第六話「可愛い(狂気)」
「痛いよもおォォォォォう!」
葛城は無視して刀を振り下ろす。
「イッ!?」
さらに振り上げる。
「痛いんだよもう!ねぇもう嫌だもう!ねぇ痛いぃぃぃもう!痛いよ!」
袈裟切りに刀を振るう。
「痛いんだよォォォ!」
さらにその三つを今度は速度を上げ、瞬時に繰り出す。
「や、やだやだ!やだ!やだちょ、痛い痛い痛い!やだああああああ!うう!ああっ!」
葛城は若干飽きたのか、ひでの顔を蹴り上げた。
「じゃあ俺はお前の仲間追ってひとりづつ殺していくから」
葛城はそうひでに告げた。
「ア~ボ……」
身動きは取れず、攻撃できたとしても触れることすら叶わない相手だ。
ひではすでに戦闘意欲を失っていた。
「遠乃ちゃんっていったっけ?あの子は殺し甲斐がありそうだ」
葛城は何気なくそういった。
「やだ……やだ……」
が、ひでは動揺した。
これを面白がった葛城は、ひでの髪の毛を掴み、思いっきり顔を近づけて告げた。
「おじさんねぇ!遠乃ちゃんみたいな可愛いねぇ、子の悶絶顔が大好きなんだよ!!」
心底楽しそうであり、間違いなく実行するであろう葛城に、ひでは戦慄を隠せない。
ひでは遠乃に対し恋慕に近い感情を抱いていた。
ゆえに、酷く動揺していた。
「やだ!やだ!ねぇ小生やだ!」
ひでは必死にもがいた。
今までの戦意喪失が嘘であったかのように必死の形相だった。
そしてほんの少し自由になった右手で葛城のスーツパンツの裾を掴んだ。
「離せよオイ!!」
葛城はそう吼えるとひでの右手を斬りつけた。
ひでの手はその痛みで裾を離してしまった。
「汚れるんだよ。スーツが」
そういい残して葛城は次の階へと向かおうと歩き始めた。