説得
1941年 12月24日 10:00
「もやい放て〜!出航用意〜!」
第一護衛艦隊の4隻が一斉に錨をあげた。
目的地はブルネイである。
ブルネイはフィリピンの西にある都市で、1944年10月のレイテ海海戦の際に連合艦隊の主力(栗田艦隊、西村艦隊)が出撃した場所で有名だ。
終戦時には『高雄』や『妙高』と言った
日本海軍の巡洋艦が停泊していたこともあり、
また、1944年ごろまで戦闘に巻き込まれる恐れがないことから、絶好の場所と言えた。
「両舷半速、よ〜そろ〜」
食料と燃料と真水を大量に積み込んだ4隻は
柱島を後にした。
・・・・
その頃、海原参謀は海軍省にいた。
ある人と面会するためである。
応接室で待つこと20分。
入ってきた男は関取顔負けの体格をしていた。
「待たせたね。」
海原参謀はその男ー海軍大臣米内光政ー
に帽子をとって一礼した。
「で、要件とは?」
「はい、実は、海軍の予算をあと40%あげてほしいのです。」
「40%だと?」
米内の表情に疑いの色が見える。
「何をするつもりだ?」
「大和を遥かに超える戦艦を作ります。
既に艦政本部の平賀中将と牧野主任には
話を通してあります。
資材と場所と人員さえいれば作ることは可能だと。」
「大和を超える戦艦!?」
これには米内も驚いたようだ。
「何を言っているんだ!?これからの時代は航空機だ。現にマレー半島でイギリスの戦艦2隻が
我が軍の航空機にしずめられたではないか!?」
「確かにそうです。ですが、航空機は消耗品です。国力で勝るアメリカと勝負すればいずれ
逆転されるのは目に見えています!!」
海原参謀に退くという選択肢はない。
ここで引き下がるわけにはいかなかった。




