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悪源太  作者: 美作為朝
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1159年 12月 9日 京 義朝京屋敷 その4

1159年 12月 9日 京 義朝京屋敷 その4


「それと、此処から先は、御人払いをおねがいいたしまする」

「ほう、構わぬが、みな調度良い折じゃ、下がってくれぬか、それに本日は皆の衆、誠にご苦労、大儀であった」

 今回の事変に参画した、藤原信頼ふじわらのぶより一派の武将たちが、酔いが回っているせいなのか、ゆっくりとたちあがり三々五々広間をどかどか武具をがちぁがちゃといわせて出て行く。

 義平は、いちいち振り返って、全員が出たことを確かめない。

「もういい良いぞ、申せ」と義朝よしとも

鎌田政清かまたまさきよの叔父上だけ別の間に下がられたのでは、人払いになっておりませぬが」

目聡めざといのぅ、じゃあ政清を呼ぶか」

「いえ、このままで結構。、先ほどのこの義平が大刀を握りしめたる一件ですが」

「構わぬ、武家の習いじゃ、このわしが、保元の折、父為義ためよしを斬ったことも存じておろう誰がそれを強いたと、思う、えっ、清盛きよもりじゃ」

 義平は答えない。

「合図は、坂東衆が出すつもりだったのであろう」

「どうか、せめはこの義平一手に、坂東衆にはお咎め無きよう、御取り計らいくださりませ」

「わかっておる、しかし、いまここで斬りかかったら、知らんぞ」といいにやりとする義朝。 

「政清の叔父上が飛んで参るのでしょう。この義平それほど阿呆ではございませぬ」」

「そなたの言うお武家の国じゃがな、わしの代では無理じゃ、そなたらが頼朝などともに創り侍れ、それに武家の習いというたように、その方も十二分に気をつけよ、頼朝よりともや幼き希義まれよしあたりがある日突然切りかかってくるぞ」

「はっ心得ておりまする」

「まだあるのか」

「はっ、為朝ためともの叔父上の件にて」

「おおっ」義朝の眼が光った。

「為朝の叔父上が、保元のおり、父上を見逃してやったと仰せでしたが、誠でございましょうや」

 途端義朝の表情が曇る。

「こらーっ、誰が言うとったんじゃ?そんなこと」

「為朝の叔父上、その人です。まだありまする。為朝の叔父上が保元のおり、父上の兜のびょうだけを射っておられたのは事実ですか?」

 義平にとって、為朝はまさに英雄である。

「こらーっ。その方、直接、逢うたのか、為朝と」

「はっ、伊豆大島に流さるるまえに、伊豆にて、お逢いいたしましてございまする」

「なんと」

「しかし、右腕のけんを、、、」

「言うな、存じておる、、あやつものう、もうちーとかしこければの、為義ためよしの親父殿についてはがないと、何度もそれこそ死ぬほどいたのじゃが頑固での」

「為朝の叔父上は船で、琉球へ渡りそこをべると、申しておられました」

「リュウキュウ!?」

「はっ、九州のまた西の果てにある島々だとか、九州は保元の前に平定したのでつまらぬと仰せでした」

「なんと、、さもありなんじゃなあいつなら、我が弟にして誠の天下無双ぞ、人じゃないくらいに思うておいたほうが良いぞ」

「西の果てより大船団とともに攻め上って参りまするぞ、為朝の叔父上が」

「少し、怖いな」

「まさしく、呂布りょふその人でありまする」

「だれだそれ?」

からの国の人です」

「ちなみに、右衛門督様は、安禄山あんろくざんと噂されておりまする」

「誰だそれ?」

「唐の国のさらに西の方の砂が海のようにある土地の人にて」

「どんなやつだ?」

「知らぬほうがはなでございまする」

「もう、その方も休め、わしも昨夜よりいろいろあり疲れた故、下がる、それより、そのほうが、意外に礼儀をわきまえ、さといことに驚いたわ、豪胆と武勇と変わり者じゃということぐらいしか聞こえて来なかったからの、上京したこと、頼りにしておるぞ、これから何があるかわからんが、しっかと働け」

 そう言うと、義朝は義平の肩をしっかり掴んだ。

「はっ」

 義平は怖い思いはたくさんしたが、最後は少し、家族のぬくもりを感じられて嬉しかった。

 義平が、大広間をふらっと出ると、となりの控えの間では志内景澄しうちかげすみが待っていた。

「おい、大丈夫か?えらい怒鳴り合っていたが」

「全然、大丈夫じゃない。二回ぐらい死ぬかと思い、四回ぐらい気負されて倒れそうだった」

「やっぱ都はすげーな」

「ああ、バケモノの住む街だ」

 二人は割り当てられている自室へ下がっていった。

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