異次元の戦艦
次回から昭和に戻ります
20XX年 12月12日 08:00 東シナ海
「撃った!機長!『薩摩』が主砲を撃ちました!」
興奮した様子で機長に状況を伝えるP-3Cの
隊員。
60km先でも双眼鏡ではっきりとわかった。
天が裂け、海が割れ、この世が終わるような
爆発的な轟音と共に『薩摩』から9つの
超音速の鉄の塊が飛び出した。
「いったい誰に・・・・!?」
隊員は双眼鏡を覗き状況把握に努めた。
・・・・
突然、震度6強近い揺れに見舞われた。
「ぐッ!みんな無事か?」
応答はない。艦長を除いたほぼ全員が屍に
変わってしまっていた。
「我々はパンドラの箱を開けたのかもな・・・・。」
刹那、中国海軍原子力潜水艦コードネーム『58号』は
浸水多量により、東シナ海の海底300mに消えた。
・・・・
20XX年 12月25日 11:00 日本総理官邸
「ここまで動きなしか・・・・。」
『薩摩』が現れてから2週間がたとうとしている。
依然『薩摩』からはなんの要求もなく、
魚釣島の日本の領海と公海の境界線に
眠るように停泊している。
「君、ここまでの情報をまとめてくれ。」
総理は防衛省から派遣されてきた陸上自衛隊の
二佐に命じる。
「は。まず、『薩摩』ですが、まったくもって
大日本帝国海軍とは関係ありません。
旧軍にあのような戦艦の記録はありませんでした。」
日本海軍が最後に建造した戦艦は『武蔵』であり、それに疑いようはない。
「それで、『薩摩』に人は乗っておらず、船体も
鉄ではなく、海水でできていることが判明
しました。」
会議室内がざわついた。
「海水だと!?バカな!?」
その中のひとりが信じられないと言った表情で
二佐に聞く。
「いえ、海自の哨戒機のサーモグラフィから
送られてきた映像から見て間違えありません。
さらに『薩摩』は中心からドーム状に強力な電磁パルスを展開しており、その出力は
人類が対抗できるレベルではありません。」
なにもかもが規格外の戦艦。
ひとつだけわかっているのは・・・・
この世のものではないことだった。




