表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/18

第十七章 絶望の終わりと希望の悲しみ



 サディケルの死を見届けた四人。アルスは青く、どこまでも続く空を眺めていた。

 その視界に、デストロイドが入る。

「デストロイド、お前は大丈夫か?」

 その声でアルスの隣に降りてくる。

「アルスよりはマシだ!」

「ハハ、そりゃそうだな…。」

「それにしても…よく倒したな。この男を…。」

「…ああ。でも、最後の言葉が引っかかるんだ。…もしかしたら、こいつもクリスと一緒で、気付いていたのかもしれない。自分のしていることを…」

「それでも、今更引き返せない…、てとこだったんでしょうか?」

 アルスの言葉をキルが遮る。

「かもしれない…な。実際のところ、最後の攻撃の時、本気で俺を斬りつけようって感じじゃなかった。」

「心のどこかで、自分が死ぬことを望んでいたのかもしれないね。」

 マイカが付け加える。

「でも彼は多くの悲しみ、憎しみをいろんな人に与えた。まるで自分の気持ちを味わえ、というように…」

 リーナも静かに呟く。

「奴も、独りじゃさみしかったのかもしれない。誰か一人でもそばにいてくれる人がいれば…こんなことにはならなかったかもしれないな。」


「お前達は、本当に良い奴等だな!ここまでやった奴を許すなんて。」

「別に許した訳じゃない。サディケルのしたことは、何があっても許されない。俺だってまだ奴を憎んでいる。…でも、少しはサディケルの気持ちを解ってやっても、いいんじゃないか…って思っただけだ。

…それより、お前はこれからどうするんだ?」


「…わからん。かなりお前といたから、考えてなかった。」

「……そうか。」


「このまま、アルスさんといればいいじゃないですか?」

「………それは出来ないんだ。」

「………………。」

 アルスの言葉に、黙るデストロイド。


「???」

「そんな事より、もう帰りましょ!」

「そうね。全て終わったんだし!」

 マイカとリーナが促す。

「そうですね!多分五課の皆さんが、盛大なパーティーでもしてくれそうですね!」

 キルは、楽しそうに二人の元に駆け寄る。だが、アルスは動こうとはしない。

「アルスさん?行きますよ!」

 三人がアルスを見る。


「………まだ、終わっていないんだ…。」

 三人に背中を向けたままそう呟く。

「アルス…さん?」


 アルスがゆっくり三人の方に振り向く。

『!!!』


 三人は驚く。こんなに悲しそうなアルスの笑顔を、…今まで一度も見たことはなかった。

「アル…ス…?」

「エネミーロック」


 三人の足元に魔法陣が浮かびあがる。


「これ…は、一体…なんのつもりなの…?」

 リーナが動揺しながら聞く。

 アルスは再び、背を向けると、ルーイン・ストーンが転がっている場所へ歩く。


「終わりなんてないんだ…。この、ルーイン・ストーンがある限り!」

 アルスは、ルーイン・ストーンを一つ掴むと、それを握り締めた。


「アルス…、それは仕方ないよ。その石は…壊すことは出来ないんだから……。」

 マイカが言った。


「もし…あるとしたら?もし…遥か昔から、確かな言い伝えがあるとしたら?皆は……どうする?」


 声が震えていた。


 皆気付いた。


 あの…、あのアルスが、




 泣いている。


「あ…る…す…?それは……どういうこと?」

 マイカの声も震える。


「ルーイン・ルーラァの…現れる次元の中で、ルーイン・ストーンを…体の中に封印し、…魔力を暴走させて、爆発させれば…この石も…消滅すると、言われている。」


 ――空気が凍りつく。アルスのしたいこと、考えていることが、…三人に伝わった。



 自然と、涙が零れる。

 戦いの終わりに流した涙とは違い………冷たく、悲しみの涙が…。


 アルスが続ける。


「こんなものがあるから。こんな石があるから!…争いが起こるんだ。悲しみが増えるんだ。

 この先何年後、何十年後、何百年後、何千年後!!必ず今と同じ争いが起こる。必ず人類が滅ぶ運命が訪れる!!……そんなこと…あってはならないんだ!この世界に!……こんな物…あってはいけないんだ。」


 アルスが振り向く。

 その目からは、大粒の涙が、次々と溢れていた。


「わかってくれとは言わない。……ただ、許して欲しい……。」



 アルスは空を見上げる。

(こんな筈じゃなかったのに…………どうして、涙が止まらないんだろう)




「アルス……さん。僕達は…、僕達はコンビでしょ………?僕も……連れて行って……くださいよぉ」


 泣きながら、足が崩れ落ちるキル。


「キル……俺は、お前に会うまで復讐のことで一杯だった。……けど、キルと出会ってからは、楽しかった。…復讐のことも、辛かった過去も…お前といれば忘れられた。………俺は、キルに何度も救われた。だから……お前は生きるんだ。これから先、多くの人達を……幸せにするんだ。それが、……俺が、お前に依頼する………ブラックリベラル初代としての、最後の仕事だ。」

「なん…で…、なんで僕をひとりにするんですかぁぁ!アルスさんが……いないなかで……僕ひとりでなにができるというんですかぁぁ!!」

「お前はもう独りじゃないだろう!!……お前の隣には、俺以外の…仲間がいるじゃねぇか!」


「ウワァァァァァァ!!」


 キルは、もう泣くしかなかった。

 改めて思った。五課に入ろう―と言ったのも、僕の事を思ってのことだった。

 マイカさん、リーナさんと仲良くなって笑っていたのも、僕に仲間が出来たからだった。

 最初から、最後まで。僕のことを考えてくれていた。

 僕は、なんて強くて、なんて大きな人と一緒にいたんだろう……。




「マイカ、リーナ………済まない。五課に入れなくて……。また、……四人で遊びに行けなくて。短い間だったけど……楽しかった。キルを…………よろしく………頼む。」



 マイカとリーナは、もう、コクンコクン、と、頷く事しかできなかった。



 それを見て、アルスはそっと、長年使ってきた自分の剣を、三人の前に置いた。



「デストロイド!お前にも…逢えて良かった。お前と契約できて……良かった。……ありがとう!」


「私は……お前にこの方法を教えたことを、後悔している。………アルスは、私が見てきた中で………最高の奴だった。……私を、仲間として……見てくれた。……お前のことは、この先、…何千年生きようが、絶対忘れん!」



 デストロイドの目から、一筋の涙が落ちた。

 涙があるのかわからないドラゴンから、一筋の涙が……。



 アルスは、黒いケースを手に取った。

 そして、皆の方を向いた。


「俺の命を、この星の未来に捧げる!キル!マイカ!リーナ!…後は、お前達が見守ってくれ!!じゃあ…お別れだ!!!」


 アルスはケースの中からルーイン・ストーンを取り出し、他の四つのそばに置いた。

 すると、石は光り出しその近くに、異次元の空間が出現した。

 アルスはルーイン・ストーン全てを持ち、躊躇なく入っていった。




――その三分後。異次元の空間は、静かに消えていった。アルスと、ルーイン・ストーンと共に。




 そして、アルスの名前をさけぶ声が、どこまでも響いていった。

 異次元にも、届くかのように………。

 こんにちは。悲しいお話になりましたが、最初からこれだけはあったものですから…。アルスは始めからそうすることを望んでいたので、別に、サディケルが石を集めることに反対していたわけではないんです。だから、始めにルーイン・ストーンを五課から奪っても、自分で持たずに五課に返したわけです。そこにあればかならずサディケルが現れると思って。それでは、次が最終話です。では!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ