第四章 二人の隊長
ウェールズ研究所が爆発してから、時間はもう夜になっていた。グラハムの死もニュースで流れたが、大半の人は別に驚きもしなかった。それ程、悪事を働いてきた男だったのだ。
そして、ウェールズ研究所から五課方面へ戻る車が一台走っていた。中に乗っているのは、アルス、キルと戦おうとしたあの女性二人。
運転している茶髪のツインテールの女性は
マイカ・スティーナー 二十歳。
一方、隣に座っている金髪を腰近くまで伸ばしている女性は
リーナ・フラック 同じく二十歳。二人とも、バルパレス部隊特有のスーツを着ている。スーツといっても、バルパレスの高い技術で開発された戦闘向きのスーツである。
まだ二十歳という年齢だが、高い魔力を持っており、一気に隊長クラスまで上り詰めた、いわゆるエリートである。それに、二人とも美少女ということもあり、バルパレス部隊でも一目置かれている。
「あ〜、もう!昨日といい、今日といい、もう疲れたよ。」
「そうだね。色んな事が起こったからね。でも、マイカ。どう思う?この事件。」
リーナが少し深刻な顔で尋ねる。
「私は…、あの二人に関係あるように思えるんだけど。」
「うん、私も同じ…。グラハムはあの石を狙ってるって言われてたし、あの二人も、雇われてた感じだったし…。ひょっとしてあの二人、ブラックリベラル…?」
バルパレスでもブラックリベラルの噂は何度も耳にしていた。しかし、極悪組織の破壊や、指名手配犯の殺害などバルパレスにとっては有り難い存在だったので、捕まえる、という話が出てくることは無かった。
「私も、それならあの強さも分かる気がする。多分、五課でもう結果が出てると思うよ。顔が分かればそれなりの情報も出てくるから。」
それから間もなく、車は五課に到着し、正面ロビー前で車から降りる。それを見たのか、中からまだ幼い女の子が駆けだしてきた。
「マイカ隊長、リーナ隊長!クリス支部隊長が部屋まで来てくれって!」
十二、三才ぐらいの女の子は元気良く報告する。
「わかった。ありがとう、ミナ!」
マイカは頭を撫でると、ミナは嬉しそうに微笑んだ。そしてマイカとリーナは目を合わせると、五課の中へ歩き出した。
迷路みたいな広い内部を迷うことなく歩いていき一つの扉の前で止まる。コンコン、とノックしてから中へ入る。中では、一人の青年が立っていた。年齢はアルスと一緒ぐらいだろうか。
「クリス部隊長。話ってやっぱり…。」
「ああ。あの二人の事だ。とりあえず座って。」
三人はソファーへ座ると、クリスは話を続ける。
「まず話しときたいのが、三時間前にルーイン・ストーンのケースが入り口付近で発見された。」
『え!!』
二人の声が重なる。
「ウェールズ研究所にも無かったし、多分、あの二人が置いたんだろうね。」
「あの二人の正体は…?」
リーナが尋ねる。
「多分、二人も想像してたと思うけど…、あの二人はブラックリベラルで間違いない。これを見てくれ!」
クリスは、壁に付いている大きなモニターに二人の顔写真を表示させた。
「左の青年が、アルス。右の少年がキル、と呼ばれているらしい。二人共、正式な魔力ランクはまだ分からないけど、おそらく君達と同じくらいはあるだろう。」
この魔力ランクとは、魔力を持っている者の最大限の数値でランクが別れている。一番低いのでEランク、ある一定の数値以上を持っていれば最大限のSSSランクとなるが、バルパレス部隊の中で、SSSランクを持っているのは、マイカとリーナの二人だけである。
しかし、そこまで魔力を上げると、自分と、周りにも何かしらの影響を与えてしまうかもしれないので、Sランク以上の魔法を使う時には、バルパレスでは許可証が必要なので、めったに使う事は無かった。
「クリス部隊長。この二人に会うことは出来ないですか?」
マイカがモニターを見ながら言った。
「そうね。会って色々話をしてみたいわね。」
リーナもマイカに賛成する。
「しかし、もし戦う事になりさえすれば、勝ち目はないぞ!こんな事で許可証は貰えんだろうし。」
「そんな事にはならないと思う。何となくだけど…」
「私もそう思います。昨日の夜だって、二人が攻撃してくることは一切無かった。」
マイカとリーナは何故だかそう確信していた。
「しかし、普通に会いに行っても向こうは警戒するぞ。五課に侵入しているから捕まえに来た、と思うだろうし。」
しかし、マイカとリーナはどうしても会いたい、いや、会わなければいけない!。そんな直感が働いていた。
「……じゃあ、こんなのはどうかしら?」
リーナが一つの提案をだした。。
こんにちは!この話も修正しまくりました。どうだったでしょうか?自分の中でも、マイカとリーナのキャラがあまりハッキリしないのですが、マイカは親しみやすいタイプ。リーナは冷静なお姉さんタイプ…と思っておいて下さい。次は、四人が再び出会います。