トーナメントで学校一になったのは異世界転生おじさん悪役令嬢でした
課外活動の後から、イェシルは寮の部屋に帰ってこなかった。ギナはイェシルと共通の友人のサイスに訊ねた。
「知らないよ。なにか事情があるんじゃないかな」
「俺が腸煮えくり返ってるのは俺に何の連絡もないってこと!」
「ボクに怒んないでよさ」
サイスは気の弱い生徒なのでギナは申し訳なく───思わない。悪いイェシルをギナは決して許さない。
「よお。サイス。ツラ貸せや」
上級生が話しかけてくる。三年生のようである。
「ど、ドランさん」
「ドラン?」
ギナには聞き覚えがあった。確か決闘ランク最上位の男である。隣にいる二人は2位のイトラと3位のドアロか。
「三年生が一年生に何の用だ」
ギナが突っ掛かる。あわよくば決闘を吹っ掛けられるという考え。
「良いんだ!ギナ!」
サイスはドランたちと連れ合って、何処かへ行く。あの辺りは体育倉庫か。
ギナは体育倉庫でサイスとドランたちを見つけた。
「ふざけんな!どうして寺院に機械があんだよ!教えはどうした、教えは!」
「ごめんなさい!」
「お前ら笑うな!」
ギナが乱入する。ドランの手から紙が滑り落ちる。地面に落ちた紙をギナは拾った。紙に描かれていたのはエロ漫画である。寺院の中で機械同士のえっちなやり取りが───
「過酷すぎだろ」
「そんな。ギナならナット製造機×ロールケーキの原料タンクものを理解してくれると思ったのに!」
「理解できるか!」
「俺はドラゴンカーセックスを描けつったよな。お前がいい機械を描くから優しくしてやったのに、機械ばっか描きやがって!」
「男子校ヤバない?」
ギナは白目を剥く寸前だった。
「だが、サイスをいじめるのは許さない。決闘だ!」
「まあ、待てよ。そのうちビッグなイベントに招待してやっからよ。決着はそこで」
ドランは去る。イトラはギナにベースボールを投げつけて言った。ギナはボールをキャッチする。
「このボールに書かれた数字が読めないようならドランには勝てっこねーぜ。ケケッ」
イトラとドアロも去っていった。
「いや、数字じゃなかったろ。描かれてたの」
ギナは答え合わせに手のボールを見る。そこには気持ちよすぎな男が描かれていた。
後日ギナの元に招待状が届いた。学校武術会というものである。商品はトーナメントの順位で決闘の順位を確定させるというもの。つまりはトーナメントの上位3名が今年王城で開催される舞踏会に参加できるということ。
「ようやく黒曜姫に再会できる」
ギナは嬉しさのあまり踊り出した。
「ギナはさ。イェシルのこと見てた?」
武術会は学園祭のイベントの一つなのでたくさんの外部の人が来ていた。学生がやっている売店もある。
「いんや?見てない」
問うたサイスにギナは言った。
「それが原因なんじゃない?イェシルが帰ってこないのは」
ギナは顔がいいので良家の娘たちが黄色い歓声を上げている。
「それなら、ま、大丈夫でしょ」
ギナは武術会の一回戦に勝てたので上機嫌である。
「アイツなら、すぐ追いついてくるから」
二回戦は予選から上がってきた生徒とNO.3のドアロとの戦いだった。予選からの生徒の名前は覆面。顔を仮面で隠している。
勝負は一瞬だった。開始から1秒足らずでドアロは胸の薔薇を散らされていた。
「一切魔力を感じなかった」
瞬時の出来事だったからか、それとも───
「魔法を使っていない。または高次元の魔力過ぎて感知できなかった───?」
三回戦はギナ対ドラン。ドランは決闘ランク第一位。
「俺様はよぉ。彼女が欲しいんだよ。顔のいいお前をぶちのめせば俺様はモテモテだろーが」
自分が招待された理由はそれか、とギナは思った。
「学園一になるのは簡単なことじゃなかっただろ。お前が戦う理由は一笑に伏していいもんじゃない」
「俺様は───笑われたってかまわねえ。慣れっこだからな。今まで笑わなかったのはあんたくらいだ」
決闘開始の合図。ルールは普段の決闘と同じく胸の薔薇を散らされた方が負け。
ギナは風と火の魔法を組み合わせジェット噴射。ドランの胸の薔薇を素手で捉え、炎で焼く。決着がついたかに思われたが───
「俺様の魔法は体を竜にする。魔法は効かねえぜ」
ドランの体の周りのオーラの影響で薔薇も無事だった。
「筋力もこの通りよ」
ドランは拳で軽々と地面を割ってみせる。軽い地震が起こった。
「びびっちまったか?まだまだ行くぜ!」
一撃でもかすれば一溜りもない拳をドランはギナに叩き込む。ギナは冷静に拳を見切って避ける。観客席まで拳衝が伝わるので、観客は慌てて逃げ去っていく。
ギナは飛んでドランからできる限り離れた。
「お前を倒すための三つの策のうち、どれにしようか考えていた」
ギナの魔力が跳ね上がる。ドランは危機を察知し、ギナを正面から叩こうとする。ギナは全魔力のうち半分を背中に、もう半分を両手に分配し、火炎を放出した。その一撃は遠くに見える山を削り取った。地形を変えるほどの一撃を正面から喰らったドランは生きていた。しかし、竜のオーラは吹き飛び、胸の薔薇は焦げ落ちた。
決勝戦。勝ち上がってきたのは覆面であった。ギナの魔力はまだ回復していない。それ以上にドランを倒した技は体に負担をかけた。疲労骨折寸前である。
「決勝まで来たんなら負けても舞踏会に行ける、か」
覆面は仮面を外した。覆面の正体はイェシルだった。
「これで負けるわけにはいかなくなった、と」
二人の決闘が始まった。
「今までは30%の力しか出して来なかったけど、キミには80%の力で相手しよう」
イェシルは瞬間移動し、ギナに高速の剣をお見舞いする。ギナはイェシルの剣をいなす。ギナの剣がイェシルの胸をかすった。イェシルは間合いをとる。
「お前の剣は全て知っているぞ」
「100%」
イェシルの頬の紋章が激しく光る。観客の中にはあまりの魔力に気を失う者が続出した。
遠距離からの真空の突き。風の刃がギナを襲うが、ギナはそれを剣で軽く切り裂いた。
会場にはいくつも竜巻が発生していた。イェシルが放つ一撃一撃は大気を大きく変動させる。しかし、ギナにはどの攻撃も通用しなかった。
イェシルはマントをとる。イェシルの手足は魔力で作られた拘束具で禁ぜられていたのだ。
「古の縛術。僕はとある人から修行をうけた」
「大体察するよ」
縛術を解いたイェシルの魔力はさらに跳ね上がる。
「1000%!」
イェシルは吼えた。
「さらに、僕の命を削って魔力を上乗せする!」
突如として風がやんだ。一切吹かない。イェシルの魔力はどこにも感じられなくなった。全ての魔力はイェシルの剣に収束されている。あまりにも高次元の魔力のため、常人には感知できない。
絶対の一太刀。
ギナはそれを剣で受け止めた。その瞬間、周囲100kmが消え去るはずだった。だが、なにも起こらない。イェシルの魔力は剣からどこかに逃げていた。イェシルは力なく倒れた。胸の薔薇はイェシルの体に押し潰された。
ギナは上空に掌をかざし、宇宙まで達する炎を放った。イェシルの魔力は全てギナが吸収していた。魔力がほとんど空っぽの状態だからできたことであった。
「そんなんじゃ、まだまだ私を追い越せないわよ。イェシル」
ギナの声を聞いて、イェシルは満足そうな笑みを浮かべた。
えー。
実はこの続きをかんがえてたのだけれども面倒になっちゃって、学校編はこれで終わるかもしれないです
んで、なんか某ソシャゲの2次創作にはまっちゃって、こちらあんまり更新できないかも