新たな迷子
1941年 12月24日 11:00 東シナ海海上
「砲雷長!間違えありません!
友軍のDDV『しょうかく』とDD『ゆきかぜ』
です!」
『やはぎ』のレーダーにとらえられたのは
日本海軍の艦艇でも、アメリカ軍の艦艇でも
なく、同じ海上自衛隊、第一護衛艦隊に所属する
DDV『しょうかく』とDD『ゆきかぜ』
だった。
もともと2隻は『やはぎ』達と同じ艦隊に
いたのだが、『やはぎ』たちが台風に
巻き込まれた時は諸事情で米軍艦艇と行動して
いたため、こちらには来ていないと誰もが
思っていた。
「『しょうかく』より、信号!
【ヤハギナリヤ?】です!」
部下の報告に海原は答える。
「艦長に報告。信号返信!
【コチラヤハギ。此ヨリ停船ス。】」
その後、第一護衛艦隊の6隻は東シナ海の
ど真ん中で合流し、全艦がそろった。
・・・・
同年同日 12:00 『しょうかく』艦内
「いやあ、よかった、よかった。
いきなりこちらの世界に飛ばされて
どうなるかとおもいましたよ。」
満面の笑みで喜ぶのは『しょうかく』艦長の
空井翔一等海佐だ。
彼の話によると、『やはぎ』たち4隻との
連絡が途絶えた後、2隻に捜索命令が出された。
しかし、捜索開始から4時間ほどで例の台風に巻き込まれ、こちらの世界に飛ばされてきた
という。
DDV『しょうかく』は海上自衛隊初の
戦闘機発着艦型護衛艦だ。
最新の国産ステルス戦闘機、FX20を
30機搭載でき、中国海軍の空母『広東』とも
互角に渡り合える。
空井一佐はこの艦の運用のために航空自衛隊から
転属になったのだ。
「燃料は足りているか?」
群司令が問う。
「はい。問題ありません。」
空井一佐は元気に答えた。
新たな2隻の迷子を加えた艦隊はブルネイを
目指し、出発した。
皆様ご存じのとおり、
連合艦隊の海原参謀は海上自衛隊の海原砲雷長の
曾祖父です。




