10話
「ところで、君「ムスビです。縁を結ぶの結ぶでムスビ。」あ〜、はい。はい。」
悠木縁改めて、結さん。
名前繋がり決めたプレイヤーネイムなことはわかった。
「ってそこじゃない。」
「名前は大事ですよ。」
「ほら、こちらのコケシ?!」
「えっ、何でコケシ! なんで? あっ、別にコケシが悪いということではないですよ?!。」
面白いぐらいに混乱してるな。
「こんなことも出来ます。」
現れたのは市松人形。さっきのピクトさんから数えれば全部制覇したことになる。
2回目な僕でさえ、すげぇ、って語彙が崩壊する感想しか持たない。
それが、1回目ならなおさら。
頭に???が浮かび、ぽかーん( ゜д゜)とした顔しても誰も文句は言わない。
「な、な、」
なんだって〜、かな?
「なつみちゃん。面白驚き人間ですよ。撮影してネットにぃっ。」
「いたいです。っていない。」
「ごめんなさいです。」
正座をしながら項垂れる犬耳っこ。耳はたれ、尻尾は丸まっている。本気で反省している。
「5回目ですね。次死んだら称号がほんの少し強化されます。気をつけてください。」
それを無視して僕に声をかけるこけしAIさん。
「はい。」
イラッとしてやった。称号のせいで後悔はしている。だが、反省はしていない。
わりとクズな僕。
誰一人として同じ方向を見て話をしていない気がするのは気のせいだろう。
初回が5回超えたら。ずっと同じ回数なわけないから次は回数増えるはず。
増えるからといって回数が不明である以上油断できないけど。
「それにしてもすごい執念でしたね。」
AIさんが言う執念とは、手で扇がれ微かな風で動かされそうになるの中を留まって手を伸ばし頭を叩いたこと。
やればできるものなんだな。火事場の馬鹿力、というものだろうか。そういうスキルあるかな。もしかしてスキルつく?
「私なら逆らわずにそのまま流れます。怪我すれば貸一ですから。」
気づいていたけれど、いい性格をしているなAIさん。
「スキルと称号一つずつついてますね。読み上げますか?」
スキルはいいとして、称号?
行動に対してつくだったかな。いやな予感がする。
「それはいい報告なら。」
悪い報告なら後回しでいいや。棚上げ万歳。
「捨て身というスキルですね。効果は能力を瞬間的に向上できる。向上はレベル依存です。使用後は向上した能力値分がマイナスに」
「「えっ。」」
思っていたのと違う。
「一度使ったらゲーム時間で24時間できません。マイナスは6時間で解除。いくつか似たようなスキルがあるなかでも、自爆に次いで使い勝手がかなり悪い方のスキルですね。」
つまり、自爆が一番使い所がない、と言うことだろう。まぁ、自爆だからなぁ。
それよりも、
「それはいい報告なの?」
「自爆ってあるんですね。」
正座している犬耳少女の興味を引いた気がするんだけど?!
興味、関心を感じるところなんてないよ!
「ありますよ。自爆。一部の人たちには簡単ですが普通にとると取得条件がかなり難しいです。」
そうなんですか。と残念そうな空気を出している犬耳娘。
仮にそれが必要になる場面なんて漫画かアニメの再現する時だからね。
そもそもピクトさんは何で先に答える。
こけしで流されていったけど、動くの大変んだな。気を付けよう。
「このスキル自体は自爆と違って死にはしませんから。ライフは残ります。それに称号、命をかけたツッコミ、よりはましですよ。この称号いま作ったものですね。少なくとも私は知りません。称号の効果はなし。リアルタイム作成を確認。仕事しろ創造主様方。」
「なにそれ。要らねえ。」
結局、両方聞くことになった。
個人的には悪い報告しかないのだが。普通に使えるスキルが欲しい。
「あっ。先輩。私、称号もスキルもないですが、運営から回復薬もらいました。面白かったからおまけです。皆さんに内緒ですよ。ですって。」
使えないスキルより使えるアイテム。
内緒って何だろう。
皆さんじゃなくて、未菜さんかな。この子言っちゃったし。
「監視されている件について、の題でメールを送りたいのだが。」
「無駄ですけど。送るだけならいいですよ。」
無駄なんだ。
「じゃあいいや。」
「運営もそれだけ先輩に期待しているってことですよ。」
「いえ。どちらかというと私含めた管理タイプAIのデータとりの一環です。特に私は他の12体よりも特殊個体ですから。」
「あ〜。」
物凄く説得力がある。
監視の対象は僕ではなくAIさんだった。
こういうAIさんは嫌いではないが、ちょいちょい疲れる。
ところで、いまさらっと重要なことを言った気がするんだが。
いいのか運営。
「そうですか? 分単位でしか一緒にいませんが、別に特殊とは。変わっている程度ぐらいでしょうか。」
静かだったので無駄に気を使わせ気落ちしていたのかなと思ったら、違うことを思い出していたようだ。
人の事を言えた立場ではないが、僕もこの娘もどちらかというと変わっているカテゴリーに入る。
その分AIさんが言う特殊のハードルが無駄に高いだけのような気がする。
「んふふ。ありがとうございます。」
「お礼というわけではないのですが。レベルアップポーションを差し上げます。」
「マジで?!」
「マジです。」
「私は回復薬なのですが。」
「5本来ています。面白いものを見たからとありますが、このままだとずっとレベル0のままだからでしょうね。
動けないプレイヤーさんには運営側があらかじめ5本用意しています。
私や姉妹たちが状況を報告し渡される仕組みがありますから。連絡がこないことに不思議に思ったのでしょうね。」
「おい。データ取りはどこに行った。」
「私が持っているのと併せて15本です。」
「おい。」
「私も欲しいです。」
「そこ違う。」
何が、と言いたげにかわいらしく首を傾ける結さん。
可愛い。って違う。
「運営が5本って言っているのに15本なんだよ。」
「数が合わないから不思議に思えと、いうことですよね。・・・・・・はい。思いました。ところで、先輩興奮するとまた死に戻りますよ。」
うん。それはあるかもしれないが。感覚的にまだまだ余裕を感じる。
納得したように言うがなんか軽いな。
僕が心配しているのは、
「それもあるけど。違くて。運営が用意していない物は既製品じゃないかもしれないってことだよ。」
「あ~。そ「(・д・)チッ」、っち?」
あからさまな舌打ちが聞こえた方を見る。
「何か。」
平然としているピクトさんAIなのだが、
「顔文字が浮かんでますが。」
「他にも、( ゜Д゜)ハァ?、(´・ω・`)ショボーン、(ノД`)シクシクといろいろ揃えています。最近の技術はすごいですね。」
自身のことを他人事のように言う。そして、
「へぇ。すごいですね。」
この不思議環境に馴染んでいるように見えるのが1人。
言った言葉に抑揚がない。絶対興味ないな。
何故か僕が場違いな気持ちになる。不思議だ。
「「うぉっ」動かないでください。」
僕を結に投げ、僕たち二人をかばうように前に出るピクトさんAI。
シリアスな雰囲気なのに背中の、ここは任せろ(`・ω・´)b、という文字で台無しだ。
ピクトさんAIは左手をかざすように上げ光の輪を出した。
轟音とともに光の束がその輪にぶつかる。
後ろからだと空洞に見えたのだが。光の束から漏れた光が蛇が地を這うように輪の中心から外に飛ぶのだから透明で分厚い丸みを帯びたレンズのようなモノがあるのだろう。
魔法か。
ゲームの売りの一つであろう現象をこういう形で目の当たりにするとは。
初めは使う側が良かったのに。なんだかな。
光の束が細くなるにつれてピキピキと音が聞こえる。
見るとレンズに光の蛇が張り付いているようにも見える。罅か。
「ピキピキと音がするのであの跡はヒビですね。それに沿って道ができてますから、外に出る力が少なくなっているかもしれません。大丈夫でしょうか。」
「冷静なのな。」
「先輩が手中にいますから。」
手の中というよりは、お腹のあたりで抱きかかえられているのだが。
ちょっと気を緩めると全体的に柔らかい感覚があっ、て危ない。平常心。平常心。
「それにしても本当に必要なんですかね。あれ。」
「運営の遊び心なんだろう。」
細い光がなくなり輪の真ん中にハンマーのような鈍器で思いっきり叩いたと思うかのような凹みと蜘蛛が巣を作ったかのような罅が入るレンズ。そして、背中に残る顔文字。
汚い花火だなヽ( ´ー)ノ フッ。
誰だ考えたの。
「こんなところに顔を出さないで仕事をしてください。えらいひと。」
「ブーメランって言葉知っているか。「知りません。」(・д・)チッ。」
現れた真っ白いピクトさん。顔文字あり。
「流行っているだなあれ。」
「先輩考えるの止めましたね。」