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悪源太  作者: 美作為朝
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1159年 12月 27日 昼過ぎ 大内裏から六条へ

 1159年 12月 27日 昼過ぎ 大内裏から六条へ

 

 義平が内裏を出ると、西の空には、黒々とした暗雲が立ち込めていた。天気は悪くなりそうである。義平は馬上靴で玉砂利を踏みしめ大股で歩いてくると景澄が轡を持っている"瑞雲"のところまでやってきた。

 "瑞雲"に騎乗すると、否が応でも義朝と駒を並べることとなる。

 父義朝は、命は下したものの信頼を殺したかどうか尋ねなかった。

 義平も、委細報告しなかった。

 親子共々轡を並べ押し黙っていた。

 義朝が兜の顎紐を締めなおすと告げた。

「これより、大内裏をいでて、六波羅へ向かう」

 隣で義平は黙って聞いている。一応南に向かうで安心ではあるが、清盛の軍勢が引いたとはいえ、京の辻々に伏兵がいるとも限らず、心配なことには 違いがなかった。

 義朝は大声を上げて、命を下した。

「帝をさらいし、悪漢、平清盛を討つ!!。いざ、六波羅へ!!」

「おう」

「いざ!六波羅へ」

「おう 清盛へ天誅をくださん」

「いざ、清盛を討たんや」

「清盛を誅せざらんや」 

 残りし騎馬は百騎もいるだろうか、騎馬武者、徒武者、いまだ付き従っている雑兵が次々と鬨の声を上げる。

「悪源太、おまえも声を上げぬか!」父義朝の乳母子の政清が義平の胸を拳でつき、促す。 が、義平は押し黙ったままである。

 兵の士気が高いのか、一族郎党皆がヤケクソになっているだけなのか、義平にも見当がつかなかった。

 義朝は勢をつけるためか、先陣をきって、馬を駆けた。騎馬武者、徒武者、雑兵が遅れまじと必死に続く。

 西の空には暗雲が立ち込めている、引き連れるは、父殺しの源義朝である、これこそ一族郎党皆を破滅へと導く、破滅への進軍かもしれない。

 義平は義朝のすぐ後には、続かず、轡を持っている、志内景澄に馬上よりそっと耳打ちした。

「馬を集めろ」

「えっ、」

「そこら辺中に死んだ武者が乗っていた馬が離れ駒になっているだろう、平家の馬でも構わぬ、できるだけ集めろ、馬を集めてから、六波羅へ来い」

「なんでだよ」

 もう義平は、父義朝を追いかけるため"瑞雲"に弓で鞭を入れていた。

「おまえを騎馬武者にしてやれるかもしれないからさ」そう言うやにこっと微笑むと義平はものすごい速さで"瑞雲"とともに駆出した。

 大内裏の朱雀門を出ると、丁度三条あたりになる。京の辻々は朝からの源氏と平家の戦闘でみな屋敷の門や戸板を締め恐ろしいほどの静けさだ。

 時折、物見か、逃げ遅れたのか、京の街を略奪しようとしていたのか、平家方の雑兵を見かけるが、義朝を先頭とする騎馬の集団が駆けてくると蜘蛛の子を散らしたように散り散りに逃げ惑う。

 伏兵は居ないようだ。

 義朝は京に仰向けになった状態として左側にあたる左京のほうにも志向しつつ、京の町々を南へと駆け下る。

 義朝の軍勢は、義朝を先頭に三条から、六角通り、蛸薬師、四条 綾小路、仏光寺、高辻、松原、万寿寺、五条まで下がってきた。

 義平は、五条通まで来ると、更に左に折れ、鴨川にかかる五条大橋まで一人軍勢を離れ駒を進めた。

 五条大橋の橋板が全て外されていた。

「さすが、平家の頭領、平清盛公、ぬかりないわ」

 義平は一人そう言うと、"瑞雲"の手綱を大きく引いて馬を取って返した。

「父上、五条大橋は橋板が全て取り除かれており申すぞっ!」そう大声で義朝に告げた。

 義朝は義平の方に一瞥をくれただけで、返事もせず、馬を駆けた。

 義平は、五条あたりで鴨川を渡り、数騎率いて鴨川東岸に出て清盛の側面を突くことも考えていたが、叶わなかった。

 河内源氏の軍勢は、ものすごい勢いで駆けていく、鍵屋町、銭屋町 魚棚、そして六波羅のある六条へと。

 このまま、三哲、七条、八条、九条、南京極大路から東寺と駆け、京を南へと駆け抜ければ俺の勝ちだと、義平は思った。

 しかし、六条では、五条大橋より驚愕の光景が待ち構えていた。

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