第五話
ゾンビ襲撃から二時間が経とうとしていた。
窓から校庭を覗くと、もうすでに生きている生徒は見当たらなかった。
「先生、もうみんな死んじゃいましたよ」
「そっか、残念?」
「私はなんとも」
「僕もだよ」
先生はそう言って私を抱き寄せた。
「調理室まで行く?」
「どうしてですか?」
「食糧が残ってないか探しに」
調理室は教室の隣の隣の隣の階段挟んだ隣だ。廊下にゾンビがいるか確認する為に、先生と私はバリケードを一つずつ下ろしていく。
隙間から廊下が見える。ゾンビはいない。
しかし、音をたてると来そうなので慎重に扉を開ける。古い学校、もちろん扉はギーっという音がする。
「先生、そんなにお腹空いてるんですか?」
「あぁ、腹ぺこだよ」
先生は廊下に出ると忍足で歩いて行く、私は教室に残る事にした。怖いから。
階段の所にシャッターがあるので、それが唯一の頼みだ。
先生の姿がだんだん見えなくなる。
何分くらい経ったのか、小走りで戻ってくる先生。
先生は教室に入ると、すぐにまたバリケードを作った。中身を空にして持っていったリュックはパンパンだ。
「なにかありましたか?」
「君、もしかして焼き豚作った時、調理室の冷蔵庫にも入れた?」
すっかり忘れていた。冷蔵庫に入り切らないから、ロッカーに入れたんだった。先生はリュックいっぱいに焼き豚を入れてきた。
よかった、これでしばらくは大丈夫だ。