘による行動だが、正解だった。


 その結晶は、爆発を生み、客車のトロッコの屋根を含めた上部を吹き飛ばしたのだ。


 「さぁ!もう一発受けたくなきゃ!

  トロッコを止めな!!」


 相手に殺す気がなかったおかげで、

 2人は無事だったが、

 主導権を相手に握られた。


 {と、思っていたの?

  最初から最後まで、

  主導権は私の手の平の上にしか無いのよ!}


 「ねぇ、レーサーのお兄さん?」


 「なんだ?さっさとトロッコを止めろ!」


 「この先に何があると思う?」


 「この先だあ?

  って、ちょっ、待て!、早く止まれ!

  この先はぁぁぁあ!!」

 

 光が刺す、

 出口である。

 そして、この坑道を抜けたその先の鉄道は、途中で途切れ、青空へレールが向いていた。

 修理中なのだ。

 

 彼の静止の命令など聞く筈も無く、

 むしろ、ミースは、黒いモヤを更に増やし、加速させた。

 

 「死ぬ気か!」

 洞穴(ホラアナ)(カミナリ)は、付き合い切れないと、レールをミース達に(ユズ)り、速度を落として行った。


 「あら、前を走らせないんじゃ無かったのかしら?

  勝負にしろ、レースにしろ、

  私達の勝ちのようね。

  ねー、サヤ⭐︎」


 「ミース様!!ミース様ぁぁあ!!

  死んじゃいますぅぅぅぅうう!!」


 ミースとサヤは、トロッコと共に大空を走った。


 しかし当然、何も無い所を、トロッコが走れる筈も無く、

 落下を開始した。


 ミースはトロッコを包む黒いモヤから純白の光へ変える。

 得意な黒と言えど、その性質上、光の中では、純白の方が力が出しやすい為だ。


 さらに白い光を、いっそう強める。

 すると、そのトロッコは、落下中に起動が変わり、

 渓谷中央を走る、6車線の線路へ影を落とす。


 {ここらへんね。}

 「はあ!、フン!!」

 

 いよいよ、トロッコがその線路へ激突する瞬間、トロッコが浮遊し、衝撃を緩和する。

 そしてそのまま、優しく6車線の真ん中より、1つ右の線路へ着地した。


 「成功ね。

  当然だけど、」


 「流石です!、本当に流石です!ミース様ぁぁああ!!」

 サヤが、やつれた表情で、抱きつき、

 とにかくミースを賛辞した。


 「これであいつらは、当分、()いたわね。

  お父様方を回収して、さっさとここを離れましょう。」


 「はい!

  お二人とも無事だと良いんですが、」


 ミースは、坑道を利用し、アルマ達と離れた場所より、後ろに回り込んでいた。

 先に彼女が言った通り、アルマ達との合流が目的である。


 しかし、

 「カルトさんが強いから、大じょ、なっ!、」

 「えっ!、」


 そこで2人は気付いた。

 この6車線の線路の内、4車線も独占した、バカでかい戦車のような装甲トロッコが、後ろから迫って来ていた事に、

 

 『まったく!!どいつもこいつも役に立たない!!

  ガキ共!!もう逃げ場は無いぞ!!』


 それに乗るグレーター・グレーが拡声器のような物を通して、苛立ちげに叫んだ。


※備考

 アイボリー渓谷鉱山のトロッコについて、

 基本的にミース達が乗っていたトロッコの先頭車(ディーゼル機関車を小さくしたような見た目の物)を使用して、鉱石運搬用や、人間運搬用の貨車を引いています。


 それ以外では、


 ・1人用トロッコ・・・バイクの様な見た目であり、1本のレールの上だけで走る事が出来る。本来はサイドカー付属。


 ・工事/掘削用トロッコ・・・基本的な先頭車にクレーンや人型のアームが付いた物。足場などを展開する貨車を引く。


 ・大型工事/掘削用トロッコ・・・4車線の線路を独占する程、巨大であり、その見た目は上記工事用と似ている。ちなみに巨大すぎて全く使われない。


 ・防衛用トロッコ・・・基本的な先頭車と似た見た目だが、それより巨体であり、投石機やバリスタを載せた貨車を引いている。また、打てる回数が少なく、投石機の場合は、一斉掃射が3回までしか出来ない。


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