第22話「その男。…ジン!」
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「俺の名前は、陣ノ内暁人! よく覚えとけ!」
子供の頃、よく虐められていたボクを。いつも助けてくれる友達がいた。
彼はヒーローのように颯爽と現れて、ボクを悪ガキたちから助けてくれた。
「ほらっ。立てよ、ユキ」
その日も、ボクは。学校帰りに虐めを受けていた。
ランドセルを取られて、中に入っていた教科書なんかも辺りに散らばっている。
そんなボクを見つけると、その友達は。すぐさまボクの元に駆け寄る、…なんてことをするわけもなく。悪ガキたちに気づかれることなく、背後へと忍び寄る。
そして、無防備になっている後頭部に目掛けて、ランドセルを振り下ろした。
完全な奇襲。
そのまま、目潰しの砂投げ。腹に一発入れてから、股間を蹴り上げる。しまいには、そいつを人質にとって、その顔の前に犬のフンをチラつかせる。
卑怯だぞ、と声を上げる悪ガキたち。
そんな彼らに、彼は何の後ろめたさもなく答える。
「あぁん、バカ言っているんじゃねぇ。卑怯を言っていいほど、お前らは真面目に生きてないだろーが」
そして、彼は。
喧嘩も普通に強かった。悪ガキたちを蹴散らして、ボクに向けて手を伸ばす。
何度も謝るボクに、彼はいつも楽しそうな笑みを向けるのだ。
「ははっ、俺たちは友達だろう。だったら、助けるのは同然さ」
だから、もし俺が困っていたら。今度はお前が助けてくれよな。
彼は、そう言って。
楽しそうに笑ってみせた。
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その笑顔を見て。
嬉しさと懐かしさで、胸がいっぱいになる。
「…どうして、ジンがここに?」
ボクの問いかけに、彼はいつものように楽しそうに答える。
「話はあとだ。今はこいつをどうにかしないとな。ユキ、やれるか?」
ジンの言葉に、ボクは力なく俯く。
「そうか。だったら…。ふんっ!」
ジンは気合いと共に、巨大な剣を弾き返す。
そして、一歩踏み込んで、…相手の懐にもぐりこんだ。野獣のような掛け声を上げて、ジンの両腕が叩き込まれる。
「おらっ!」
「ぐおっっ!?」
オーガ族の巨体が吹き飛ばされる。
そのままレンガの壁へと叩きつけられて、その巨体が石畳に倒れた。




