招かれざる客
1942年 1月24日 06:00 ブルネイ
第一護衛艦隊の各艦が一斉に錨を揚げた。
DD『ゆきかぜ』を先頭に『あがの』『のしろ』
『しょうかく』『やはぎ』『さかわ』が
続いた。
・・・・
『やはぎ』艦内
『全乗務員、よく聞いてほしい。』
スピーカーから艦長の声が聞こえてくる。
海原はCICでその声に耳を澄ませる。
『先日、空母『加賀』が撃沈された。
生き残った者の証言では、超高速の飛行物体の
ようなものが直撃したらしい。
このことから我々以外にもこちらの世界に
現代の軍艦が来ている可能性が高い。
各自警戒を怠らないように!以上!』
艦長の話が終わってもCICにざわめきは見られない。
"どんな相手、状況であっても訓練どおりに命令をこなす"
全員がそれだけを考え、海原を信じていた。
・・・・
同年 同月25日 08:00 太平洋 フィリピン沖合
「チッ、ジャップのやつら、逃げやがった。」
米海軍ミサイル駆逐艦『ジョンストン』艦長の
ジェームズ大佐は舌打ちした。
大統領から"航行の自由作戦"を命じられ、
横須賀から南シナ海を目指していたら
いきなり台風に巻き込まれて
気がつくとここにいた。
星座の位置などから何とか年代を特定し、
場所を把握しようとしたところに、帝国海軍の
ものと思われる空母が現れた。
乗務員の意見はやはり
"攻撃すべき"と"見送るべき"のふたつに割れたが、彼は迷わず前者を選択。
空母『加賀』を海底に送ってやった。
燃料の心配さえなければ残りの3隻も
すぐに海の藻屑だったと言うのに。
もともとジェームズ大佐は日本が気に入らないタイプの
軍人だった。
70年前は歯向かってきた癖に今は俺たちに
ペコペコしやがって。
アメリカがこの時代に連合していたイギリスも
元をたどればアメリカを支配していた敵国
だったので、大佐の理屈はおかしいが、
そんなことで考えをまげる人間ではない。
その時、
「艦長。新手の艦隊です。ブルネイから出てきました。」
士官に対し、ジェームズはトマホークの発射を命じた。




