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第44話「それは、とても懐かしい声だった」


――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


 意識が途絶える瞬間。

 私は、ただひたすら考えていた。

 これでよかったのか?

 こんなのでよかったのか?

 結局、私はミクのことを理解することができなかった。

 彼女が何を望んで、何に悩んでいるのか。

 友達なのに。

 何もできなかった。

 意識が途絶え、考えることもできなくなる。

 臆病で、繊細で、逃げることばかり考えている卑怯者―

 そんな自分が嫌いだ。

 暗転する意識の中、私はひたすら自分を呪った。



 真っ暗な意識の底から。

 その声は聞こえてきた。


 それは、とても懐かしい声だった。



『これで、本当にいいの?』

 …いいわけないよ。



『こんなことで、終わりになってもいいの?』

 …嫌だよ。すっごく嫌だ。



『だったら、まだやることがあるんじゃない?』

 …無理だよ。だって―



『だって?』

 …私は、きっと何もできない。臆病で、心が弱くて、逃げることばっかり考えて。そんな自分が、本当に嫌い。



『ははっ。昔っから、キミは後ろ向きだよね。ウチが死んだ時だって、勝手に自分のせいにしてたし。身を挺して守ろうとしたウチの気持ちはどうなるのよ』

 …それでも、できることはあったはず。

 …私は、何もできなかったんだよ。



『あのね~。反省はいいけど、後悔は良くないよ。今は目の前のことを精一杯やりなさい。傷つくことを恐れず、何かを失う恐怖に負けず。例え、努力が無駄に終わっても、前を向く精神は必ず人を前進させる』

 …前進?



『そうさ。自分可愛さに逃げてばかりいたら、何も手にすることができないよ。自分の身を切る覚悟がない奴が、何かを得られると思わないこと。傷つくことを恐れるな。傷ついて、傷ついて、ボロボロになっても、なお手を伸ばし続けろ。そうじゃないと、本当に欲しいものが現れた時に、手を伸ばすことが怖くなってしまうよ』

 …私にできるかな。

 …こんなにも弱いのに、そんな強い生き方。



『ははっ、何を言っているんだい。キミが弱いのは百も承知だよ。でも、だからこそ、ウチは言っているんだ。当たって砕けろ、だよ。建前なんで取っ払って、なりふり構わず、自分が思うままに行動してみたら』

 …うん。

 …ごめんね。いつも迷惑をかけちゃって。



『いいよ。だってキミは、たった1人の家族だもの。キミの幸せが、ウチの幸せなんだから』

 …わかった。

 …もうちょっただけ、がんばってみるよ。



『うん、ガンバレ!』

 …ありがとう、姉さん・・・


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