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異世界転生したおじさんは真ヒロインを推すことにした  作者: カブトボーグ
異世界転生おじさん悪役令嬢は男子校に入って騎士になることにした
2/3

脱獄した悪役令嬢を追うのは異世界転生おじさん悪役令嬢でした

 ギナは毎日授業の後にイェシルに剣術の稽古をつけてもらっていた。

「学校で習う剣術。我が家の剣術。色々あって楽しいでしょ」

「その通りだな」

 内心、ギナはイェシルのことをまだライバルだと思っている。だが、男子校の中でギスギスした雰囲気は目立つ。同室でもあるのだから、関係は良好に保ちたいところである。

「だが、正直なところを言うと、なんだかしっくりこない」

「今までの剣術はギナの体とか戦闘スタイルに合ってないのかもしれない」

「なんかこう、もうちょっとで掴めそうな感じはあるんだが」

 イェシルはギナの言葉に驚く。ギナの剣の実力はイェシルに肩を並べるほどに成長している。その上ギナが自分にあった戦闘スタイルを身につければ今のイェシルに勝てるかどうか───

「一勝負願えますかな」

 声をかけてきたのは二年生。

「イェシル。相手してやれ」

「僕が相手でもいいですか、先輩」

「異存はありません。全ては女の子とイチャイチャするために───」

 決闘の上位者への報酬はお城の舞踏会へ参加できるというもの。女に飢えている男子校の生徒には唯一無二の報酬といえる。

 イェシルとギナはあっという間に学年トップとなり、現在二年生とランキング争いを繰り広げていた。


 その日から課外授業として、城下パトロールが始まった。

「学生っぽいイベだな」

 ギナはあまり城下に出なかったのでウキウキ。

 警備隊の男が注意を述べる

「現在脱獄した囚人が城下に潜伏している可能性がある。火炎魔法を使う女を見たらすぐに連絡して欲しい。自分等で対処しようとせず」

 ギナは大量の冷や汗を吹き出す。

「ギナ?どうした?」

「大丈夫だ。問題ない」

「先日から頻繁しているボヤ騒ぎもその囚人のせいだと思われる」

 ギナは安堵のため息。自分とはどうやら無関係のようである。

「サンギナリアくんとイェシルくんだけでパトロールを頼めないだろうか。警備隊は囚人の捜索で忙しいのだ」

「ま、ほどほどに頑張ろうや」

 ギナはイェシルに言う。どれだけ探そうともその囚人は目の前にいるのだから、無駄な行為なのである。

「いや。僕が誰よりも先に見つけないといけないんだ。その女の子を」

 イェシルは脇目もふらず駆けていく。

「今日はすっげー真面目ちゃんだな」

 ギナはポカンと口を開けた。


 イェシルは一つのものばかり見ていて、それ以外のものが目に入っていない。ギナはそんなイェシルに半ば呆れつつも黒曜姫を目の前にした自分もあんな感じだったな、と思うのであった。

 町にはたくさんの人。ギナは満遍なく行き交う人々を眺める。

 そして、足を止める。

 10歳くらいの女の子が一人でいたからである。

「どうしたんだい?お嬢さん?」

 ギナは笑顔で話しかける。

「べ、別に///」

 女の子は頬を赤らめた。

「ギナ!そんなところで油なんて売ってるんじゃない!」

「この子は泣いてるんだぞ!そんな子を放ってなんておけるか!」

 ギナ、キレる。

「───好きにしろ」

 イェシルは吐き捨てて一人でどこかに去っていく。

「良かったの?」

 女の子はギナに問う。

「いいの。なんかアイツ、今日はちょっと変なんだ。それより、キミが泣いている理由、教えて欲しいかな」

「じゃあ、いっしょに来て。私はパパを尾行してるの」

 これはイェシルの方が正しかったかなと思うギナであった。


「リリィちゃん、だっけか。どういうことなのか説明してくれると嬉しいのだけれど」

 少女リリィのパパを尾行しているギナ。

「きっと浮気だわ」

「それはいただけないわね」

「別にいいの、それは」

「え?」

「ママは死んじゃったから。浮気は悪いことじゃないの」

「でもキミは泣いてる」

「悲しいもの。パパが私に女のことを隠してるのが。知らない女を連れてきても私は拒否しない。でも、私に内緒にするのは決して許されないことなの」

 複雑な乙女心ねえ、とギナは思った。

「リリィちゃんには将来の夢ってある?」

「将来の夢をみられるほど裕福じゃないわ」

 最近のガキは、とギナは思った。

「私もお姫様に出会うまではそんな感じだったかも。前世でもそう───」

「将来の夢がお姫様ってのもいいわよね。貴族の男の嫁になって成り上がる。それが現実的な幸せかしら」

「お姫様ってのも案外不憫よ。この町の娘さんたちみたいに自由に買い物やおしゃべりなんてできないし」

「───難しいのね、この世界で女が幸せになるのって」

 リリィのパパが街角を曲がったので急いで後を追う。

 角を曲がった直後、ギナの視界は真っ暗になった。


 ギナは男女の言い争う声で目を覚ます。一人はリリィ。となるともう一人は?

「こんなことはヤメて。パパ!」

 どうやら男の声はリリィパパのようだった。

「その札の力でテロなんて、ダメ、絶対」

「なかなかいただけない会話ね」

 ギナが口を挟む。ギナは木の椅子に座らされ、椅子の背もたれと体を縄でぐるぐる巻きに固定されていた。

「目を覚ましたのかっ」

 リリィパパはギナに襲いかかろうとしたが、いつの間にか縄をほどいていたギナを見て、動きを止める。

「そりゃテロなんてもん見過ごすわけにはいかないわ。でもね」

 ギナは大きくため息。

「親子喧嘩なんて犬も食わないわ。まずは親子で仲直り。ね?」

 リリィとリリィパパはギナの場違いな発言に唖然としている。

「リリィちゃん、パパに言いたいこといっちゃいなさいな」

「パパがテロで捕まるのがヤなの。まだ性格の悪い女がママになるほうが百倍マシ!」

 リリィは泣き出した。

「で、パパは?」

「リリィが幸せに暮らせる世界を作るには今の王国は邪魔なんだ」

「目の前で泣いてる娘を放っておくってワケ?死にに行く理由に娘を使うなよ」

「あんたになにが───」

「リリィちゃんの夢、知ってる?聞いたことある?」

 ギナの言葉は一つ一つリリィパパに突き刺さる。

「女の子の一人くらい笑顔にしてみせなさいよ」

 ギナはリリィパパの手に握られていた札を奪い取る。リリィパパはギナから札を取り返そうとはしなかった。

「いずれ仲間が俺たちを殺しに来るだろう」

「私はね。パパさんにも笑顔になってもらいたいの」

 ギナは二人に笑顔を見せた。

「リリィちゃん。お姫様もいいけど、王子様になるってのも案外悪くないわ」


「どうして秘密基地に騎士がいるんだよ。殺すぞ!殺すぞ!」

「絵に描いたような悪党で嬉しいわ」

 ギナがリリィの家を出た瞬間、テログループの一員であろう三人に出くわす。

「この怪しい商人から手に入れた札で魔獣を召喚するZE☆」

 炎を纏った巨大な獅子が召喚される。三匹。その名はフレイムカイザー。人間が立ち入りを禁止されている区域に生息する魔物。

「えげつねえのが出てきたな。どーすんだこれ」

 テログループの三人は棒立ちのままぴくりとも動かない。意識を失っているようだった。

「こんな強力な魔物に魔力を与えるんだから、命を削ってるんだろうな」

 その怪しい商人とやらから命を削る代物とは聞かされていないに違いない。

 そして、早く魔物を倒さねば三人は死んでしまうだろう。

 ギナは躊躇うことなく魔力を全解放する。腕、脚、背から炎が吹き出す。剣に炎を纏い、フレイムカイザーを斬りつける。フレイムカイザーは強靭な爪で剣を受け止める。別のフレイムカイザーが横からギナを爪で切り裂こうとする。ギナは炎の壁を作り出し、攻撃を防ぐ。背後から最後のフレイムカイザーが必殺の一撃を───

「このライオン野郎どもが!」

 ギナは体から炎を噴出し、フレイムカイザーたちから間合いをとる。

(思った以上に飛んだ)

 フレイムカイザーたちの出す炎の熱気により上昇気流が発生していたのだろう。

 ギナは火炎魔法と風魔法を組み合わせる。ジェット噴射のように速度が跳ね上がる。そして───

「お前の炎いただくよ」

 フレイムカイザーから炎を奪う。しかし、フレイムカイザーの体にはすぐに炎が戻る。

 ギナはフレイムカイザーの前脚に剣を突き刺す。内側から焼かれるような熱さにフレイムカイザーは思わず口を開けて暴れだす。ギナはフレイムカイザーの口に手を突っ込み、舌を引っ張り出す。そして、ありったけの炎をフレイムカイザーに注ぎ込んだ。炎は舌を伝ってフレイムカイザーの体内へと入り、フレイムカイザーは内側から焼かれ、丸こげとなった。巨体が倒れる大きな音が響く。

 ギナの眼が光る。フレイムカイザーは退こうとするが、脚が氷で固められていて動けない。フレイムカイザー一体はギナに頭を掴まれる。そのまなギナの炎に焼かれた。炎を纏う魔獣を焼き殺す火炎とは如何ほどものか。想像を絶する。

 最後の一体は氷から抜け出した。ギナはフレイムカイザーに剣を投げつける。剣はフレイムカイザーの胴に刺さり、雷を流し込む。フレイムカイザーの動きが一瞬鈍る。その一瞬があればギナにとって充分だった。

 ギナの姿は上空にあった。

「ギナギナのJET銃!」

 風+炎。殺人的な加速でギナは拳をフレイムカイザーの頭に叩き込む。地面に落としたスイカのようにフレイムカイザーの頭は粉々になった。

「世代的に紅蓮腕の方が良かったかな」


 イェシルは町に上った炎を見て、急いで現場へ向かった。イェシルが目にしたのは三体の魔獣の屍の上に立つギナの姿。ギナの焼けた服から露になった肩に赤い紋章が浮かんでいる。それは血石姫と同じルフス家の紋章。

 いつもあなたは僕を置いて前へ前へと進んでいってしまう。

 イェシルは思った。


────大分前に、投稿したつもりだったのでござりまする───

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