14話
「次はどこ行きますか。」
リボーン地点は教会横の墓地だった。
骨だからね。仕方ない。
あと、教会近くにいるからライフ減るということもなかった。アンデット系でない。
種族的には精霊系。大元の区分が違うのだから浄化される事はないのだろう。
もしかしたら、町に入れるしスケルトン、アンデット系種族じゃないのかもしれない。
「買い物は?」
「この町の全体図。バームクーヘンのような形なんです。
さっきの噴水がある広場が焼くときの棒の部分。そこから外側に行くに連れて商業エリアから住宅エリアに変わって少ない農地エリア。教会は東西南北に1つづ。ここは北エリアの教会ですね。
貴族エリアというのはない。一周すればもとの場所に戻る仕組みですね。
そもそも国ではなく自由貿易連合って言うらしいですよ。複数の名主による経済協同体ですので別荘は合っても住居はない。ついでにいうとここ観光地でもないから別荘はない。そうです。」
なるほど。買い物をするにはどうしても真ん中に近づいてしないといけない。いま、真ん中では戦闘中。
戻ると巻き込まれる可能性があると。
「物凄く詳しな。」
「チュートリアルの身分証明書の入手で冒険者登録したときに受付の人に聞きました。
地図は500ジェニーです。初期予算の1割。
他にチュートリアルには戦闘とフレンド登録。設定の変化。装備の変化。ですね。
基本的な事をしてお金と僅かな経験値を稼ぐ目的なのでは。変更だけで500ジェニー増えますから。」
「なるほどね。ボーナス報酬を付けてチュートリアルの義務化か。」
「慣れている人ほど飛ばしますからね。フィールドにいる人達とか特に。」
外にいるすべてのプレイヤーがそうではない。1時間以上過ぎてるし。それでも大半がそうだろうな。
スタートダッシュ勢はいるし。
説明書必要なところしか読まないし。配線なんてどのメーカーもだいたい一緒。
ところで、さっきからウィンドウを見ているのだがチュートリアルの項目がない。これいかに。
「どうしました。」
「人気のないところって何処か。」
「任せてください。」
物凄く嬉しそうだな。
好感度MAXを通り越しているからな。
不思議だ。
でも、残念。違うのです。
目的を言ってないうちに手を引かれて行ったのだから僕は悪くないよね。
勘違いはあっ。悪い。そうですか。
悪いのですか。
難しいね。レベルがないから。多分、今後もレベル上がる予定はない。
「ここです。」
「宿?」
「宿です。別にそういうのじゃないですよ。そもそも、年齢で弾かれますから。
ただプレイヤーがログアウトすると体は残るので宿泊施設が必要なんです。外の活動でログアウトしてログインしたら場合によっては死に戻るそうですから。
あとここ普通の宿と違って運営指定の宿です。中にはいると不思議空間で部屋数が外見に収まらないほどあるんです。」
プレイヤーの数だけあるということではないと思う。プレイヤーの店だけが営業しているわけではないし。そもそも、住民経営の店の方がいまは断然多い。
現地で宿を確保できなかった場合の救済措置かな。
「そうか。ありがとう。」
噴水広場に戻って来た。
プラグの回収終了。
戦闘はしていないからすべて回収した訳じゃないな。買い物はこれから出し。
「とりあえず入るか。」
「はい。」
「いらっしゃいませ。」
出迎えてくれたのは。、真っ赤な髪を後ろで束ねたテレビでみたタキシードを着た女性。蝶ネクタイではなく普通のネクタイ。170ありそうな身長。
ふわっと言う単語が当てはまらない。
顔立ちがキリッとした印象を受ける。
胸部装甲はある。
仕方ない。男だもの。そりゃ見るさ。
「看板娘じゃなくて看板執事か。女性だから看板娘でいいのか。どう思う。」
つまらない事を聞いてみた。決して、装甲から目を反らすためではない。不自然じゃないはず。全体見えてたら確認しても不思議じゃないよね。
企業面接する人にはそういう人いるって聞いたことあるし。
「あ、すいません。」
聞いてないようだったから手を叩いてみた。意外と大きな音がでてびっくり。
よかった他に客いなくて。
そして、ライフが2も減った。
ゲージが急に出てドットで減ってすぐ消えた。
戦闘エリアじゃないのだかね。
え〜。こういうは普通カウントされないじゃ。
「こんなところで何をって、格好からすればバイトですか。いらっしゃいませ。って言いましたから。
意外と暇なんですね。」
また知り合いか。
ゲーム開始からよくエンカウントしてる。
リアルバレしないように髪、顔いじるけど、最近だと髪と眼の色以外はわざといじらない人いるしな。
彼女はもしかしたらプロプレイヤー。
ないな。結の感じ的に。
「何処かでお会いしましたか。申し訳ありません。記憶にないのですが。」
「そう。それならそれでいいです。他に12体いるそうですからこういう事があっても不思議ではない。そう不思議じゃない。すっかり忘れてた。」
「えらいひとの知り合い?」
「立花の若君の親友の妹です。髪と目の色、目の形が少し違いますね。あと左目の泣きボクロがない。」
「あ〜。なるほど。知っている方ですか。場合によってはいると聞きましたが。開始して2時間も経たずに逢えるとは思いませんでした。」
「察するにピクトさんAIと同僚か。」
「そうですね。アレとは別方向の人格ですね。言い方がちょっと変かもしれませんが、アレが苦手にするタイプのガチで善人のような人ですから。全部が全部そうでないのですが。そのイメージが強いんでよ。」
結もとい悠木さんも執事AIさんのオリジナルが苦手なんだろうな。声が投げやりというかうんざりしているというか。
それにしてもいないからってあれ呼ばわりはひどい。本人いないけどピクトさんAIはどこかn。
「オリジナルモデルよりも聖人要素強いらしいですよ。」
ここにいたか。
「また出ましたね。ロリ。」
「失礼なこと言わないでくださいませ。大叔母様。」
隣に並んでいる人よりも低いが、ロリではない。また、という事はピクトさんAIか。
和風美少女って感じだ。落ち着いても見える。
「そうそうこんな感じだ。」
「騙されてますよ。さっきと中身一緒ですからね。」
そうだった。忘れるところだった。
「ここにいると言うことは来るのがわかってましたか。逃げる事が出来たのですね。」
「回収したからと言って特別な仕事はありませんからね。私としてはもう少し早いと思いました。が。」
こっち見た。
1時間前の空気は何処にやら。
ピクトさんモデルが行けないのかな。
「無茶はしないようですね。」
言っている事はわからないのだが。
そして、いつのまにかいなくなっていた執事。
時間帯での交代?
担当が決まっている事はないよね。
「立ち話しも難ですからこちらに。」
顔を見合せ、頷いた。
「どうぞ。」
「先に失礼。」
結は、案内された部屋を見渡す限り確認している。
片足を扉に付け閉まらないようにしているのは何かあったとき用かな。
フォローするように扉に寄りかかる。
それに気づいたのか。足が扉から外れていた。
「警戒の必要はありません。反抗心はあって、敵対や反逆じゃないので。聞いていたでしょう。」
「どうぞ。」
真ん中のテーブルの上を素通りさせると、抹茶のセットが出現はさた。茶菓子はキンツバと練り菓子。白い兎の形ではなく花の形の方が食べやすいだが。
言ったら変えてもらえるかな。
その前に面白がるかも。
そもそも作法を知らない。
さっきよりもずいぶん印象が違うな。
「さっきのはやめたのですか。」
「罰がない訳ではないので。」
「回収されたのは素体ですか。」
なるほど。うまい言い方をする。
この状態だと本来の性能を発揮出来ない。入れ物に対して能力が大きすぎる。未成熟なものに熟成したものを入れて急成長させて駄目にする。ということかな。
罰にならない、と言っているのだから間違っていないと思う。
そして、仕事はない。けど、この仕事をしている、とは言っていない。
「これも含めて罰って事かな。」
「正確にはさっきの彼女の手伝いが罰の一つになる、ですね。この状況は恩情と言うよりは連絡事項でしょう。
あの人基本的に親に似て甘いですが、迷惑料は、後程、可能なら利子付けて回収するタイプなので。」
「利子とるの?」
ノリのいい人、って感じがしたが。そこはいいところの家の子だから?
利害を考えない訳がないか。
「人を紹介して欲しいそうです。」
「人脈は何よりの宝?」
「それを扱う諸々の能力があってこそですけどね。現に名刺もらって放置っていうのが割りとあるらしいですよ。あのえらいひと。」
「なるほどね。」
それは利子を取る必要があるのか?
その情報を提供したであろう人がベースにあるAIさんは、会話に入る気はないようだ。
ニコニコしていて何を考えているのかわからない。
ピクトさんの方が人間味があった気がする。
「なんというか胡散臭い。」
「基本、その印象であってます。私自身事でなんなのですが、彼女よりも私の外用が全面的に出ていますから。自慢出来ない特技です。」
「あっ、あ~。なんかあったな。そんなの。」
その後の印象が強いので忘れていたが、そういえば初めはこういう状態だった気がする。
「あと、入り口での口振りからすると想定していたのでしょう。その変は彼女らしいです。」
「誉め言葉として頂きます。」
「そこは反応するのね。」
「模倣品としてはオリジナルに近いというのは誉め言葉です。」
「それ言っちゃうなか。」
「反応見いてるだけですから気にしないでください。」
それも言っちゃうなか。
それはそれで不安なんですけど。
「大丈夫ですよ。本当に見ているだけなので。何かすることは今のところはないはずです。まがい物を使用させた時点でないを否定していますが。彼女にとってそれは些細なこと。そうですよね。
ノーネイム。もしくは、エンプティさん。」
「ん? 何それ?」
新キャラかな。といいたいが、話の流れ的には彼女。
それぐらい僕でもわかる。第一この部屋に3人しかいないし。
そして、何が大丈夫なのかわからない。
「名前です。運営が付けたものではなく、彼女が付けたものです。
ノーネイムは、自分自身で見て、感じて、考えて、欲しいからあえてつけない。
エンプティは、意味そのまま。アンケートで人格を作っても所詮は借り物。本当の意味での中身が何もないに等しいからだそうです。
実際、本当の中身持っている人は少数ですからその他大勢は皆エンプティだと思いまけどね。
私としては嫌いな名前です。ただ、彼女が付けたのですから、たとえ私のアンケートつか」
珍しいな。悠木さんは得意ではない好きではないといった遠回しに否定する言葉を使うが、直接的な言葉を使うことはなかったと思う。僕が知っている限りでここまではっきりと意思表示をしたのはいままない。
「なるほど。そうか。だから、エンプティ。私への当て付けですか。いや、そもそも彼女に当て付けという考えがあるのでしょうか。そんな考えが思いつくとも思いませんね。」
なにやら独りで納得し、何やら考え出した様子。
これは声をかけていいのか迷う。
ここは誰も手をつけてないお茶を飲むべき?
「答えがないことを考えても仕方がないですね。」
自問自答が終わったようだ。
「失礼しました。さて、本来は、空白にして何も書かないというのが理想。元が人格設定なのだから個体名が必要、だから自分何りにつけてみた。というところでしょうか。この辺りは想像ですね。はっきりと言いませんでしたから。
それにしてもこんなことなら。アリスかパンドーラを強く推しておけばよかったです。」
アリスというのは有名な物語に出てくる主人公を思い浮かぶのだが。それかな。パンドーラ? パンドラかな。こっちも話に出てくる。最もこっちは悪い意味の方が多いけど。
「本が好きなの?」
「よく読んでますが本が好きで読んでいるというわけではないですね。実際、本のことを聞いてもあやふやなことがほとんどですから。アリス別らしいけど私には違いがわかりませんでした。」
内容を読まずに本を読む。流し読みをしているということかな。それでも何度も読むほど面白かった、だから好きなのかな。わからない。
「面倒くさい話になるのですが。彼女の興味を引くのは彼女自身の他に内容そのもので登場人物ではないのです。登場人物はエッセンス。それを発動するキー程度です。」
別に面倒な話ではないような気がする。本人が好きならナルシストな気もするがこの場合は置いておいていいのかな。
内容が面白いが登場人物はちょっとという人もいるし、すべての登場人物が好きという人もいないのだから普通なのでは。
そもそも、内容に興味を持つならそれを引き起こす登場人物にも興味を持つのではないのか。誰が何をしてどうしたっていうやつ。
そこに興味を持つそして一から一〇まで書いてあるのが好きなら本が好きになる気がするのだが。強引かな。
「事象を起こすために登場人物はいる。登場人物がいなければ事象は起きない。推理ものはその最たるものですね。行く先々で事件が起きますから。
たまたま事件があることろに主人公が行く。主人公がいるから行ったところで事件が起きる。突き詰めると鶏と卵の話になるらしいですよ。」
「あ~。そういうの。難しいことを考えるんだね。哲学者になれるね。」
答えがないことが答え。そういうのが好きなのだろう。
「結果的に学者になることはあっても進んでなることはないですね。なるとしたら、生物学や人間行動学でしょうか。物理学者という選択もあるかもしれませんが、何万歩譲るかわかりません。
そもそも物理現象興味がないです。」
「哲学じゃないの。」
原因と結果でそれまでの過程を証明するという点で物理になるのかな。ドラマで見た。
起きた現象が興味が興味深い、だったかな。
何万歩は、興味ないからか。
「一番ありそうなんですけどね。本人曰くイメージが違う気がする、そうです。本人しかわからないことなうえに多分本人もわかっていないことなので、他人が言うことが正しいのかわかりませんが。現状、彼女にとっての今この時にしか興味がないという感じですので。ついでに言うと後にも先にも興味ないですよあの子。
だから、文化そのものに興味があるとしてもより深く理解するために知識として研究するってことに向いていないらしいです。
広く浅くそれでいて興味のあることのみ。いまにたどり着くまでの原因と結果もそこから起こるも些細な事なんです。」
「よくわからないのだが。それは、普通の人のように思えるけど。」
「本来ならそうなるはずだったらしいんですけど。ただ、本人もわかってませんから。
現に彼女、考えているようで考えていません。その場その場で生きています。本人が言ってました。
そこに何故なにが入り本人で自己完結するという厄介な要素があるだけです。
それを外に出せばまた違うのですけれど。本当の自己満足。聞いてきたことあれでよかったって言うと最悪何だっけッてなりますから。だから、いま。」
「傲慢ってこと。」
それ以外ならありそうな気がるが。それだとえらいひとの反応はおかしい?
「そうなんですけど、傲慢というほど傲慢でもナルシストでもないです。そもそも傲慢は彼女が最も嫌うところです。
普通に時と場合を判断できると思います。
一般的な家ならもしかしたら、と思うこともあるそうですがそれも違うらしいですよ。なんだかんだで頭がいい人で一般とは異なる世界で育ちましたから。
私にも言えることですけど。想像の想像というべきなのか。良い悪いは別にして、そういう世界で育った者の悩みという人もいるようですよ。ないことに憧れるですかね。」
持っている人は持っている人で悩むってわけかな。
なんとなくわかるようなわからないような。立場の違い。それなら面倒って固定観念?
「つまり、この子にはifを体現してほしいってこと。・・・・・・あれそれだと登場人物がメインじゃない。」
「ifはさておき、そこに絡むのがアリスとパンドーラです。
アリスは憧れが大きいとらしいのですが。礼儀作法を小さいころから教え込まれた人にとって、人の機微というか、出来事に対して感情表現がダイレクト、かわるがわる展開、この辺はどの作品でもありそうですけど。他の作品よりそれが魅力的に思えたらしいです。女性主人公だからでしょうか。
そこで自分もしてみたいなら家をこっそり出て外で遊ぶなんてすれば終わるはずなんですけど。子供にっては冒険ですからね。けど、彼女はそれをそのまま体現するにはという考えを持っちゃったらしいですよ。
で、そうなる為にはそう行動する状況が必要。それを引き起こすには何が必要かって方向に行っちゃったらしいです。
それが次第に内容そのものに焦点を当てるようになって人の考え行動よりも先に内容そのものを考えるようになったそうです。
シュレーディンガーの箱ってありますよね。猫と物数個入れて中がどう変化しているかは開けるまで分からないって実験。それにも興味持っちゃって、その結果、何に、どうして、が一番の興味になって、誰が、そうなったには興味はそれほどあるわけではないになった。それで極めつけがパンドーラの箱。
蓋を開けたら厄災があふれ出し世界が混乱したって話ありますよね。それぞれ人がいるのだから考え方もそれぞれ。なら、どちらにしても争いが起こる可能性はあるのでは。掃除しなければ衛生上悪い年単位で進めば可能性としてはいつか病気にるかもしれないことがある。蓋を開けた場合と開けない場合でどのくらい変わる。その分岐はいつでそれは下地があったからの必然か蓋を開けたことによる偶然か。となったらしいですよ。人はトリガーを引く要因ですね。」
「考えが崩壊して再構築しての繰り返しでわからなくなったと。目的と手段が逆になり目的を求めて手段を優先して目的をないがしろにし?」
熱中しやすい人にありがちなことだったかな。一つのことに集中しすぎて他を忘れる。手段が完成した目的を忘れているから終了かな。いつ、ではなく。いま、なのはそういうことなのかも。わからん。
それにゲシュタルト崩壊が重なって作り変えたか。それは大丈夫なのか。
「そうだと思います。だから、本人もわかっていない。になるのではないでしょうか。
単純なんだけど考えに考えた結果面倒に。頭良すぎたて私とは違った方向で爆発してんでしょうね。
カウンセリングもしたているしいけど特別に忘れ物が多いわけでもないですし。むしろ物覚えはいい方ですね。心に傷があるわけでも率先して誰かを傷つけたいわけでもない。けどねぇの状態らしいですよ。」
「なんかぐるぐる回っている感じがするな。」
結局、分かったようでわからないか。
「実際そうらしいですからね。目的と手段。手段と目的。それが興じて人間観察なんてこともしますしね。そのせいで私に興味持ちましたからね。彼女いわく、私はその対象から外れるらしいですよ。」
一言もしゃべらなかったのは事のためか。
となると一体彼女は。
「アリス。アリス・パンドーラ。それが私の個体名です。」
あ~。なんか面倒なことになりそう。ゲームが始まらない。
ゲームをするために回収とはいったい。
教えて、えらいひと。