第3話「奇襲」
忘れそうですがレルアは二歳児です。
風呂を上がり、着替えを調達した。
身長が目に見えて伸びているため、服のサイズは2回り大きいものにした。
「さて、これから旅でもしてみますか。」
宛の無い旅ほど楽しいものはない。前世では、いつ狙われてもいいように常時警戒をしていたので、気を休める暇がなかった。
しかし、この世界では超遠距離から狙撃される心配がないため、心置きなく旅ができるだろう。
「問題は、どっちに進むかだが…あっちでいっか。」
丁度日が沈みかけていたので、そちらに向かって行くことにした。
自分の体について調べるため、全力で走ったり、ジャンプしながら移動することにした。
「時速80km程か。飽きれるほど早くなったな。」
強化なしでこの速さなので、強化したら音速は軽く超えるだろう。
試しに体全体に魔力を流し、強化してみる。
目も強化してあるので、なんとか見えているのだが。
「うぉぉぉっ!!!」
あまりに速かったので思わず足を止めてしまい、勢いで吹っ飛んでしまった。
数十メートル飛ばされ、ようやく止まったので後ろを振り返ってみる。
「うわぁ。狐族の村が見えないじゃん」
一瞬で村が見えなくなるほどの長距離を移動したのだ。
つまり、音速など比べ物にならないほど速くなっていた。
「強化して跳ねたらとんでもないことになりそうだ…」
大気圏突破しそうな気がしたので、跳ねることは辞め再び走り始める。
勿論強化なしでだ。
「それにしても、これだけ走ってるのに疲れる気配がないな」
5分ほどで200kmは走っているのに、全く披露がたまらない。
手足が冴えていく感覚さえあった。
「これが九尾の力なのか?」
先程読んだ本にも、妖狐の九尾についていろいろ書いてあった。その話も、神話などではなく、実話だったんだと確信する。
「とりあえず、人がいる所に行かなくては」
この世界の情報収集をしなければ、自分がどの立場にいるのかわからない。
狐族の村では、限界があったから。
それから30分程走り、ようやく村を見つけた。
念のため、魔力で光を操りしっぽの本数を一つにしてある。
「小さい村だ。50人ほどしか住んでいないな」
気配を探り、村の中の人を観察する。
ほぼ全員が戦闘経験なしで、4~5人程が武術を心得ているようだった。それでも、初心者の域を抜けていない素人なので、レルアにとっては驚異にならないだろう。
「さて、入って様子を見るか」
村の門まで歩いていく。
すると、見張りの人に声をかけられた。
「此処は人間の村だ!獣は立ち去れ!」
この村では、人種差別があるらしい。無理して入って、戦闘にでもなったら危険だ。勿論、村を壊滅させてしまうから。
そんなことはしたくないので、諦めてほかの村を探すことにした。
様々な村を訪れてわかったことは、獣人族は差別されているということだ。それも、重度のもの。
村の中にも獣人族が居たのだが、どれもこれも皆奴隷であった。
途中、襲われたので瞬殺してやった。
「野蛮人ばっかだな。国とか王国とかでかいところはそうでもないのかな?」
差別が酷いとしても、本で見た冒険者にでもなれば、そこそこやっていけるだろう。
それもできなければ、光を操り人間の姿に見せればいいだけの話しだ。
なので、今はでかい街を探して走っている。
「しっかし、速さに離れたけど、疲労が一向にたまらない。これホントに二歳児の体なのか?」
狐の血が入っているので、成長が人より早いのはわかるが、いくら何でもはやすぎる。
ほんの数時間で、身長が数十センチ伸びている。
「成長痛だって、治癒し続けているのに、魔力切れすら起こらない。」
本には、魔法を使うと体内魔力が無くなり、疲労感があるのだとか。最悪死ぬ場合もあるらしい。
それなのに、その予兆が全く訪れない。
「謎ばかりだ…っ!?」
強い殺気を感じたので、横に跳ねて回避する。
さっき走っていた場所を見ると、火が放たれ燃えていた。
「敵は5人か。服装からして、賊だな」
気持ちを戦闘モードに切り替える。
「さて、掃除の時間だ」
地を蹴り、一番近い場所にいた男に近づく。一瞬にして目の前に現れたレルアに、男は体が固まってしまう。
「まず1人だ。」
右手で心臓を貫く。
「てめぇ!!」
仲間の男がレルアを背後から切りつける。
しかし、剣は空振りして、直後視界が揺れた。
「ダメだな。仲間を殺されたぐらいで動揺しすぎだ。」
男は頭を潰され、即死する。
残りの3人は、2人を瞬殺され恐怖に固まっている。
そんな彼らに対しても、レルアは容赦しない。
何故なら、やられたらとことんやり返すタイプだからだ。
「魔法を使ってみるか」
イメージするのは、マグマ。
「狙いはあいつらの足下。ほっ!」
合図とともに、彼らの足下にマグマが出現した。
「う、うぁぁぁぁぁ!!!」
「や、やめ、あ、あついぃ!!」
「ぐぁぁぁぁぁ!!足がぁぁぁ!!」
足からだんだん溶けて沈んでいく。
そんな彼らを無視して、レルアは走り出した。
少し短くなってしまいました。ごめんなさい。