高速道路にて
そいつと俺は、高速道路を車で走っていた。
深夜で、かなり空いていた為、運転をしていた俺はかなりのスピードを出していた。
不意に、助手席に座っていたそいつが話し掛けて来る。
「心中って、不思議だと思わないか?」
「何でだよ?」
「だって、自分の好きな相手を殺す訳だろう? 変じゃないか」
「そうか? 自分と好きな相手と一緒に死にたい。分かる気もするけどな」
「でも、逆もあるだろう?」
「逆?」
「憎くて仕方がない相手を道連れに殺そうとする。そういうのもあるだろうよ」
「まぁ、確かにな」
「同じ行動を、180度違う感情を抱いている相手に対してするって事になる。これは不思議だと俺は思うね」
「ほーん。まぁ言いたい事は分かるよ」
「愛憎両極性って言うけどな、これはそれとも違う気がするよ。相手を殺そうとする想いも、愛そうとする想いも、もしかしたら、心の奥深い部分では区別がついていないのかもしれないな」
「それは、あまりよく分からないな」
「どちらも同じ様に"刺激"だって事さ」
「………やっぱり、よく分からない」
「まぁ、良いけどな」
「………。」
「ところで、さ」
「なんだよ?」
「もし、隠しているだけで、今俺が心の底から人生に絶望していたとする。それで、さ。誰か一緒に死んでくれる人間を密かに求めていたとしたら、お前はどうする?」
「ははは 何言ってるんだよ? 俺には、お前から憎まれる覚えも、愛される覚えもまるでないぞ」
「もちろんな。でも、それこそ、今の俺には区別がついていないのさ。誰でも良いから他人を求めてる。"刺激"であればそれで良い。そういう状態だとするのさ」
「笑えない冗談はやめろよ。今この状態だったら、幾らでも心中する方法はあるじゃないか。どうする事もできないよ」
「そうだよな。本当にそうなんだよ……」
深夜の闇の中を、車は高速で走り抜けていく。




