マレー沖海戦
これから過去の話が主流となります。
1941年 12月10日 12:45 マレー半島沖
「敵艦発見!間違いありません!『プリンス・オブ・ウェールズ』と『レパルス』です!」
偵察員の報告に機長の胸が高鳴った。いよいよ猛訓練の成果を発揮する時だ。山本長官は戦艦ではなく、我々航空部隊に期待している、というのはすでに全航空兵の耳に入っている。
いまこそ、敵戦艦を海の藻屑にして、長官の期待に答えるのだ。
「よし、全機突撃!雷撃隊が来るまでに敵の対空砲を潰しておくぞ!」
雷撃隊は悪天候により、到着が遅れている。だが、自分達が一番乗りで爆弾を叩き込めるのは光栄なことではある。
なにしろ相手はあの英国海軍大戦艦『プリンス・オブ・ウェールズ』なのだ。
「思ったより対空砲火が激しい!目標を『レパルス』に
変更する!」
「敵艦転舵!」
「問題ない!3機で包み込むように落とせばあたる!」
隊長は冷静に僚機に指示をだし、爆撃した。
「1発命中を確認!」
部下の言葉どおり、『レパルス』から黒煙が上がっている。
「よし、仕事はしたぞ。」
その時、雲の間から多数の飛行機が飛び出してきた。
こんなところに敵機がいるわけがない。
無論味方の雷撃隊である。
「いいところにきたな。』
隊長は次々と降下していく雷撃隊を満足そうに見守った。
・・・・
『魚雷命中!火災発生!」
『プリンス・オブ・ウェールズ』の艦内は兵達が忙しく駆け回っていた。
しかし、トーマス提督は動じない。正直日本軍航空機の空襲は予想外だった。まさかこんなに足が長いとは思いもしなかった。
だが、彼は戦艦が航空機に沈められるとは考えてすらいない。
この『プリンス・オブ・ウェールズ』は チャーチル首相が
「絶対に沈みません。」
と太鼓判を押した艦なのだ。
「来るならこい、ジャップ。」
トーマスはかつての教え子達をにらんだ。