表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/358

第20話「それは、とある放課後のこと」

――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


 それは、とある放課後のこと。


 ボクたちは教室から出ると、そのまま生徒会室へ向かっていた。理由は、月に一度の部長会議に出るため。ボクの友人たちは、部活の部長を務めていた。ジンは軽音楽部。御櫛笥(みくしげ)さんは陸上部。コトリは文芸部に所属していた。


 ボクたちが生徒会室に入ると、他の部長メンバーは全員そろっていた。長テーブルを横に並べただけの生徒会室に、肩を並べて座っている。


 ボクを合わせて、9人がそこにいた。


「それでは定刻となりましたので、部長会議を始めたいと思います」


 眼鏡をかけた理知的な男子が口を開いた。

 生徒会副会長の小泉誠士郎。3年生だから、ボクたちの先輩ということになる。


「…待て。生徒会長がまだ来ていないようだが」


 野太い声が、小泉副会長の声を遮った。

 身長は190センチを越えている大柄な男子。体全体が筋肉でできているんじゃないかと思うほどに、ガッチリとした体格。


 彼の名前は、郷田(ごうだ)源次郎(げんじろう)

 柔道部の部長だ。面倒見がよく、落ち着いている性格から、下級生から慕われている3年生だ。『ゲンジ先輩』と、ボクたちは呼んでいた。


「生徒会長は今日も休みです。待つだけ無駄ですから、始めても問題はないでしょう」


「ここのところ、学校に来ていないようだが。どこに行っているのだ?」


「さぁ? 八甲田の山奥か、恐山の麓でキャンプでしょう。どちらにせよ、考えるだけ無意味です。いつだって、我々の予想を軽く越えていますから」


 小泉副会長はいたって真面目に話している。

 本当のことだった。ボクたちの通っている学校の生徒会長は、本当にとんでもない人で、2年連続で留年しているとか、武者修行のため山に籠もるとか、そんなことをマジでしてしまう人だった。


「では、部長会議を始めます」


 小泉副会長は資料を配ると、眼鏡をくいっと上げる。その日の議題は、部活の予算についてだった。


 その後、会議は問題なく終わった。


 それぞれの部長たちが帰っていく中、ボクは会議の議事録をまとめている。生徒会の書記なので、こればっかりは仕方ない。


 だが、そんなボクを見て。

 手伝ってくれる先輩がいた。


「あ、あの、すみません。書記なんか手伝わせてしまって」


「気にするな。自分で買って出たことだ」


 大きな背中を丸めてノートに書きこんでいるゲンジ先輩を見ていると、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。


「それに柔道場に顔を出しても、後輩に直接指導ができるわけでもないしな」


 右膝を撫でながら、彼は渋い顔をする。


 ゲンジ先輩は膝を痛めていた。

 部活中に捻挫をしてしまったらしく、今は部活を休んでいる。そこのことを聞いても、問題ない、と淡々と答えていた。


「お前は帰ってもいいぞ。後は、我がやっておこう」


「でも、なんだかゲンジ先輩に悪いですし…」


「無用な気遣いだ。それよりも、お前は自分を待っている友に気を遣え」


 そう言われて、ゲンジ先輩の視線の先を見る。

 そこには帰り支度を済ませた友人たち。ジンと御櫛笥さん。そしてコトリが、ボクを待っていた。


「友は大切にするべきだ」


「は、はい! ゲンジ先輩、ありがとうございます」


「うむ。気をつけて帰れよ」


 ゲンジ先輩はそれだけ言うと、再びノートに顔を向けた。

 やっぱり、このゲンジ先輩は良い人だなぁ、と心から尊敬する。ボクはなるべく手早く荷物をまとめると、ジンたちの元へと向かった。


 信頼できる先輩であり、頼りになる仲間。

 それが、ボクの中の『ゲンジ先輩』であった…


――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ