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<第03話>

 次に鎌足が近付いたのは、前皇太子厩戸皇子の息子、白髪部皇子である。母親は小治田天皇(推古天皇)の孫娘、位奈部橘王。今上天皇の皇子たちと同世代で、血統を見れば、次世代の有力な天皇候補となり得る皇子である。

 鎌足も通っていた旻法師の学堂で、同じ学生である白髪部皇子のほうから声をかけてきた。

「鎌子連はなんでも詳しいのですね」

 旻法師と対等に議論をしている鎌足は、他の学生たちからも一目置かれていた。

「私などまだまだ未熟でございます。今は知識を蓄え、いつの日か国のため天皇のために役立てる日が来ることを願って励んでいます」

 鎌足の謙虚な物言いに、白髪部皇子はすっかり心酔した。その後も二人は学堂で頻繁に言葉を交わすようになった。

 鎌足の元々の計画には白髪部皇子の存在はなかったが、親しい皇子は多ければ多いほどよい。鎌足は、彼との縁も大切にした。


 もうひとり、天皇の第二皇子である葛城皇子にも、鎌足は触手を伸ばした。

 夏のある日、葛城皇子が催した飛鳥寺の庭での蹴鞠で、鎌足は初めて皇子から声をかけられる機会を得た。

 鞠を蹴る葛城皇子の靴が脱げた際、すかさず傍にいた鎌足は駆け寄った。鎌足は皇子の靴を拾うと、片膝を立てた袴の上に靴を置き、跪いた。

「そなた、名はなんという」

 鎌足は跪いたまま答えた。

「は、中臣連鎌足と申します」

 その後、鎌足は葛城皇子の宮へ招かれた。

 しかし、鎌足は慎重だった。

 葛城皇子は、軽皇子や白髪部皇子とは立場が違う。大臣蘇我毛人は、天皇の第一皇子、自分の甥である古人皇子を次の天皇にするつもりである。

 軽皇子は古人皇子よりだいぶ年長であり、軽皇子が天皇になるとは誰も考えておらず、蘇我氏から警戒されていない。白髪部皇子に関しては、腹違いの兄である山背大兄皇子の影に隠れ、さほど注目されていない。

 しかし葛城皇子は天皇の第二皇子である。第一皇子の古人皇子の母親が大臣蘇我毛人の妹の法提郎女であるならば、葛城皇子の母親は皇后宝皇女である。下手な動きをすれば、葛城皇子が古人皇子から天皇の座を奪うのではないかと警戒される。蘇我氏によって殺されてもおかしくない立場にいるのだ。

 鎌足は、葛城皇子とは人目を避けて会わねばならないと考えた。軽皇子の時のように宮へ出入りしたり表立って近づくことを差し控えた。自分が通っていた南淵請安の塾に皇子を呼び出し、機会を窺った。

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