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第八章 アルスの過去




――四年前、アルスの村――



 多くの木々に囲まれた緑豊かな小さな村。…の筈だった。


 目に写るのは激しく燃え上がっている家。全壊している小屋。荒らされた畑。所々に倒れている人。雨に流される血の海。


 子供の頃に、駆け回っていた筈の村は、すでにアルスの知らない世界となっていた。

 その知らない世界への入り口で佇んでいる十八歳のアルス。


「な、んだよ…これは?」


土砂降りの雨の中、ゆっくりと足を動かすアルス。


絶望感漂う少年が見たのは、村の中央で倒れている二人の男女。


「父…さん?母…さん?」

 アルスは一気に駆け寄る。

「父さん!母さん!おい!返事しろよ!!」


 アルスの目からは雨と一緒に大粒の涙が零れる。

「おい!なんの…冗談なんだよぉ!何とか言えよぉ!!こんなとこで…寝てんじゃねぇよ。…」


 アルスが何を言っても二人が反応することは無かった。


 アルスは何度も何度も地面を殴りつけた!

「ちくしょう!ちくしょぉぉ!」



アルスはその場に座り込み泣いているとき―

「ア…ルス、か?」


その声に顔を上げるアルス。左右に首を振り、辺りを確認すると、老人が苦しそうに倒れていた。

「村長!!」

 アルスは這いつくばるように村長の元へ行く。

「村長!ガンツ村長!しっかりしろ。」


 アルスは村長の体を支える。


「アルス…、もう、わしも…なが…くない、ようだ。皆…一人残らず、殺…された。女、子供関係なく、な…。あの男、に。」

「俺のせいだ…。俺が魔力を持っていたから!俺が逃げたから!!俺がもっと強ければ!!!……こんな事にはならなかった…。」


 アルスの涙は止まることなく、声を震わして言った。


「お前の、せいではない…。お前が…、生き残ったことは…きっと、何か意味がある…。やらなければ…いけないことがある…。あの、男は…ルーイン・…ストーンを、ゴホッ!」

「村長!!」


 村長は力を振り絞り、アルスの頬に手をやる。


「…いいか、アルス。よく…聞け。ここから、北東にある山奥に…ゴホッ、禁断の…洞窟がある。そこへ…行くのだ。」

「そこには…なにがあるんだよ?」

 アルスは村長の手を握る。


「…真実、だ。いいか、アルス!全てを…知れ。そ…して…この、星を…す…く…え………」


 村長の手が力無く落ちる。


「―うわぁぁぁぁぁぁ―」



 一人の少年の悲痛な叫びが響き渡る。


――――――――――――――


 アルスは全員を広い場所へ並べると、そっと花を添える。


「北東にある、禁断の洞窟…」

 アルスは村長の家に飾られていた黒い剣を手に取ると、全員の死体に一礼し、村を後にした。



 アルスは、山奥に現れるモンスターをこれでもか、というほど倒し続け、洞窟へ到着する。

「…ここか! 全ての真実…か。」


 躊躇することなく入っていくアルスは、最深部まで到着する。

 しかし、そこにいたのは十メートルはあるだろう、巨大なドラゴンが居座っていた。

 今は畳んでいるが明らかに大きい翼。太い足。鋭い爪を持った手。そして、長い首に威圧感のある顔つき。


「おっ、お前は一体…」

「ほう、ここに人間が入って来るのは何年振りかな?しかも私を見て逃げぬとはいい度胸をしている。」

 ビリビリと伝わるようなプレッシャーで話すドラゴン。


「ここで真実が聞けると教えられて来た!それはお前の事なのか!?」

「いかにも!私は五千年前から生き続けているからな。その前に、名前は何という?」

「俺はアルス。お前は?」

「私は二代神龍のデストロイドという。では、なにから知りたい!?」



 アルスはそこで全てを知った。ルーイン・ストーンの事や、この星に訪れる危機を。


「成る程な…。またそんなことをしようとする奴が現れたか。それで、お前はどうする?」


「決まっている!俺はサディケルを殺す。この星も救ってみせる!それが…俺の全てだ。」


「アルスよ!」

「!? なんだ…?」


「私と…契約しろ!」

「契約?」

「そうだ。お前程の強い意志と魔力があれば、必ず私を使える!私もお前とこの戦いに協力したい!」


「なぜお前がそこまでする必要がある?滅ぶのは人類だけなんだろ?」


「恐らくそのサディケルと言う奴も、二代神龍のイフリードと契約している!お前だけではどうにもできん!このイフリードは三千年前にも破滅を望んだものと契約をしていた。その時、私は人類が滅ぶところをみた。あれば地獄のようだった。三千年前は何も出来なかったが、お前となら、今度は止められる。」


 アルスにはデストロイドの気持ちが物凄く伝わってきていた。

「…ああ!俺からも宜しく頼むよ!」


「交渉成立だ!私を出すときは己の魔力と意志次第だ!」

 そう言うと、デストロイドの体が光り、次々とアルスの中へ吸い込まれていった。

 ここまで読んでくれている人はいるのだろうかとこの話を書いている時にふと思いました。さあ、アルスの過去が明らかになりました。アルスの悲しみが少しでも伝わってくれたら嬉しいです。次の話は説明している時に戻ります。内容もそこまで深い話ではないのでさらっと終わる予定です。では!

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