黒い幽霊のカプリチオ
お久しぶりです!
今回はいつもより短めな気がします。
それでは、どうぞお楽しみくださいm(_ _)m
『編のお気に入りの千晃くんへ。今日の夜、編と二人で○○ビルにいらっしゃい。きっと面白いものが見られるわよ?編のそっくりさんより』
加羽 千晃はその手紙を読んで、訝しげに眉を寄せた。
差出人は、恐らく赤刎 文だ。
文は、編の10倍は狂っている編の前世の欠片――いわば幽霊である。
あの編ですら注意を促すほどの相手の言葉に、耳を貸すわけにはいかない。
「……まあ、本当に用があるなら呼びに来るだろうし」
そう呟いて、千晃は手紙をしまった。
だが夜もすっかり更けた頃、彼は異変に気づいた。
毎日欠かさず千晃のアパート前にやって来ていた編が、今日は一向に姿を見せないのだ。
焦り始めた彼の脳裏に浮かんだのは、編にそっくりな顔に下卑た笑みを湛える少女の姿。
そこでふと今朝の手紙を思い出し、背筋が凍りつく。
「まさか……!」
しまった手紙を引っ張り出してみると、そこにはご丁寧にビルまでの地図が描かれていた。
千晃は歯軋りをして、玄関を飛び出した。
「今日はいい夜ね。死の匂いがするわ」
とあるビルの屋上から街を見下ろし、少女――赤刎 文は楽しげにそう呟いた。
長い黒髪を風に靡かせ、黒いセーラー服を纏ったその姿は、夜闇の中でも圧倒的な存在感を放っている。
「きっと……私たちを祝福してくれているんですよ」
彼女の後ろに立っていた女性の一人が、恍惚とした表情で言った。
その場にいた十人ほどの男女が頷いた――その更に後ろに立つ、一人の少女を除いて。
「貴方たち、皆狂ってるのね」
鮮血のように赤いドレスを纏ったその少女・赤刎 編は、心底嫌そうな顔をする。
文は肩を竦めると、錆びたフェンスに腰かけた。
「そんなに怒らないで。今日は特別ゲストもいるのよ」
いつになく上機嫌な彼女に、編は怪訝そうに眉を寄せる。
文が喜ぶことといったら、誰かの死か編への嫌がらせぐらいしか思い当たらない。
ふいにチャキ、と金属同士が触れる音が聞こえた。
見れば『自殺同好会』の面々が、編へとナイフを向けている。
編はそれには別段反応せず、文の顔をじとりと睨んだ。
「ひどいわね。私は貴方と愉しい夜を過ごしたいだけよ」
文はクスクス笑いながら、屋上と階段の踊り場を隔てる扉を開けた。
面倒くさそうに彼女を目で追っていた編は、扉の向こうの人影を見つけると驚愕に息を呑む。
「千晃くん!?」
踊り場から一歩こちらへ踏み出してきた千晃は、走ってきたらしく全身汗だくで、ゼエゼエと肩で息をしている。
「編さんを……離してください」
ようやく落ち着いてきた頃、彼は文にそう頼んだ。
普段は感情表現が豊かでない千晃の瞳が、怒気を孕んでいる。
それを見た編の背中にぞくりと悪寒が走るほどだ。
一方の文は怯む様子もなく、楽しげに謳う。
「わかってないのね。パーティーはこれから始まるのよ?」
編にナイフを向けていた男のうちの一人が、その切っ先を千晃へ向ける。
ぎらりと光るナイフの先端に、千晃は肩をぴくりと跳ねさせたが、一歩も退こうとはしなかった。
編は文を問い質す。
「千晃くんに何を吹き込んだの?」
「貴方の晴れ舞台の特等席を用意してあげただけよ」
文は心底幸せそうに微笑み、半透明の手を編のほうへと伸ばした。
「編――私と一緒に死にましょう?」
いかがでしたでしょうか?
もう私自身文さんが何がしたいのかよくわかりません←
次回はそんな文さん回ですので是非読んでくださいな。
それでは8話でお会いしましょうm(_ _)m