大嫌いなひと
第3話です。
友達が第1話を読んで「空気読め、編ちゃん」と言っていました。
では、どうぞm(__)m
最近、大学内で不穏な噂を耳にする。
一部の学生の間で作られたサークルの噂だ。
そのサークルの名は「自殺愛好会」。
自殺志願者が集うというそのサークルは、徐々に動きを見せ始めているらしい。
その話を聞いた千晃は、真っ先にある人物の姿を思い浮かべた。
真っ赤なドレスを纏った、異常者の姿を――。
「ひどいわね、千晃くん。冤罪よ」
なぜか毎日アパートの前で待ち伏せしている編に聞くと、そんな答えが帰ってきた。
「私は死ぬことは幸せなことだと思うけど、自殺志願者ではないわ。むしろ長生きしたいくらいよ」
「え……?」
千晃は思わず間抜けな声を出してしまう。
てっきり早く死にたがっているのだろうと思っていたのだ。
編はいつもの笑みを消し、こう説明した。
「そのサークルの会長が誰かは大体予想がつくわ。その上で一つ忠告しておくけど、アイツには関わらないほうがいいわよ」
首を傾げる千晃に、彼女は続ける。
「私を異常者レベル1とするなら、アイツはレベル10よ」
千晃がうわぁ、と呟いて顔を顰めた。
彼が渋々頷くのを見届けると、編は彼に背を向けて大通りへと歩き出す。
「自殺愛好会」の会長であろう人物――自分の大嫌いな相手のことを考えながら。
「ああは言われたけど……」
千晃は、編が会長であるという説を捨てきれなかった。
彼女以外にあんな考え方をする人間がいるとは思えなかった。
というわけで、彼は今「自殺愛好会」が集まっている部屋の前にいる。
赤刎編が会長ではないということを、この目で確かめて信じたかったのだ。
ドアの隙間から中を除き見た。
中には十人ほどの男女がいて、和やかに談笑している。
物騒なサークル名とは程遠い雰囲気だ。
しかし、その内の一人がカッターナイフを握っているのを見つけてしまい、それ以上見るのをやめた。
室内に編の姿はなかった。
本当に会長は彼女ではないのかもしれない。
千晃がその場を立ち去ろうとした、そのときだった。
「加羽 千晃くん、だったかしら」
セーラー服を着た高校生くらいの女の子が、隣から笑いかけてきた。
黒縁眼鏡がよく似合う、ストレートヘアの少女だ。
誰かにそっくりな顔だなあ、と思いつつ千晃は頷く。
「ふーん……確かに編の好きそうな子ね」
それを聞いて、ようやく気づいた。
少女は、赤刎編と瓜二つだということに。
「赤刎さんのご家族ですか……?」
「違うわ。編は私のコピーみたいなものよ」
彼女はそう言って微笑む。
その笑みは、編本人よりも強い狂気を孕んでいた。
「コピー……?」
「あんまり話すと編に怒られちゃうわ。本人に聞いて」
彼女は肩を竦める。
そして、楽しそうにこう続けた。
「貴方にお願いがあるの」
編そっくりの笑顔で。
「どうか、編を愛してあげて頂戴」
「可哀想なあの子のことを、どうか――」
いかがでしたでしょうか?
新キャラちゃんはキーマンになるかもしれません。
読んでいただきありがとうございましたm(__)m