第三章 ルーイン・ストーン
あれから数時間後、日も上がり街に人が目立つようになった頃。アルスとキルはウェールズ研究所の会議室に座っていた。VIPルームと違い、質素な感じだが、広さは二倍以上はある。
しばらくすると、グラハムと三人のがたいのいい男。恐らくはボディガードだと思われる者と一緒に入ってきた。
「待たせたな。」
グラハムは正面に座る。
「奪って来たぜ!これだろ。」
アルスはグラハムにケースを渡した。
「おお!こんなに早く手に入れて来るとは!想像以上だよ。ブラックリベラルの諸君!」
と、少し興奮しながら話している。
「まあ、俺らにしてみれば思ったよりも簡単だったけどな!それより…約束の金だ。」
グラハムは、ニィッ、と口元を緩ませ
「そうだったな…。では、君達に報酬をあげよう!!」
グラハムがそう言うと同時に、二十人はいる男達が一斉に入ってきて、アルスとキルを囲み、武器を構える。すぐにでも殺す、といった感じだ。それを見たアルスは少し下を向いた。その顔は笑っているようにも見える。そして顔を上げると、
「こんな報酬は聞いていませんでしたけどね。」
と、グラハムを見る。
「ハッハッハッハ!君達はもう用済みなんですよ。馬鹿な連中ですねぇ!この中身が何なのかも知らずにバルパレスから取って来るなんて。本当に――」
「ルーイン・ストーン…だろ!?」
「!!!!」
アルスの意外な言葉に、グラハムもキルも驚く。
「キサマ!知っていたのか!?」
「薄々な…。お前がなんの為に欲しがっているのかは知らないが、こうなる事は予想してたんでな!元々お前に渡すつもりは無い。」
グラハムはみるみる顔を真っ赤にする。
「アルスさん!ルーイン・ストーンって、あのですか!!」
キルも少しは知っているようだ。
「ああ。神が落としたと言われる神秘的な石。今では、それを触ると死に至るって噂があるとか…。それで一応バルパレスも慌ててたんだろう。」
「それは本当の話なんでしょうか?」
首を傾げるキル。
「さあな。今の科学力じゃ誰も解らないだろうな。」
アルスが言い終えたその時、グラハムが立ち上がった。
「まあそんな事はどうでもいい!状況をよく見てみろ。お前達にはもう逃げ場は無い!ここで死ぬ運命なんだからな!!」
フン、と鼻をならすアルス。
「グラハム。俺達を誰だと思っている?死ね運命にあるのはお前の方なんだよ。」
アルスはゆっくりと立ち上がる。不適な笑みを浮かべたまま……。
―数分後―
盛大な爆発と共に、街は騒がしくなる。
爆発の起こった場所はウェールズ研究所。既に五課の部隊が出動しており、調査を進めていた。一つの部屋からは、グラハムとその他数人の死体が見つかったのは言うまでもない。
「それで、この危険物どうします?」
アルディアの都市を歩いていたキルの手には、黒いケースが握られていた。
「五課に返すか…。俺たちが持っていても仕方ない物だ。それに、今ならあの爆発で大半が出動してると思うしな。」
「そうですね。そうしましょうか!」
それで納得したキル。二人は侵入した五課を再び目指した。
しかし、キルは感じ取っていた。アルスの雰囲気がいつもと違うことに…。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。ここで出て来ましたルーイン・ストーン。それが何かはもう少し先にわかります。次の話はアルスとキルではなく、五課の女性二人に変わります。それではどんどん更新していきたいと思います。