知らない現実、知りたくない現実
少し期間が空いてしまいまして申し訳ないです。ここから本編がスタートします!
「貴方に渡す物!はいどーぞ!」
「なんだこれ・・・・・・・・・?ペンダント?」
「そーだよ!私と、六瀬をつなぐ絆!」
「これをどーしろと?」
「つけて!きっと似合うよ?」
ブリュンヒルデが手渡したペンダントは、六芒星のかたちをしていた。
六瀬はすっと首にかける。
それを見た鳴は
「うおっ!似合ってるよ六瀬くん!でもそれ校則違反じゃないかな~?」
「今更校則も何もないんじゃねーの?」
「・・・・・・うん。確かに」
ABはいつの間にか外を見に行っていたらしく、慌てた様子で戻ってきた。
「お、おい・・・・・・外・・・・・・やばいぞ・・・」
「え?外?」
「待って!」
ブリュンヒルデに急に止められ、焦る六瀬達。ブリュンヒルデの顔は、会って数分の中でも特に真剣だった。
「今は君たちが出る時じゃない。ここに座って」
「でも・・・・・・!外は・・・・・・!」
「いいから座れって言ってるだろ!?」
「・・・・・・・・・!」
ブリュンヒルデの圧倒的な力に圧倒され、3人は座り込む。
よく考えてみる。そもそもたった1日・・・・・・、たった1時間で、今まで当たり前だった世界は一気に変わった。
・・・・・・ていうかなんだよブリュンヒルデって。
背中には黒い羽が生えてて、灰色のロングヘアーで、ゴスロリ着てて。
「言ったでしょ。君たちはまだ出ちゃダメ」
「なんでだよ・・・・・・?」
「死にたい?」
「は?」
「死にたいなら今行けばいい。死にたいなら、ね」
何故かはわからない。わからないが、この言葉にだけは背いちゃ行けない気がした。
「私はね・・・・・・あの魔石を回収、もしくは破壊しないといけない」
急に話し始めた。その言葉は、さっきとは違い、強い口調ではなく、静かに、ゆっくりとしていた。
「自分のミスで君たちの現実を壊してしまって申し訳ないって心から思ってる」
「・・・・・・・・・・・・」
「だけどね・・・・・・」
「君たち・・・・・・六瀬と出逢えた事を心から喜んでいる自分もいるんだ」
「ABくんが言ったように、能力の制御はできない」
3人はハッとした。自分達で言ったことを忘れるほど、今の事を飲み込めず、自分達を棚に上げているのだ。
「だから・・・・・・・・・」
未だに外からは呻き声、断末魔、叫び声、色々な音が聞こえる。
「君たちも同じように・・・・・・なってしまう」
「誰かが特別な訳じゃないから・・・・・・」
「・・・・・・ブリュンヒルデのさ」
鳴が問いかける。
「ブリュンヒルデの世界ではさ、核主ってそんなに大事な物なの?」
「・・・・・・そうだよ。私たちの・・・亜人界では、核主がいるといないとだと、生死に関わってくるんだ」
・・・・・・意味がよくわからない。
「私たち亜人は、核主が生きている間、生きていくことが出来るんだ」
「でもね、自分の核主に、自分の核を渡すことが出来れば・・・・・・」
「出来れば・・・・・・・・・?」
「その人と亜人は、望むタイミングで死ぬことができる」
「・・・・・・へ?」
「簡単に言えば、寿命を決めれるんだよね。自分の」
「つまり俺は・・・・・・」
「自分の生死をほぼ決められる・・・・・・ってこと」
「でも、それだけでお前は俺達を止める理由があるのか?」
ブリュンヒルデはゆっくりと首を横にふった。
「私はね・・・・・・失いたくないんだ」
「・・・・・・何を?」
「君をだよ。六瀬」
体が火照って言っている気がする。なんでだろう。
まだ会ったばかりなのに、他人の気がしない。
「それが核主であることだよ」
「私はマスターである六瀬といっしょにいなきゃいけない」
「・・・・・・え」
「だから君が死ぬ時は・・・・・・」
「お前も・・・・・・」
そこから先は誰も言わなかった。
学校の外れにある小部屋で、外からの音が聞こえなくなるまで座り続けていた。
誰も何も喋らずに、黙々と。
ようやく知ったのだ。
自分の日常は無くなってしまったのだと。
「そろそろいいだろ」
ABが不意にそう話す。
「そうだね・・・・・・声もしないし、いいと思う」
小部屋の重い扉を開き、外に出る。
「そもそも、俺らってこんな部屋の近くにいたっけか?」
「私の力で安全地帯に移動しただけだよ」
「・・・・・・そっか」
外はひどい景観だった。
校庭は荒れ、コンクリートは赤く染まり、窓ガラスも割れていた。
校庭に3人ほど立っている人影が見えた。
「誰か・・・・・・立ってるぞ!」
「誰だよあれ・・・・・・」
するとそのうち1人がこちらを向き────!
ギュオッ!
ガキン!
目の前にあったのはブリュンヒルデの姿。そしてその前には・・・。
「・・・・・・ちっ、仕方ねぇ。燃えな!」
その男の左手から火球が飛んできた。ご丁寧に1人1個ずつ。
しかし、その火球が3人に届くことはなかった。
ブリュンヒルデが一瞬でかき消したのだ。
「全く・・・・・・未熟でひ弱な人間風情が何になった気してるの?」
「な、なんだと!?俺様は校庭のやつらをみんな倒した・・・・・・」
「その意味の無い攻撃で何人殺したッ!」
ブリュンヒルデは大声を出す。その様子に焦ったのか、男は
「し、知らねぇよ、そんなの・・・・・・」
「・・・・・・六瀬。ペンダントを握って」
「・・・・・・こうか?」
「おっけ。そのままね」
ブリュンヒルデの右手が赤く染まり────
一瞬のうちに男は、無くなっていた。
「殺したんじゃないよ。ただ・・・・・・」
近くの壁を指さす。
その壁には大穴が空いており、その奥に男の姿があった。
「私、殺しとか嫌いでさ。本気で」
「・・・ところで、俺がペンダントを握った意味って?」
「六瀬の力と、私の力が合わさって放たれるようになるんだ。だからあんなにコンクリートをぶち破っていったんだ」
右側の大穴は、無言でその言葉を肯定していた。
「多分だけど、この学校の中にいた人・・・・・・つまり、大体の生徒だね。その中にも、能力に目覚めた人はいるよ」
「・・・・・・でも、騒ぎは起きてないな」
「きっと気づいていないんだよ。自分の覚醒に」
「・・・・・・・・・」
「この学校が滅びる前に、止めよう」
「ど、どうしたロクセ?お前、おかしくなったか?」
「みんなが能力を使っていけば、絶対この学校は滅びる」
「確かにな・・・・・・AB、お前だけだぞ。気づいてないの」
「え・・・・・・?」
「能力賛成派、能力反対派。絶対分かれるだろ」
「そして能力に目覚めたやつは、みんな賛成する」
「そして反対派を潰す」
「生き残った賛成派のなかでも戦闘は起きる」
「・・・・・・おしまい、だ」
「た、確かに・・・・・・」
「ブリュンヒルデ!そうだろ!」
「そーだね。間違いないと思うよ」
「ほらな」
「戦争・・・・・・こんな身近におきるなんてな」
鳴はそうつぶやき、嫌に青い空を見上げた。
次回はなるべく早めに書きたいと思ってます!よろしくおねがいします!