第21話「再会。…見知らぬ友人と、親友の笑顔」
「…あなた、は」
突然、襲ってきたオーガ族の男は、柔道部部長のゲンジ先輩が使っているキャラクターにそっくりだった。
だけど、それだけじゃない。感覚的にも、目の前のオーガ族が。自分のよく知っている、ゲンジ先輩であると確信していた。
「…ゲンジ先輩、ですよね?」
ボクが問いかけると、目の前のオーガ族の男は静かに目を細めた。
見下すような冷ややかな目だった。
「…違う。我は、海洋国家ヴィクトリアの警備隊の隊長だ。それ以上でも、それ以下でもない」
「ボクですよ! 御影です! 御影優紀です!」
「ふん、貴様のような女。我は知らんな」
目の前のオーガ族は冷たい視線を向けた後、地面に刺さる巨大な剣を抜いた。
「先ほどの騒動は、貴様らが原因だな。隊員の怪我を負わせた罪は重いぞ」
狂気の剣『ベルセルク』が、ボクたちに向けられている。
「ユキ! 何してるの!」
「…だって、だって」
「今は逃げるの!」
「…ゲンジ先輩」
足が震える。
もう、立ってもいられない。
だって、やっと知り合いに再会できたかもしれないのに。こんなことになるなんて。
何かが、ぷつんと切れてしまった。
結局、この世界には。ボクの知っている人なんて、誰もいないんだ。あんなに楽しかった日々が、今はとても遠くに感じる。
…結局、ボクは。ひとりぼっちだ。
「…あっ」
がくっ、地面に膝がつき。
オーガ族の巨大な剣が振り下ろす。…あぁ。もう、終わってしまうのか。
「ユキーーーーッ」
アーニャの悲鳴が遠くで聞こえた。
その時だった。
ガンッ、と酷く鈍い音がした。
「…ったく。なんで異世界に来てまで、こんな面倒に巻き込まれなくちゃいけないんだ?」
低く唸るような声。
恐る恐る顔を上げると、誰かがボクのことを庇うように。巨大な剣を受け止めている者がいた。
オーガ族にも負けないような屈強な体格。
全身の銀色の毛が、刃物のように逆立っている。狼のような顔立ちに、口からは鋭い牙が見えた。
銀色の人狼族、『銀狼族』だった。
人狼族の希少種であり、珍しい固有職種である銀狼族。そのキャラクターを使っている人物を、ボクは1人しか知らない。
頭によぎるのは、放課後の教室の風景。
困ったことがあったら、いつでも手を貸してくれた。親友の笑顔。その名前は…
「…ジン、なの?」
銀色の狼男は、ゆっくりと振り返り。
そして、いつもと同じ笑みを浮かべてみせる。
「おうよ。お前の大親友、陣ノ内暁人だ。久しぶりだな、ユキ」
ジンは牙を剥き出しにしながら、彼は実に楽しそうに笑った。




