第55話「狂戦士と『バーサーカー・ソウル』」
ジンが銀色の紫電を纏わせながら言い放つ。
すると、壁に叩きつけられたゲンジ先輩が、むくりと体を起こした。
「…『銀狼モード』。銀狼族だけが使用できる固有スキル。一時的に、全てのステータスを飛躍的に向上されることができる。お前の得意技だったな、陣ノ内よ」
「ははっ。ようやく思い出してきたか?」
「あぁ、ようやく思い出したよ。お前が我を嫌っているように、我もお前が嫌いだったということなっ!」
立ち上がって、『ベルセルク】を構え直す。
そして、彼が駆け出そうとした。
だが、その寸前。
ジンの攻撃が閃光のように、ゲンジ先輩の横腹を襲った。
「ぐっ!」
「おらおら、どうした! 動きが鈍いぜ!」
目にも留まらぬ連撃。
他方から見ても、雷撃がほとばしっているようにしか見えない。
最後にジンは。ゲンジ先輩の皮膚を引き裂いて、そのまま弾き飛ばす。
ドンッ!
宮殿の壁に叩きつけられて、再びゲンジ先輩は地面に崩れていく。
「ぐふっ…」
だが、それでも倒れない。
血を吐きながら、地面に両手を立てる。
「おい、どうした。部長会議での威勢はどこにいったんだよ」
「…たわけが」
「あ?」
「たわけ、と言ったのだ!」
ゲンジ先輩は緩慢な動きで立ち上がると、ジンのことを真っ直ぐに睨みつける。
先ほどまでの無気力な目ではない。
確固とした、敵意を向けていた。
「我が本気で戦っていたと思っているのか? 貴様とて、知らぬわけがないだろう。我の本気を」
…その目が、赤く光る!
ゲンジ先輩の目が、皮膚が、浮き出てきた血管が、赤く妖しく光っていく。
「我の名前は郷田源次郎。『十人委員会』の『NO.3』、不倒不屈のゲンジ。構えろ、陣ノ内。さもなくば、…死ぬぞ」
目から正気がなくなっていく。
まるで獣のように、呻き声を上げながら体中をかきむしる。
「おいおい。コイツは…」
「ウオォォォォォォォォオォォォォォォォォッ!」
ゲンジ先輩が、獣のような声を上げる。
手に持った『ベルセルク』を振り回しながら、獲物を探すように辺りを見渡す。
その挙動に、人間らしさの欠片もない。
ただ、戦うための狂戦士と成り果てていた。
「…『バーサーカー・ソウル』か」
ジンが忌々しそうに呟く。
『バーサーカー・ソウル』。
狂戦士が保有する、唯一の固有スキル。発動してしまったら最後。圧倒的なステータスの上昇と引き換えに、目の前の敵を倒すまで狂ったように戦い続ける。
たとえ、自身が死滅することになっても。
「…こいつは、ちっとヤバイかもな」
ジンが柄にもなく弱音を吐いていると、ゲンジ先輩の目がジンを捉える。
「…悪いな、ユキ。こっちはあんまり持ちそうにないぞ」
銀色の閃光を纏わせながら、再び戦闘態勢へと構え直す。
そして、次の瞬間。
ザンッ…
ゲンジ先輩の『ベルセルク』が、ジンに突き刺さっていた。
「え」
何が起きたのか、彼自身も理解が追いつかない。
目の前にいる狂戦士に、苦々しい舌打ちをする
「…やべ。しくじった」
そしてジンは、崩れるように地面に膝をついた。




