進化する兵器
20XX年 12月12日 08:00 DDG『こんごう』CIC
「艦長。残念ながら中国軍機パイロットの
なかに生存者はいませんでした。」
艦長は無言で頷く。
どうやら、緊急脱出装置も電磁パルスによって
作動しなかったらしい。
対艦ミサイルはもちろん、中国軍機10機は
『薩摩』によって海の藻屑になった。
「艦長、いかがなさいますか?」
副長が艦長に尋ねた。
「このまま進んではこちらのレーダーも使い物にならなくなる。監視を海上保安庁に任せて
我々は離脱する。」
『こんごう』は面舵を一杯に切り、海域を
離脱した。
・・・・
「10機すべて墜落したか・・・・」
『薩摩』の右側25kmの地点で待機している
中国海軍原子力潜水艦コードネーム『58号』
の艦長は呟いた。
彼はついさっき中国政府から『薩摩』の撃沈を
命じられた。
電磁パルスは『薩摩』をドームで覆うように
展開されているが、海中には影響しない。
「ソナー、目標に変わりはないか?」
「はい、変わりは・・・・うん?」
「どうした?」
「も、目標がソナーから消えました!!」
さっきまで確実に捉えていた『薩摩』が
突然消えたのだ。
『薩摩』が移動した気配はない。
もし、移動したならば、うるさい旧式のディーゼルエンジンの音がここまで聞こえてくるはず
なのだ。
先程説明したとおり、電磁パルスの影響でもない。
「消えただと?もう一度探せ!」
ソナー員は必死に『薩摩』を探すが、見つからない。
「仕方ない。直線距離で確実に命中する
深度につけ!」
ソナーが使えない以上、魚雷を直進させて
命中させるしかない。
彼は艦を深度100につけ、魚雷発射の用意をした。
・・・・
「『薩摩』がレーダーから消えました!!」
那覇から発進したP-3C哨戒機はレーダーから
『薩摩』が消えたことに驚いた。
100km離れているため、電磁パルスの影響はないというのに。
「他の電子機器は正常です。」
「目視はできるんだな?」
「ええ。バカデカいおかげではっきりと。」
その時だった。
「機長!サーモグラフィを見てください!」
機長はサーモグラフィを見る。
なんと、そこに『薩摩』の姿はなかった。
「急いで司令部に報告だ!」
機長の顔から血が引いていく。
彼はこう言った。
「やつは、自ら進化するのか・・・・?」
『薩摩』が主砲を放ったのはそれからわずか2分後のことだった。




