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悪源太  作者: 美作為朝
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1159年 12月 18日 京義朝屋敷

1159年 12月 18日 京義朝屋敷


 とにかく、京は寒い。義平は屋敷から出かけぬ日は屋敷の庭で志内景澄と遊び半分で刃を樫の木に置き換えた薙刀で打ち合っている。

 両者の得物は景澄は薙刀。義平は、木刀である。

「相変わらず、お前の大振りは治らんな」と義平。 

「おれみたいな大男は、手の長さを活かせって言ったのはおまえじゃないか」

「畑で草でも刈るつもりか、中に入られたらどうする」

「この柄の部分で殴りつける」

「出来ればいいがな」

 義平は、適当に景澄の打ち込みをポコンポコン音をたてて簡単にはらっている。

「おまえ、大体お武家をちょっと舐めてるだろう」

「えっ」

「お武家ってみんな甘やかされた、ガキ大将ぐらいに思っているだろう。それがぜんぜん違うんだな、ガキの頃から武芸だけで生きているんだぞ、それこそ、3つや4つから、木刀やら弓もたされて、稽古だぞ。泣こうがわめこうが、やめてくれぬ。泣けば泣くほどわめけばわめくほどぼかぼか木刀やなんかで殴られるんだ、自然と受け身とか、こうやると痛くないな、、とか正に体で覚えるんだよ」

 景澄の目が真剣になった。

「うちの義明殿なんか武辺ものの馬鹿正直だから、どれだけ厳しかったか、今でこそ、礼儀を覚えて岳父殿とか呼んでるけど、小さいころ、絶対殺してやるって思ってたから俺」

「えっ、そうなのか」

「だって、殺すしかないだろう、逃げる場所がまず第一ないし、相手は、武芸で鍛えてる荒くれ者だぞ馬で追いかけらるやつからどうやって逃げるんだよ」

 景澄が打ち込むのをやめた。

「どうして、逃げなかったんだ、どうして逃げなかったんだ?おれは荘園から逃げた」

「怖かったからかな、おまえは怖くなかったか、逃げる時」

「ちょっとだけ」

「いいなぁ、おまえは楽にできてて、おい、景澄あっちを見ろ、ほらあそこ

「えっ」景澄が言われた方向を見た隙に、義平木刀で景澄の頭をしこたま打ち付けた。

「ぎゃー、おまえは、ほんとうにずるいやつだな」

 子供のように義平が、声を上げて笑っている。

「前に言っただろ、簡単なお武家の法度、その一お武家を信用するべからず」

 その時、屋敷の濡れ縁に義朝が通りかかった。烏帽子から束帯まで一式揃えてなにやら慌てている。

 義朝を見咎めた義平に対し義朝が手招きをする。景澄はやや離れたところで義平に打ち付けられたところをさすりながら頭を下げ片膝をつく。

「これから、内裏に出仕いたし信頼殿に会う。義平、近う」義朝は声を潜める。

「はっ。なんでしょう?」

「清盛が帰京したそうじゃ、今報告があった」

「いつですか」

「昨日じゃ、六波羅に張らせておったものが知らせて参った。伊勢や伊賀の兵を多数引き連れておったそうじゃ」

「数は?」

「正確な数は知らぬ。相当な軍勢らしい」

 義朝の表情が冴えない。

「我等より上回っておるわけですな、10日も経てばそれぐらい集まるのでは」

「うむ、だがな、清盛のやつ信親殿を信頼殿に返してきおった」

 信親とは信頼の息子である。清盛は信親の室に自身の娘を入れていただけにとどまらず、半分人質として婿である信親をも六波羅に囲っていたのである。

「それも、4人の郎党を付けて、難波や伊藤の名のとおった豪の者どもじゃ。どう思う?」

「清盛公も、迷っておられるのでは?片方の婿の家族が片方をの婿の家族を軟禁しているのですから、どちらに着くべきか」

「人質を返すとは、降参という意味ではないのか?」

「さぁ?それでは伊勢や伊賀の大軍勢は?」

「軍勢を引き連れ、我等に与力するのでは、ないのか」

 義平は少し馬鹿にしたような笑いを浮かべ

「父上も甘う御座いますな、大甘ですぞ。右衛門督様と同じでもう天下をお取りになったつもりですか」

 義朝は怒鳴りつけず、黙っている。

「人質を返すは、最後通牒とも取れまする。もう用済みだと」

「上皇も帝も我等が抱えておるんじゃぞ、それを清盛は攻むるというのか」

「それがしなら、迷うこと無く攻めますね」

 黙っている、義朝。

「清盛公が現状を打破出来る手段は他にはないと思いまするが」

「お前は、帝や上皇をなんとも思わぬ変わり者の悪源太じゃ参考にならん」

「最悪の予想を申したまでにて、他意はございませぬが」

 義朝の顔が更に曇った。


 これで、二勢力の大軍勢が入京していることになった。

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