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第20話「…彼のいない世界なんて、壊してやる」


――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


 東の空から、太陽が昇る。


 この景色をどれだけ見てきただろうか。

 がらんとした部屋の中で、わたしは1人で考える。

 家具が少なく、モノトーンで統一されたシンプルな内装。わたし1人で暮らしていたら、こんなに整理整頓が行き届かないだろう。


 いつも、彼がいたから。

 わたしの傍には彼がいて、彼の傍にはわたしがいて。


 それが当たり前になっていた。

 それが心地よかった。


 …いつから?

 いつから、そんな感情が生まれたのだろうか。

 初めて出会った駅のホームで?

 彼と会話した喫茶店で?

 2年生になって、彼と同じクラスになったから?

 こんな糞みたいな異世界でも、わたしのことを彼が見つけてくれたから?


 …わからない。

 …わからないけど。

 目に入った服を適当に着ていく。夏物のワンピースに、彼の大きすぎる上着を羽織って。その上から水色のマフラーを巻く。


 そして、最後に。

 それ・・を首にかけた。


 小さな指輪に細い糸を通して、ネックレスにしてみた。銀色のリングに、小さな宝石があしらわれている。

 その宝石がダイアモンドなのか、本当はわからない。

 それでも、わたしは彼に望んだ。

 壊したくても、壊せない。わたしと彼の関係性を。

 強い結びつきを。


 運命の赤い糸のような、切れない結びを。

 いつまでも一緒にいられるように。


「…」


 だけど、今は1人。

 1人になってしまった。

 ジンのいない世界で、1人になってしまった。


 …だから。

 …壊す。

 …彼のいない世界なんて、壊してやる。

 …彼がいないのに、笑っている人間が許せない。幸せな人間が許せない。前向きになっている人間が許せない。なにより、彼がいなくなった原因を作った『あの女』を許せない。


 …捕まえて、切り刻んで、焼き尽くして、擦り潰して。生きたまま眼球を潰して、声が出ないように喉を焼いて、内臓をこの手で引き摺りだして、足の先からゆっくりと壊してやる。壊してやる。壊してやる―

 


――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 



「おい、陣ノ内はどうした?」


 十人委員会の会議室で、野太い男の声が響いた。

 円卓についているオーガ族の大男。ゲンジであった。


「快司に続いて、陣ノ内まで欠席か? これは少し弛んでないか?」


「そうですね。…でも、陣ノ内君が連絡もなく欠席とは珍しいですね」


 ゲンジの向かいに座っている誠士郎が答えた。

 すると、空席を挟んで隣に座っているミクが口を開いた。


「寝坊しているだけじゃない? コトリもまだ来ていないんだし」


「そうかもしれませんが、とっくに定時を過ぎているんですよ。ユキ君は体調不良かもしれませんが、遅刻するなら連絡くらいほしいものです」


「まぁ、そんなに怒るなよ。どうせ、そのうち顔を出すさ」


 ミクが楽観したように答えた。

 十人委員会の円卓についているのは6人だった。

 ゲンジ、誠士郎、ミク。

 あとは有栖と碓氷涼太。そして、天羽凛である。メンバー内で凛だけが、ジンのいないことで不安な表情を浮かべていた。


「ところで、御櫛笥みくしげさん。ユキ君の体調はどうですか?」


「あぁ、だいぶ良くなったみたい。まだ腹痛とか体のダルさはあるみたいだけど、今日くらいには動けるようになるんじゃないかな?」


 誠士郎の問いに、ミクが答える。

 その時だった。

 会議室の扉が少しだけ乱暴に開かれた。

 バンッ、と音を立てた扉の向こうには、黒髪の少女が立っている。

 十人委員会の『No.2』である、ユキであった。


「はぁ、はぁ。…ねぇ、皆!」


 彼女は荒く肩で息をしながら、ドタドタと会議室に入ってくるなり問いかけた。


「じ、ジンの姿を見なかった!?」

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― 新着の感想 ―
[一言] ジン、真実を知り、散る。 コトリ、暴走へカウントダウン。
[一言] また一人仲間が消えた
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