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二日目のお茶会


「まいったなぁ、もう」

 サラに髪を梳かれながら呟いてしまった。

「お話、うまくいきませんでしたか?」

「一度は仲直りしたんだけど、もっと悪くなったかも……」


「旦那様、頑固だから。頑固でないとやっていけませんものね。伯爵の称号と領地を継いで5年お独りで」

「あの、ご両親は?」

「お母さまを早くに亡くされ、跡継ぎだったお兄様も逝ってしまわれて。先代は旦那様が成人するとともに全てを渡して、聖地巡礼に」

「そう」


「私は年下ですけど、メルとルツは二つ三つ上なので、子どもの頃は旦那様をからかって遊んだらしいです。あの氷室に閉じ込めたり」

「あら」

 ルツは給仕長の名前だと思うのが妥当だろう。

 そして旦那様は、ちょっと内気で淋しがりな男の子だった気がする。


 好き? 嫌いじゃない。優しい。

 でも身分の低い者は同じ人間じゃないみたいな言い方した。

 郷に入れば郷に従え?

 時代が時代ならそれに倣え?

 民のことなど考えなくていい?

 いや、違うだろ。


「私は倒れる前、もっと旦那様と仲良しだった?」

 この問いは危険だ。そう思っても口にしてしまっていた。


「さあ、それは奥様しかご存知ないことです。旦那様は侯爵をお訪ねの間に、遠くの伯爵領から来られていた奥様を見初められて、結婚式もご実家のほうで済まされてからこちらに来られたので」

「へ? ウソ……」


「到着されたとき、もう体調を崩されていて」

 これは想定していなかった。その場を取り繕った。

「私、ずうっと前からサラとは仲良しだった気がしていたわ」

「あら、嬉しい」


 その日のお茶は、ブドウ棚下のパティオでだった。パティオがよくわからなかったけど、行ってみて、戸外のお茶する場所だと理解した。平らな石を敷き詰めその上にテーブルとイスが置かれている。


 四人のお茶飲み仲間を見廻した。

 誰も私が入れ代わる前のダイのことを知らない。

 となれば、いろいろな質問をしても大丈夫だ。

 

 昨晩、ベッドの上で自分の身体の見えるところを確認した。右肘の痣、ふくらはぎの黒子、記憶通りにあった。私の身体だ。

 だから乗り移ったんじゃない。身体ごと入れ代わった。


「ね、みんなはご主人とか彼氏はいるの?」

 ベックスがブーッと吹き出した。彼女は吹き出しやすいタイプだ。

「旦那様との夜に問題あり?」

 袖で口を拭いながら目をきらめかせた。


「みんなのことが知りたいの!」

 私は元来この手の話題は苦手だ。すぐ赤くなってしまう。


「ベックスの旦那さんは(うま)番頭(ばんがしら)。メルのは執事。私の直属のボスです。私の夫は街に住んでいて、サラは、どうなのかしら?」

 給仕長のルツが手短に説明した。


「私は奥様の受け入れやらご病気で忙しかったから……」

「ごめんなさい、めんどうかけたのね」


 最年長のベックスが豪快に笑う。

「いいんですよ、奥様。サラは最低3人は崇拝者がいて、焦らして楽しんでるんですから」


「決め手にかけるのよ。3人とも」

「きゃあ」

 笑いがまた笑いを呼んで庭を抜けていく。


「街、もあるの?」

「ええ、旦那様の領地には何でも揃っています」


「ルツのご主人は何をしているの?」

「仕立て屋です」

「お洋服を作る?」

「そうです。旦那様がドレスをたくさん注文されて、大忙し」

「殆ど身一つでお輿入れされたから……」

 サラが付けくわえた。


「行ってみたいな」

「うちの人が夕方迎えに来ますが、旦那様が外泊をお許しになるかどうか……」

 ルツは通いだ。


 ベックスが夫婦の秘訣を授けるようににやけている。

「旦那様におねだりするのが一番ですよ」

「そう、ね」


 旦那様と行くと上から目線で人々の生活は見えなさそう、と思ってしまった。

 先程の言い合いも気まずい。


「まあいいわ、旦那様本人が断ってくれたらルツと行けるんだから」


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