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プロローグ
目の前に赤がある。
私の目の前に赤いものがいる。
怒りに満ちた紅い目が私を見ている。
静かで激しい、あの優しい目はどこへいってしまったのか。
皆は赤いものを見て逃げ惑う。
皆は赤いものに牙を剥いて殺せと叫ぶ。
私は赤いものの目の前に立っている。
皆は私を見て魔女という。
皆は私たちを置いていく。
けれど、皆は知らない。
彼がどれだけ優しいか。
彼がどれだけ誇り高いか。
彼がどれだけ孤独だったか。
私たちが彼をどれだけ辛くさせていたか。
彼が燃え尽きてしまう前に、
私は彼を止めなければ。