第7話「覚醒」
言い訳から言いますとですね。このまま行くと、1話で一万文字行ってしまうと思ったので、いいところで止めときました。そしたら、なんと。間に合ってしまったというわけですね。すみません。
ついでに、Twitterの方に、僕が描いたレルアをアップしましたので、よかったら見てください。
Twitter→@hironagamieyuu_
「何が何でもついていくからね!」
この幼女の発言に、レルアは頭を抱えた。
激闘を繰り広げた2人だが、今は別の意味で激闘している。
「だから、無理だっつってるだろ!そもそも、俺はお前を討伐しに来てんの!わかるか!」
「わかんない!そんなの私の鱗持ってけばいい話でしょ!」
「そういうことじゃねぇーよ!いくらお前達龍族が過激派と共存派に分かれていて、お前が共存派だろうが、お前が青龍だとしれた途端に襲われるだろーが!」
レルアの言った通り、討伐対象としれた途端、街のあらゆる人から襲われるだろう。それは火を見るより明らかだった。しかし、青龍も諦めない。
「それならここから少し離れたところにいる別の青龍を倒して持ち帰ればいい!私は襲われてた龍族としてレルアに保護されたってシナリオにすればいいでしょ!」
無い胸を張り、ドヤ顔で言う。しかし、レルアはその言葉に唖然とした。
「お前みたいなやつが、もう一匹いるのか…?」
「なんか失礼な言い方…でも、私じゃなくてあいつが討伐対象なんだと思う。だって、村襲ってたとこ見たしね!」
笑顔でとんでもないことを言う青龍。
「笑顔でいうなよ…それなら、向こうを倒しに行くか…お前は来るなよ?」
「んなっ?!」
じゃ、と言ってもう一つの気配を探るために、洞窟を抜け出した。
察知できる範囲を広げ、探すこと1時間。
ようやく見つけることが出来た。
そこは、洞窟ではなく、巨大な鳥の巣のような場所だった。その中央で寝ている青龍を発見した。
青龍というのに、黒いウロコに纏われている。
「青龍はオスが黒いウロコでメスが青いウロコなんだよ」
「へぇ。そうなんだ。なんかお前より強そうだもんな」
「失礼な!これでも私は紋章もちなんだぞ!」
「すまんすまん」
「謝ったから許す」
「ありがとうな。ところで、紋章ってのも気になるが、なんでお前いるんだよ」
そう言って、青龍の頭にげんこつを落とす。
うぎゅっ!?という訳の分からないうめき声を上げ、なんで殴る!?という目で見てきた。
「お前がここにいるからだ!」
「なるほど…あ、紋章は、それがある事によって力が数倍になるんだ!」
「へぇー…ところで、マジでいつまでいるの?」
「ずっとだよ?」
当然とばかりにこっちを見てくる。
「なぁ、何でそんなについて来たがる?」
「あなたのことが好きだから」
しばしの沈黙。
それは、レルアの思考が停止したからだ。
「大丈夫か?それより、互いの挨拶がまだだったね!私の名前はソフィア。あなたは?」
「あ、ああ。俺の名前はレルア。ってちがぁーうっ!!」
ソフィアは頭の上にクエスチョンマークを浮かべる。
「なにが?」
「いやいや、お前なんて言った?」
「私の名前はソフィア」
「違う違う。もっと前」
「グガァァァァ!!!」
「遡りすぎだよ!」
「ごめんごめん。じょーだんだよ。あなたのことが好きだから。でしょ?」
「そこだよ!なんで俺のことが好きなんだ!?」
「それはね?ひとめぼれってやつだよ!」
レルアは、体温が上昇するのを感じた。おそらく、顔は真っ赤になっているだろう。
(前世ではこれぐらいじゃ同様なんてしなかったのに。)
落ち込むレルアだが、敵の前だということを思い出し、気持ちを改める。
「もうお前のことは諦めるから、とりあえず、あいつを倒すぞ」
「了解っ!」
気を取り直し、戦闘モードに切り替えた瞬間、直感がここにいてはならないと言い出したので、素直に後ろえ飛んだ。ソフィアも同じようにレルアの隣へやってくる。
元いた場所を見ると、ソフィアの二回りもでかい青龍がいた。
『貴様ら。痴話喧嘩なら他所でやれ!俺の眠りを妨げよって!』
青龍の方向により、あたりの木々が吹き飛ばされる。
「おいおい。なんて力だよ…」
「あれは、古龍だからね。」
「なんだそれ?」
「龍族はね?歳を重ねるごとに無条件で強くなっていくの。でね?ある一定の年齢になると、完璧な龍になるのよ」
ソフィアの言う通りなら、青龍は彼女より比べ物にならないほど強いのだろう。
『貴様らは殺す。』
魔力によって底上げされた殺気により、身動きが取りにくくなる。
「くっそ。ソフィア!どうしたらいい!」
「あわわ…」
殺気に当てられ、正気ではなくなっている。つまり、今狙われたら命はない。
焦るレルア。
そんなレルアの都合などお構い無しに、青龍が火のブレスを放ってきた。
「シールド展開っ!」
分厚い水をイメージして張った壁は、難なくブレスを防いだ。
(くそっ!どうすりゃいい!)
自分の持つ手段は、どれも容易く防がれてしまうだろう。あの鱗は、かなりの強度を有してるはず。
【慌てるな愚か者】
ふと頭の中に響いた声。
レルアは、この声の正体を知っていた。
(前世の俺の声か…?)
レルアの問に、前世の俺が答えた。
【そうだ。それにしても、この程度でビビりおって。情けないな】
(じゃあどうすりゃいいんだよ!)
【…とりあえず、一つ目の封印を解け。話はそれからだ。】
それっきり、声は聞こえなくなった。
(封印だと?)
必死に考えていると、青龍の尻尾が迫ってきた。直撃寸前で避けることが出来たが、避けた先には青龍の右手があり、叩き落とされた。
魔力で強化するしてあったので、骨などは無事だったが、全身を激しい痛みか襲った。
青龍はそれでもお構い無しに火のブレスを放つ。
シールドを展開するが、痛みのせいで火のブレスに負けてしまった。
焼かれる覚悟をした瞬間、体に違和感を覚えた。
何か、抑えられている感じがする。
そして、痛みも引いてきた。
不思議な感覚だ。
これが封印とやらなのだろうか。
レルアは魔力で解いてみた。
「ここからが本番だ」
(まさか、精神が封印されてるとは思わなかった)
体に引きずられてたと思っていたのだが、封印されているとは思わなかった。予想外だ。
(まずは、相手の弱点を探るか)
そう言って、青龍の背中に飛び乗った。暴れる青龍だが、魔力で背中にくっついているため、落ちることは無い。
そして、背中に触れ、手から魔力を流す。
『き、貴様っ!!何をしている!!』
青龍も拒んで入るが、レルアの魔力には勝てなかった。
レルアの魔力が青龍の体全身に行き渡り、青龍の弱点がわかった。
「ほぅ。お前の心臓は魔力なのか?」
レルアの問に、青龍の体が少し震えた。
「図星か。なら」
そう言って再び背中に手を触れる。
『な、何をするつもりだァ!!!』
青龍の問に、レルアはさも当たり前のように答える。
「魔力を吸収するんだよ」
青龍は明らかに動揺している。当たり前だろう。魔力を吸われたら、死んでしまうから。防ごうとはしてくるものの、手は届かず、首も届かない絶妙な位置にいるため、諦めたようだ。
『やめて、やめてくれ!』
必死に命乞いをしてくるが、取り合うわけが無い。
「さて、行くぞ。」
宣言通り、魔力を吸い始める。
急に魔力が入ってきて酔った気分になるが、尻尾から出しているのでそれ以上は何も無かった。
ついに、青龍が倒れた。
「ま、心臓をくりぬかれたら死ぬよな」
死骸となった青龍を見下ろし、鱗や牙を剥ぎ取る。
「魔法で持ち運びできないだろうか。」
考えるレルア。
一つの答えが浮かび上がった。
「空間をバックと見立てて、口を開く感じで…よし、できた。」
難なく開けることに成功。問題は、いつでも取り出せるかだ。
落ちている石を中に入れ、空間を閉じた。そして、別の場所で開き、探ってみる。
「よし、石はある。ってことは、持ち運びはできるということだな」
ならばと、青龍の鱗から牙など、あらゆる部位を剥ぎ取って、空間に放り込んだ。あとに残ったのは、元が何だったかわからない肉塊。それに満足し、ソフィアの元へ行くのだった。
「おいソフィア。お前も来るんだろ?置いていくぞ?」
その言葉に、正気を取り戻したソフィア。
「あ、あれ?青龍はどうしたんですか?ってか、随分と大人びてますね!」
「青龍は俺が討伐したし、大人びている理由は説明するのが面倒だから、そういうことにしておいてくれ」
「了解っ!」
ソフィアが納得したので、ギルドに向かうのであった。
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「まず、この子の登録から頼む。」
先程の受付さんに話しかけた。
「は、はぁ。」
レルアの言われた通り、紙を差し出す。しかし、ソフィアはそんなのいらないと拒否した。
「なんでだ?」
「私、元々別のところで冒険者やってたから、その時のギルドカードで大丈夫なんでしょ?」
そう言って差し出されたソフィアのカードを見て、唖然とする受付さん。
「ソフィアさんって、Aランク冒険者だったのですね…」
やはり無い胸を張り、ドヤ顔をするソフィア。しかし、一つ疑問があった。
「Aランク冒険者が、なんで青龍相手にびびってたんだ?」
レルアの問に、ソフィアが慌てて言い返す。
「あ、あのね?あいつは古龍ってさっきも言ったでしょ?」
「あぁ」
「その中でも、神格化した古龍になってたの!」
ソフィアの説明を聞いて、今度は受付さんが慌てる。
「で、伝説級の魔物じゃないですか!す、すぐに避難勧告を!」
「大丈夫ですよ。既に俺が倒したので。」
「はぁ?倒した?」
間抜けな顔をする受付さんに、鱗を差し出す。
「こ、これは…少々お待ちください!」
そう言って走り去ってしまった。
そんな彼女の姿を見送った後、ソフィアに質問した。
「そんなに慌てることなのか?」
「そりゃもちろんだよ。あのね、伝説級の魔物っていうのは、一体で国を軽々滅ぼせるほどの力を持ってるの。」
初めて真面目な顔をして説明してくれるソフィア。それ程大事だったのだろう。
「あいつ、そんな力無さそうだったけどな」
すると、ソフィアが呆れ気味に言った。
「それは、あんたも伝説級だからよ。」
「あーやっぱり?」
「あれ?知ってたの?」
「なんとなくな。狐族の村で見た妖狐の物語見た限りだと、世界でも恐れられてるんじゃないかなと思ったんだよ。だからほれ」
自分の尻尾を見せる。
「ふぅん。だから尻尾を減らしてるんだ」
ソフィアが尻尾にイタズラしていると、受付さんが走ってきた。
「お待たせしました!……すみません。少し置くまで来てくれますか?」
急に小声になった受付さんは、青龍とはまた別の迫力があった。
「「は、はい」」
2人は、そんな受付さんに揃ってビビるのであった。
年末は少し忙しくなりそうなので、滞りそうです。なるべく頑張りますが、ご了承ください。