戦闘 1
1942年 1月25日 08:30 フィリピン沖
「艦長、敵味方識別信号より、ブルネイから
出てきた艦隊は日本海軍ではありません!
海上自衛隊です!」
「海上自衛隊だと!?」
彼は驚くと同時に少し迷った。
だが、
「トマホークを叩き込め。」
「艦長!自衛隊は友軍です!なぜ!?」
「馬鹿者!友軍だと!?やつらは日本軍だ!
そしてこの時代は日本とアメリカは敵同士だ!
そんなこともわからないのか!!」
砲雷士官はしかたなくトマホークの発射ボタンを
押した。
・・・・
「敵味方識別信号探知!米海軍の駆逐艦
『ジョンストン』です!」
海原は胸を撫で下ろした。これで余計な戦闘をしなくて済む。
はずだった。
「『ジョンストン』からトマホーク接近!」
海士のひとりから悲鳴が聞こえた。
「なぜだ!?なぜ米軍が攻撃を!?」
「わかりません!」
「くそ!とにかく迎撃するぞ!」
米駆逐艦からのトマホーク接近はすぐに天草にも
伝わった。
天草はひとつ決断した。
「この時代ではなにがあってもおかしくはない。
迎撃用意!」
海原は艦長から指示を受け、対空戦闘を始める。
「SM2発射用意!撃て!」
米駆逐艦からの3発のトマホークに対し、
『やはぎ』から5発のSM2が飛び出した。
5秒後、
「目標に命中!2発撃墜!」
だが、残った1発は容赦なく艦隊に襲いかかった。
「目標、『しょうかく』に向かって行きます!」
「『しょうかく』には1発も当てさせん!
127mm砲、砲撃用意!」
『しょうかく』がチャフを撒く。
『やはぎ』が『しょうかく』の前方に
布陣し、127mm主砲を撃ち込んだ。
「ダメです!砲雷長!」
「諦めるな!CIWS自動コントロールオープン!」
『やはぎ』についた完全自立のCIWS4基が一斉に
弾丸を送り込む。
海原たちはその様子を緊迫した様子で見守る。
「落ちろ!」
先人海曹の思いが通じたのかトマホークは
CIWSにとらえられ、爆発四散した。
「トマホーク全基撃墜を確認!」
ふう と海原は息を吐き出した。
若い海士が不安そうに海原に聞いてくる。
「砲雷長、なんで米軍が・・・・
米軍は同盟国ですよね?」
「確かにそうだ。だが、それは現代での話で
この時代では敵同士だ。」
海原は楽観的にはならなかった。
自分が楽観的になれば部下を失うことに繋がるからだ。
彼は迷った。しかし、最後は迷いなくこう言った。
「艦長、ハープーンの発射許可をください。」




