≪Prologue≫
”魔力≪マナ≫”。
それはこの世界【ラウスブルグ】に生きる限られた人間に宿る超常的なエネルギーである。
この≪魔力≫を得た人間の多くは、生まれてから数年―5歳くらいまでに、その身に宿す≪魔力≫を感じ取ることができるとされている。
そしてその身に宿す≪魔力≫は身体の成長と共に、≪魔力≫の質と保有量も向上する。
≪魔力≫を宿す者が成長し15歳になる頃には≪魔力≫はその宿す人間の性質や本質に影響を受け変化を起こす。
その変化した≪魔力≫はその者にいくつかのカテゴリーの資質を齎す。
それを―”階位≪クラス≫”と呼び称している。
≪階位≫には二つの分類に分けられる。
一つは≪基本階位≫。
殆どの≪魔力≫を得た人間はこの≪階位≫に該当する。
≪基本階位≫は細かく分けて【七つ】の≪階位≫に分類されており、武器を用いた戦闘タイプである階位が五つ。そして魔法を重点的に用いる階位が二つである。
そしてこの基本となる7つの階位以外の≪階位≫は≪特異階位≫と呼ばれている。
7つの基本階位。
≪第一の階位≫―≪”剣士”≫―。
その名称の通りで、この≪剣士≫の者は【剣】の適性を受ける。
今まで剣を握ったことのない人間でも【剣】の適性を受ければ達人と呼ばれるレベルに成れる。
そして≪”剣士”≫の者は、その手に握る剣に≪魔力≫を浸透させ光の剣の様に纏う事が出来る。これにより【剣】の斬撃力、強度や耐久度が上がり、≪魔力≫以外のものでは傷一つ付けることは出来なくなる。故に≪魔光斬≫を防げるのは≪魔力≫の帯びた物のみなのである。
また≪魔力≫を身に纏う事で鎧とする事も出来る。
身体能力も良く、【剣】に関した特殊な能力を秘めるものが多く、戦闘面においては≪7つの階位≫の中では一番バランスが高いとされ、一番この≪階位≫を望む者が多い。
≪魔力≫に対する”耐魔力≪レジスト≫”も高い。
高い≪耐魔力≫に≪魔力≫を身に纏う鎧の効果もあり、魔法を主体とする≪階位≫には優位に立ち回れる。
≪階位能力値≫…ランク【E~S】
筋力:【B】 敏捷:【B】 防御:【B】
魔法力:【D】魔防:【B+】 幸運:【C】
≪階位技能≫
○剣術―剣適性
○魔光斬
○魔装鎧
○耐魔力【A-】
○身体強化
≪第二の階位≫―≪”騎士”≫―。
この≪騎士≫は【槍】の適性をその者は得られる。そして得物である【槍】に≪魔力≫を≪剣士≫同様に纏わせる事が出来る。
この≪騎士≫の特質は身体能力、特に”敏捷”の能力値が高い事にある。
そして『乗り物』であればどんなものでも”乗り手”として乗りこなす事が出来る≪騎乗≫を会得できる。
≪剣士≫程ではないが、≪魔力≫に対する”耐魔力≪レジスト≫”もある。
高い”敏捷”に≪騎乗≫を合わせた突貫力のある階位である。
≪階位能力値≫
筋力:【B】 敏捷:【B+】 防御:【B】
魔法力:【D】魔防:【C+】 幸運:【C】
≪階位技能≫
○槍術―槍適性
○魔槍技
○騎乗
○身体強化―敏捷強化
○耐魔力【C】
≪第三の階位≫―≪”弓士”≫―。
その者に【弓】の適性を与えられる。矢に≪魔力≫を付加させ破壊力を上げる事が出来る。また≪魔力≫を属性変化させ”炎”や”雷”と言った魔法を込めて放つ事が出来る。
後方系の階位で身体能力そのものはそれほど高くないが、身軽さによる敏捷がよい。また最大の能力が≪真贋≫である。
この≪真贋≫はその者の視力を向上させてくれる。その者の視力が殆どない場合でも数キロ先の物を見通す事が出来る様になる。また視力がない場合もである。
≪剣士≫や≪騎士≫に比べれば低いが≪耐魔力≫を有している。
≪階位能力値≫
筋力:【C】 敏捷:【C】 防御:【D】
魔法力:【D】魔防:【C】 幸運:【C】
≪階位技能≫
○弓術
○魔矢
○真鴈
○身体強化
○耐魔力【D】
≪第四の階位≫―≪”密偵”≫―。
七つの階位の中では戦闘ステータス其の物は低いが、隠密能力に優れており、周囲の気配を感知したり、気配を遮断する技能を有している諜報においては優秀である。
罠の存在を感知し把握したり、鍵を開けたりとトリッキーな能力が目立つ。
また戦闘面は低いと言ったが、気配を殺して相手に近づき寝首を掻くなど、相手の裏を取るのが上手い。
武器はナイフなど暗器の扱いに秀でる。
耐魔力は低いので魔法に弱い。
≪階位能力値≫
筋力:【C】 敏捷:【B+】 防御:【D】
魔法力:【D】魔防:【D】 幸運:【B+】
≪階位技能≫
○暗器術
○気配感知
○気配遮断
○解錠
○身体強化
≪第五の階位≫―≪”楯士”≫―。
別名を”絶対守護”とも呼ぶ階位で、その者に【楯】の適性を与えられる。
攻撃能力は”密偵”より少し上くらいだが、一度護りに重視すれば最強の盾となる。
物理、魔力に対して抵抗力が高く、守護結界を張る事も出来る。
戦いでは最前線に立ち護りに就く機会が多い。
≪階位能力値≫
筋力:【D】 敏捷:【C】 防御:【B+】
魔法力:【D】魔防:【B+】 幸運:【C】
≪階位技能≫
○楯術
○物理耐性
○耐魔力【A】
○身体強化―防御強化
○防衛術―結界術
≪第六の階位≫―≪”治癒士≫”―
七つの階位の中で魔法専門の階位で、七つの階位の中で唯一の”治癒”の魔法を行う事が出来る。
攻撃能力はほぼ皆無と言えるが、死の一歩手前の傷ですら完治に至らせる事が出来る”奇跡”の階位とも呼ばれる。
”状態異常”に対しても抵抗力を有しており、また最も高い≪耐魔力≫を有している。
この≪階位≫は珍しく、治癒士に目覚める人間の数は少ない。
≪階位能力値≫
筋力:【D】 敏捷:【D】 防御:【D】
魔法力:【B+】魔防:【A】 幸運:【B】
≪階位技能≫
○治癒魔法
○状態異常耐性
○耐魔力【A】
○魔力回復
そして最後の――七つ目の≪階位≫。
その名称は―≪”魔術士”≫と呼ばれており、七つの≪階位≫の中では最弱と扱われている。
その理由は、この≪魔術士≫の特色にある。
≪魔術士≫の特徴は己の≪魔力≫を魔法エネルギーに変化し属性変化を用いる事で大規模の魔法攻撃を行う事にある。
属性魔法により多種多様の運用と高い魔法攻撃能力を有している。
しかし≪魔力≫を保有し、≪階位≫を持つ者には≪魔力≫に対する≪耐魔力≫を有している。
だから相手の≪耐魔力≫を超える魔法を発動するためにはより強く高い攻撃力を有する魔法を繰り出さなければならない。
しかし強い魔法を使えば、それ相応の≪魔力≫を消費する。
≪魔力≫の保有量が少ない者であれば魔法を数発撃てば≪魔力≫が尽きてしまい≪魔力切れ≫を起こしてしまう者も少なくない。
それ故戦いの場では≪一発屋≫と卑下する者も多い。
また、戦闘能力は≪魔力≫による身体強化を行えるが、戦闘タイプの≪階位≫には及ばないと言える。
≪階位能力値≫
筋力:【D】 敏捷:【D】 防御:【C】
魔法力:【A】魔防:【B+】 幸運:【C】
≪階位技能≫
○魔力変換―属性変換
○即時詠唱
○耐魔力【A】
○魔力解放
+
「…えぇっと、はい、君の≪階位≫は、≪魔術士≫メイガスですね!」
そして……この物語の主人公である白髪の少年は、≪基本階位≫の中で不遇の扱いである≪”魔術士”≫であると、その日に受けた入学試験の場にて試験官によってそう宣言された。