見つかる
予定よりもはるかに早く街に着いたのでまずギルドに向かいます。
お姉ちゃんが狩っていた魔物を売り、換金します。
前回同様、裏の冷蔵室に案内されお姉ちゃんが出していきますがすごい量です。
寝ている間と焚き木を頼んだ時以外は一緒にいたはずなのですがいつの間にこの量を討伐したのでしょう……。
解体をしてもらっている間にギルドの食堂でお昼を食べることにします。
お姉ちゃんはステーキを頼んでいましたが、私は軽めにサンドイッチを頼んでおきます。
「量が多くてちょっとしょっぱいね。」
塩分補給は大事ですし、安くて量も多いのが冒険者ギルドの特徴みたいなものなので仕方ありません。
私のほうは塩味よりもパンが硬いので口が疲れてしまうのが気になります。
何とか食べ終えた後、買い取り所の方へ向かうと終わっているようでした。
今回は魔石は売らずに受け取り、その他の素材を全部売るようにしたみたいですがなかなかの大金です。
「魔物狩るだけでこれだけ儲かるなら依頼受ける必要ないね」
「お姉ちゃん……。普通はこんなに持ち帰れません。それにここでそれを言うのはよくないと思いますよ」
思っていたとしてもこの場で言ってしまうと他の冒険者さんから反感を買ってしまいそう。
慌てて周りを見ますが人も少なく聞いていた人はいなかったようです。
まだ登録して数日ですがそれでも何も依頼を受けていないのはどうなのでしょう。
確か1年間行動記録がなかった場合ギルド証が無効になってしまうはずなのでそのうち受けなければいけません。
「そうだね、ごめん。早めに調味料を買って街を出ようか」
「何かあるんですか?」
ここまで徒歩で来ていたので急ぐ理由は思いつきません。
街に着いたばかりなので一晩くらい泊って行ってもいいような気はしますが。
「さっき助けた人たち居るじゃん?探されてたら面倒だなって」
どうやら相当貴族の方に会いたくないようです。
会話もできていないのにここまで嫌われているのは少しかわいそうですね。
「この街に向かっているみたいだったからね。今日中に街を出ちゃえば見つからないだろうし」
確かに街の中ならともかく外に出てしまえば探すのは大変です。
お姉ちゃんが魔物を狩ることができるので解体さえできれば食材にも困りません。
解体できるように頑張ってみようか少し悩みます。
私としては宿の料理やお風呂に入れないのは少し残念ですが。
「そう言えば調味料ってどこに売ってるの?どこかに専門店があったりするのかな」
「普通のお店にもありますが量を買いたいなら商業ギルドの方がいいと思います。塩とかの基本的なものなら常に在庫があるはずです」
「じゃあ、まずはそっちに行ってみてギルドにないものがあれば少し街を探そうか」
冒険者ギルドを出て商業ギルドの方へ向かいます。
ギルド同士の建物は近くにかたまって建っていることがおおいみたいです。
この街でもそのようで簡単に見つかりました。
お昼時のためギルド内はあまり混んでいません。
お姉ちゃんと一緒に購入用のカウンターへ並びます。
「商業ギルドへようこそ、本日は何をお買い求めですか?」
「調味料が欲しいんですけど何があります?」
ギルドの受付の人にお姉ちゃんが答え次々に買っていきます。
塩と砂糖が15キロ、胡椒と味噌を2キロ、お酢と醤油を2樽、追加で何種類かのお酒を1瓶ずつ買っていました。
すごい量ですね……味噌、醤油、お酢は最近東の方の国から来た調味料のようで私は使ったことがありません。
少ないですがお酒を買っていたのでお姉ちゃんはお酒を飲むのでしょうか?
「ご購入ありがとうございます。馬車にお積いたしますか?」
「自分で持っていくので大丈夫です」
「畏まりました。用意いたしますので少々お待ちください」
支払いを終えると受付の人が裏にさがっていきます。
量が多いので用意するのに少し時間がかかるみたいです。
「お酢はともかく、醤油と味噌があるのは予想外だったな」
受付で待っている途中お姉ちゃんがそんなことを呟きます。
「お姉ちゃんは味噌と醤油を知っているんですか?」
「私の故郷では定番の調味料だったからね」
「そうなんですね。使ったことないんですが頑張って使ってみますね」
「味噌汁くらいなら私でもできるだろうだし手伝うよ。1から作ったことはないけどね」
お姉ちゃんは東の方の国の出身なのでしょうか?
現状謎な部分が多いので少しでもお姉ちゃんのことを知ることができるのはうれしいです。
後半不穏なことが聞こえましたが一緒に料理できるのはうれしいです。
お姉ちゃんと話をしていると用意が終わったようで受付の人が鞄を持って戻ってきます。
「お待たせいたしました。こちらがご購入いただいた品物になります。ご確認ください」
カウンターに並べられたものを仕舞いながら確認していきます。
特に問題もなさそうなので受け取りのサインをして商業ギルドを出ます。
手をつなぎ街の外へと向かいながら雑談をします。
「そう言えば、お姉ちゃんはお酒を飲むんですか?」
「いや、飲まないよ。なんで?」
「さっき一緒にお酒を買っていたので飲むのかなと思いました。ほかに何かに使うんですか?」
「料理に使える……はず。確か漬け込むとお肉が柔らかくなった記憶が……」
「そうなんですか?」
お手伝いはよくしていましたがお酒は使ったことがないのでわかりません。
後で試してみることにします。
会話をしながら歩いていると突然お姉ちゃんが立ち止まります。
どうしたのかとそちらを見ると後ろから女の子に抱き着かれています。
どちら様でしょう……。
「えっと初めましてだよね?迷子かな?ソフィーはその微妙な顔やめない?」
どうやら私は微妙な表情をしていたみたいです。
どうしようか悩んでいると女の子が話しかけてきます。
「今朝は助けていただきありがとうございますわ。お礼を言う前に走って行かれてしまったので急いで追いかけてきましたの」
よく見ると女の子の服装は高級そうな生地が使われているように見えます。
どうやら今朝の貴族の方がもう追いついてしまったようです。
しかし護衛の人などが見えませんが一人で私たちを探していたのでしょうか?
周りを見渡すと遠くからこちらに走ってきているメイド服らしき人の姿が見えます。
「ソフィーこれ逃げたらまずいかな?」
やはりお姉ちゃんは嫌なようでこちらに縋るようにいってきます。
抱き着かれてしまっていますしさすがにこの状況から逃げるのは難しいと思います。
ケガをさせてしまったらもっとまずいことになるので。
「少しお礼をと思ったのですがご迷惑でしたか?」
「う、うーん……」
「お姉ちゃん、さすがにここまで来たら行くしかないと思います」
どうしてもお姉ちゃんは逃げたいようですが諦めてもらうことにします。
指名手配にでもされたら大変です。
「……わかったよ。どこに行けばいいの?」
「ありがとうございますわ。わたくしたちが泊っている宿まで案内しますわ」
その言葉を聞くと女の子の表情がぱぁっと明るくなり案内を申し出ます。
その後女の子はお姉ちゃんの手を取り歩き出します。
途中こちらへ走ってきていたメイドさんと合流し宿へと向かいます。
「自己紹介が遅れましたわね。わたくしはマリーナ・ウィリアムズと申します。気軽にマリーとお呼びください」
「私はリノ、こっちが妹のソフィア。二人とも一応冒険者だよ」
宿へ向かう途中、お互いに自己紹介をします。
マリーナ様は私より年上の14歳だそうです。
貴族令嬢だと思っていたのですがどうやら他国のお姫様の様です。
「王女様だったんだね。どこかの令嬢かなとは思っていたけど」
「王女といっても第11王女ですわ。継承権争いにも参加できず、第6王妃の子供なので持っている力平民とほぼ変わりませんの」
話によると一番下の末っ子らしくかなり自由に動き回っているそうです。
どこの国のお姫様なんでしょう王女が11人もいたら大変そうです。