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アヴェク・トワ  作者: リラ
Ⅱ Promise of Mudder
19/49

Sports Festival

1、


「ってなわけで体育祭の時期がやってくるんだぜーいっ!☆」


 放課後のHR、教室前方から聞こえてくるハイテンションな声に波音は頭を抱える。


 一瞬にして教室全員の視線を奪ってしまったその人物は――クラスで一番といっていいくらいに非常に悪目立ちしている人物だ。


「………、」


 少しくるくると巻かれた、桃色がかった茶髪。深みを帯びた深紅の瞳。


 上部の髪を左右で2つに赤いリボンで結ぶ…というえらいあざとい髪型なのにそれが許される可愛さを持った少女。


 否、可愛いというよりは綺麗といった方が正しいだろうか。


 背もその辺の男子より高く、すらっとしているし、その辺のモデル顔負けの容姿だ。


 シャロン・グランディス。波音と同じ、シラヅキ1年A組の生徒だで、このクラスの委員長でもある。


「当然この体育祭はシラヅキだけじゃなくてミカアカ、セイゼンも合同で行われるからかなり大規模なイベントになっちゃうよー!」


 おおー! と自然と盛り上がるクラス内。


 シャロンの凄いところはこういうところだった。普段の素のテンションで周りを盛り上げられる。


 単純にあの容姿だし、しかも成績もこのクラス内トップ(波音は2位)、極めつけはあのコミュニケーション能力の高さ。


 馬鹿そうなテンションのくせになるべくしてなった委員長の職務もしっかりこなすし、所謂〝凄い奴〟だ。


 波音は「はぁ」とため息をつきながら机に突っ伏す。


 この手のお祭り騒ぎが、波音はあまり得意ではない。


 にも関わらずとりあえずなんでもお祭り騒ぎする高校に入ってしまったのは運のツキだろうか。


 というか、自分の家がなんでもお祭り騒ぎする高校を運営していたのが運のツキか。


「あ、ちなみにこの1年A組は春軍になったからみんな頑張ろうぜっ! シャロンちゃんがこのクラスを優勝に導いちゃうからな!」


 アンタ1人の力でどうするつもりなんだ、と言いたいがこの少女なら本当にできそうで怖い。


 ああ、カレンといいシャロンといい自分の周りの奴らは一体どうなっているのだろうか。


 ちなみにこの体育祭はシャロンがチラッと言っている通り、春軍、夏軍、秋軍、冬軍の4つに分けられる。


 これは戦力を上手く分けるための措置であり(学校同士の争いだと男女の戦力の差が出るため)、それ故に他校の生徒とも同じ軍になれる確率はあるわけで。


『うーん、亜里沙と同じだといいんですけどね…。この手のお祭り騒ぎの中にあの子を放置しておくのは心配で心配で…』


 などとまた保護者めいた心配をしだす波音。


 あとで亜里沙が何軍か聞いておこう。そんなことを思った時、


「はののーん! 一緒にE組いこっ!」


 は? と思わず呆ける波音。


 気付けばシャロンが波音の机のところまで来てプリント片手ににこにこしていた。


 ちなみにここで注意しておくが、波音とシャロンは同じクラスだが今まで話したことは一度もない。


 要するにこんな気軽に話しかけられる仲でなければ、はののんなどと気軽に呼ばれる仲でもない。


 周りがいっきにざわつくのが分かった。


 それも当然で、波音はクラス内でどちらかといえば浮いている――つまりシャロンとは逆のタイプに位置する人間だからだ。


 このクラスで自分にここまで気軽に話しかけてくる人物などいるわけが……、


『ないと思ってたんですけどねぇ…!?』


 波音は内心で驚きつつもそれを表面に出さないように「こほん」と咳払いを一つすると、


「えっと…何故私がわざわざE組に…?」


「E組のいいんちょさん引きこもりなんだー。で、私が代わりにそこの資料もってってて頼まれてるからさ☆」


「ひきこもりで委員長って…。っていうかそこに私がついていく意味はないのでは…、」


「まーまー細かい事は気にしないでいこーよっ!」


「ちょっ!?」


 有無を言わさず手をとられて引っ張られていく波音。


 人の話し聞いてました!? という抗議もこの少女には届かない。


 こうして本日何度目かわからない頭を抱える仕草を再びやる羽目になるのだった。






2、


「うーん…」


 そして同時刻。


 1年E組にて、翔はユウマの席を見ながらうなっていた。


「…どうしたのよ」


「いや、ユウマにメールしたらすぐ帰るみたいなこと言ってたのに帰ってこないなぁと思って…」


 サボりじゃないの? というアイに対して、翔もそうかなぁ…と頷く。


 まぁユウマはかなり気まぐれだしサボっても何一つおかしくはないのだが、どうも気になる。


「…なんか変なことに巻き込まれてないといいけど…」


「………新橋くんももの凄い巻き込まれ体質の翔には言われたくないんじゃないかしら…」


「え、僕ってそんなに巻き込まれやすい!?」


 と聞き返す翔だったが、そういえば今目の前にいるアイが良い証拠な気がしなくもない。


 普通に生きていればパーティーなどという神々の戦いに巻き込まれることなどまずないからだ。


 それに気づいてどことなく複雑な心持ちになる翔だったが、それをアイ本人に言うのは気が引けたので特に何も言わないでおいた。


「…んー、ただユウマは巻き込まれやすいっていうか…こう、自ら巻き込まれてくタイプ?」


「何それドMなの…? あんなにドSそうな見た目しておきながら…」


「え、見た目でわかるのそれ? っていうか多分ドSだと思うようん」


 エリカに対する対応などを見るに、あれはドSだろう。


 が、そういうのとはまた別の話しで、彼はかなりのお人好しである。


 でなければ翔に付き合ってお花のお墓などつくってくれないし、そもそも翔と友達にはなってくれないだろう。


 故に彼は、目の前で何かが起こると関わらずに生きていくことがなかなかできない。


 そうして結果苦労する方向へ進んでいくという――。


「………要するに苦労人ね」


「うん、そんな感じかな?」


 だが、ユウマのそういったお人好しなところが翔はなんだかんだ言って好きだったりもする。


 翔のお人好しとは違う、本当の優しさと強さ。それが実に――自分の兄にリンクするところがあるのだ。


 そんなことを思っていた時だった。


「たーのもーっ!!」


 突如、教室の前方にある扉から明るい声が聞こえてきた。


 クラスに入ってきたのは見知らぬ桃色の髪の少女と、


「は、波音さん…!?」


 何故かもの凄くげっそりした波音だ。


 名前を呼ばれて、波音も翔の存在に気付いたらしい。


 彼女は「ああ…あなたのクラスでしたっけそういえば…」と更に頭を抱えてしまった。


 なんというかこっちの顔を見てすぐに頭を抱えられると、もの凄く悲しい気持ちになる。


 と、そんなやり取りをしている2人をみて、シャロンは「おやおや?」と笑うと、


「なーんだ、はののん彼氏いたんだっ☆ やるぅー☆」


 なーんて、大声で言い出すから大変である。


 一瞬でクラスがざわつき、クラスメートが波音と翔を交互に見る。


 その視線に耐えられなくなった翔はぶんぶんと両手を振りながら、


「……は、はい…!? い、いやいや何を言ってるんですか僕なんかが波音さんと付き合ってるわけ…!」


 と否定するが、否定すればするほど面白がるのが世間というもので。


 まじかアイツが理事長の娘と…やるーっ! などという声が教室中であがる。


 が、一方であんな貧乏くさい男の子が理事長の娘さんと…? などという声まで聞こえてきた。


 なんだかもう色々泣きそうだ。そんな感じになっていた翔だったのだが、


「いい加減にしてくださいねシャロン・グランディス。これ以上私の機嫌を損ねない方がいいと思われますが……?」


「いやんはののん怖い☆ 軽い冗談なのに☆」


 とまぁ、結局波音の氷のように鋭く冷たい睨みでこの騒動はおさまった。


 というか、波音が周りの生徒から距離を置かれるのはあの態度のせいではないのだろうか。


『普通に話せば優しくていい人なんだけなぁ波音さん…』


 まぁ確かに翔も最初、波音といった怖い少女という印象だったり無理もないわけだが。


 だが、話してみたり過去を聞いてみたりしてからその印象はがらりと変わった。


 言葉などはキツいが、実際はいろんな人思いの優しい人なんだなと。


 なんせ彼女もアイと一緒で、兄のためにパーティーを止めたいと思っている人物の1人だし。


『んー…けど、亜里沙さん以外には友達いないと思ってたらちゃんと仲の良い子いたんだなぁ…』


 と思いながら波音とシャロンの様子をを見つめる翔だが、まさかここ2人がついさっきまで話したことがなかったとは思いもよらないのだろう。


「あ、そうそう。このクラスのいいんちょさんの代わりに体育祭の資料もってきた1Aのシャロンですっ。よろしくねE組の諸君☆」


『んー…波音さんが仲良くなりそうなタイプには思えないんだけどなぁ…』


 さっきのような悪ふざけはともかく、まぁノリは良いし友達の多そうなタイプだ。


 というかそれよりも気になったのは、


「…っていうかこのクラスの委員長って誰…?」


「いや、それを転入生の私に聞かれても困るんだけど」


 アイの解答にそれもそうか、と思う翔。


 だが、残念なことに翔も全く思い当たる節がない。


 4月に委員決め的なのは確かにやった気がしなくもないんだが、全く持って記憶にないのが残念だ。


「気になるー?」


「ええまぁ……ってうわぁ!?」


 気付けばシャロンが自分の鼻先2cm辺りの所まで顔を近づけて来ていた。


 全く気付かなかった自分も自分だが、ここまでいきなり顔を近づけてくる向こうも向こうだ。


「あ、あの、グランディスさん…!?」


「やだなー、シャロンでいいよっ☆ そんな浅い仲じゃないんだしさっ」


「………? 話したことあったっけ?」


「いや、初対面だよ☆」


 思わずずっこけそうになる翔。だが、シャロンは「てへへ☆」と笑っているだけだった。


 …というか、どういうわけか横にいるアイがむすっとした表情をしているのだが…どうしたのだろう?


「……ま、これから嫌でも関わるだろうしな…」


「…? なんか言いましたシャロンさん?」


「んやんや☆ こっちの話しさっ☆」


 シャロンはにっこりと笑うと、


「んでー、このクラスの委員長さんはねー、引田篭火(ヒキダコモリビ)くんっていってね? なんと4月の入学式以来学校に1回も来ていない引きこもりさんだから知らなくても無理ないだよ!」


「なるほどー」翔はにこにこしながら頷き、「っていやいや何で引きこもりさんが委員長になっちゃったんですか!? そして名前は名前でツっこみたい…!」


「それは私に聞かれてもー☆ とりあえず私と引田くんは一応知り合いだからーその関係で私が資料を持ってきたのだよ。納得?」


 納得できないけど、納得しなきゃいけない状況に翔は「まぁ…」と曖昧な返事をしておく。


 意外と同じクラス内でも知らないこととかたくさんあるものだ。


 そんな事を思っていると、シャロンがじーっとこちらを見ているのに気付いた。


「…え、っと…シャロンさん…?」


「ん? あ、ごめんごめん。なんでもないよ、気にしないで?」


 シャロンはぱちんっとウインクをすると、


「んじゃ、お邪魔しちゃってごめんなさいねー。翔くんに…アイさん?」


 と言って背中を向けて颯爽と去っていた。


 まるで嵐のような一瞬を運んできた少女に翔はしばらく呆然としていたが、


「…あれ? 今僕たち…シャロンさんに名前教えたっけ?」


「………、」


 その問いにアイは答えない。


 ただ、どことなく怪訝そうな表情でシャロンの後ろ姿を見つめた後に、


「…ま、たまたま知ってたのかもね。私は特に転入生だし…アンタも意外と目立ってるみたいだし」


「いやいや僕そんなに目立ってないよ…!?」


 教室の前方で「はののんA組に帰るかー☆」と言っているシャロンと、「勘弁してください…あなたと一緒とかもう疲れました…」とげっそりしている波音の声が聞こえる。


 まぁ気にすることでもないか、と思った翔はそこからゆっくりと視線を戻した。






3、


 その頃、1Eの担任こと慶田瑞希は頭を抱えていた。


 目の前にいるのは新橋ユウマという名前の少年で、成績は良いが授業に出てくれないなかなか困った生徒だ。


 今、彼が珍しく自分の前にいるのはワケがあり、


「…ったく、警察から電話あった時はビビったぞ新橋。まぁお前が事件起こすことはねぇだろうと思ってたけどまさか例の事件の第一発見者になるとはな」


「…驚かせてすいません」


 昼休み、いつも通りコンビニ弁当を食べ終わって教員室にいたら突如かかってくる電話。


 それが警察からで、しかも第一声が「新橋ユウマくんの担任の先生ですか?」ともなればそりゃ教師としては驚くところだ。


 だがユウマが何かの事件を起こすことはないだろう、と彼女は踏んでいた。


 まだ3カ月程度しか見ていないが、この少年に限ってそれはない。


 だからあるとすれば、何か巻き込まれた系だとは思っていた。


「…例の事件、って今そんなに有名な事件なんですか?」


「お前ニュースとかみねぇの?」


「…まぁ見たり見なかったり…。テレビの主導権は基本他の家族にあるので…」


「ふーん、まぁいいけど」


 瑞希は散らかった机の上から半分に畳んである新聞をユウマに見せる。


「この記事だ。茶髪の女性の連続殺人事件。どういうわけか刃物などの怪我ではなく、女性たちはみな殴り殺されている。余程ガタイの良い男とかが犯人かねこりゃ。女ばっか狙うのが気に食わねぇがな」


「……茶髪の女性…っていうのは確かなんですかね?」


「さぁなー? 被害者が今回で6人とかだから確かではないかもな。ただ今のところは全員茶髪らしいから一応こう言われているみてぇだが」


 なるほど…と頷くユウマ。


 というか、死体を発見してしまったと聞いたから精神的ダメージを気にしていたのだが、意外と平気そうだ。


 まぁそれで落ち込みそうな男には見えないが、やはり教師としてはそういったところが心配だったわけで。


 とりあえずそこに関して、瑞希は少し安心した。


「………茶髪の女性か…」


「あー、そういやお前の妹茶髪だったっけ」


 その問いに、ユウマはゆっくりと頷く。


 なるほど、彼の心配な点はこっちだったか、と瑞希は目を細める。


 無愛想な少年だが、この少年は人一倍周りの人間想いであることを担任の瑞希は知っている。


「…確かに茶髪だし、しかも年齢層的にも丁度な…。狙われるのは大体高校生から大学生くらいの若い女らしいしな…」


「…ですよね…」


 表情を曇らせるユウマに対して、瑞希はにかっと笑うと、


「ま、そこはお前が守ってやれや。大事な家族なんだろ?」


「………あの、それはともかくなんですかそのにやけた笑いは」


「いやいや? 普段表情が見えない分こういうお前はレアだなと思って?」


「………、」


 やれやれ、といった感じにため息をつくユウマを見て「可愛げのない奴」と内心で呟くが、彼には届かない。


 ここでちょっとは照れるくらいの反応があってもいいものを。


 そんな事を思いつつ、瑞希は今度は真剣な表情になると、


「ま、冗談でなくマジでちゃんと守ってやれよ。命なんてなくなるときは一瞬だからな」


「…珍しく教師らしい発言ですね」


「おい、私はいつでも真剣に教師やってるぞ?」


 まぁ、口調とかが悪いからそう思われないことは仕方ないのかもしれないが。


「じゃあご忠告通り。とりあえず俺はエリカを探してきますね」


「おー、がんばれーっ」


 ペコリと一礼して教員室から出ていくユウマに、瑞希はひらひらと右手を振る。


 去っていく後姿を見ながら、「青春だねー」と呟き、彼女は仕事に戻るのだった。

また濃い新キャラが増えてしまったんだぜベイビーッ!☆

はい李薇です。ちょっと新キャラシャロンさんのテンションを引きずっています。

何でこうも新キャラが曲者ぞろいなのかはともかく、多分シャロンはその中でもトップクラスの曲者です。

というか、今回出てきてプロフィールにすでに誤りがあります←

それが何かは今後ゆっくりわかりますのでよろしくお願いしますね♪

シャロンが深くかかわってくるのは次の次の章辺りなので今はのほほんと見ていてください←


では、また次回の更新の時にお会いしましょう♪

今回の章は結構先の方まで出来ているのですぐあげられるかな…?

なんにせよよろしくお願いします♪


次回、肉じゃがかカレーか。

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