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第31話「ジン、天羽会長、快児、碓氷、有栖。…『宮殿の隠し部屋』を探しに」


――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


 数日後。

 ヴィクトリア宮殿の玄関に、天羽凛たちの姿があった。


「さて。皆、そろったな」


 凛が集まったメンバーに声をかけると、2人の男が返事をする。


「ちぃーす。岩崎快司、ここにいるッスよ!」


「…朝から喧しいな」


 早朝から元気すぎる挨拶をする岩崎快司を、ジンが迷惑そうな目で見ている。

 ここに、ユキたちの姿はない。

 彼らは昨日から、ヴィクトリア本島から離れた温泉の沸く島に行っている。岩崎快司が引き当てた商店街の福引だ。行く先が離島であることも、快司のスキル『絶頂を続ける幸運の星』で福引を当てることも、全てジンの計算の上であった。


「…で、アリーシア姫もここにはいないんだな?」


「そうッスね。オレっちとジン先輩で確認済みッス」


 確かめるように問う凛に、快司が親指を立てる。


「あぁ。ユキも姫さんも、明日にならないと帰ってこない。…それは、いいんだが」


 ジンが銀色の鬣をかきながら、ため息まじりに肩を落とす。


「…なんでコイツらがいるんだ?」


 尖った爪の指す先には。

 撫子色の髪の幼女と、魔法使いの少年が立っていた。


「コイツ、とは聞き捨てなりませんわね。わたくしたちがいると迷惑とでも?」


「…」


 腰に手を当てて頬を膨らませる有栖と、黙って立っている碓氷。

 その2人を見ながら、ジンが不服そうに呟く。ユキたちと別行動をしていることには理由がある。このゲームのような異世界で、最も怪しい存在。この国の王女であるアーニャについて調べるためだ。


 アーニャは、自分の都合の良いように事象を改変する。

 そんな彼女の居場所である宮殿に、何かしら手がかりがあるのではないのか。この世界から脱出する方法を。『宮殿の隠し部屋』。そういったものがあると告げてきたのは、快児であった。


「こういうのは少数で動くのが基本だろう? なんで人数を増えてるんだよ」


「あー、その2人なら私が呼んだんだ」


 凛はこともなげに言った。


「有栖はともかく、碓氷の洞察力は頼りになる。我々とは違った視点を持っているからな」


「…なんか、その言い方に腹が立ちますわね」


 不機嫌そうに口を曲げる幼女

 それに対し碓氷は、文庫本を片手に澄ました表情を浮かべている。


「…なんでもいいけど、さっさと行こうぜ。時間はそんなにねぇんだ」


「そうッスね。それじゃ、謎が渦巻くヴィクトリア宮殿へ。れっつごーっ!」


 拳を上げて、宮殿の玄関を潜る岩崎。

 その後ろをついていくジンと凛。

 最後に、有栖と碓氷が宮殿へと足を踏み入れようとして―


「…」


「あれ? 涼太、どうしましたの?」


 碓氷涼太が歩みを止めた。

 そして、無言のまま辺りを見渡す。 

 左へ、右へ。

 最後に目の前に広がっているアドリア海に視線を向けて、…その目を細めた。


「…」


「さぁ、早く行きましょう」


 有栖に急かされるように、宮殿へと足を踏み込む。

 その時、碓氷は小さな声で告げる。


「…誰かに見られている」


「えっ?」


 慌てて振り向く有栖に、碓氷はゆっくりと首を振る。


「…近くにはいない。もっと遠くから。…まるで、別の世界から見られているような。…そんな感じだ」


「どうして、わかるのですか?」


 自然と小声になる有栖。

 そんな彼女に、碓氷は静かに語る。


「…違和感。君が他人の善悪に敏感なように、自分は他人からの視線に敏感だ。…人と関わるのが嫌いだからな」


 最後に、これまで見たことのないようなほど真剣な眼差しとなる。


「…何が起こるかわからない。気をつけろ」


「…はい、わかりました」


 事の重大さを計るように、有栖が重々しく頷く。

 そして、不意に。碓氷が有栖の目を見つめた。


「…君のことは何があっても守る。約束しよう」


「えっ!? えっ、そんな、そんなこと、急に言われたら、…きゅっ!!」


 碓氷の最後の言葉に、有栖は静かに卒倒していった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 変態オタクにドM、変態多いなw
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